50歳になりました。

ラティゲのように夭折する筈だったのに

めっちゃ、長生きしております。

すみません。

 

今日ね、

来てくれた人に、

10代の頃に読み始めたが、

社会に出て

いろんな現実に直面して、

今、やっと

野ばらちゃんのスゴさが、

解るようになりました。

嶽本野ばらであり続けること、

嫌になったことありませんか?

 

訊かれたけど、

一度も、なったことはない。

——即答したよ。

 

生まれ変わってもね、

次も、これしか、

嫌だなと、思った。

 

もし、二度目の人生の

最初に、自分の人生の全てを

教えられ、

こんなのだけど、いい?

神様に

問われるような制度があっても

はい。これが、いいですっていうよ。

 

最初のうち、かなり苦労するぞ

ビンボーだぞ

少しは売れるけど、

二回も留置所入るぞ。

借金で気が狂いそうになって、

自殺を考えたりもするぞ。

 

教えられても、

はい。これが、いいですというよ。

 

背、かなり低い。

売れるといっても、そこそこだぞ。

どっちかというと、嫌われ者。

オカマだと、思われることの方が多いぞ。

性格、悪いぞ。

気に入ってくれる人は、

変な人ばっかだぞ。

 

念をおされても、

はい。これにして欲しい。

お願いするよ。躊躇うことなく。

 

君が泣いてくれること。

君が笑ってくれること。

あなたがいるので、

本当に助かるのですと

君が僕を

買いかぶって、

訴えてくれること。

 

大事に大事に、

何度も読み返し

ボロボロになった本を

僕に手渡し、

君のそれに、

サインを入れられること。

 

ようやく逢いに来れました。

微笑みながらも、

握手をすると、

ガタガタと、

震えているのが解る

君に、また逢おうねと

いえること。

 

何度逢っても、君は、

いつも、すごく泣いちゃうね。

でも、最後は、笑ってくれるね。

たくさん、お手紙をくれるね。

自分は死ぬことばっか考える

癖して、僕には、

長生きしてくださいと頼むね。

 

なんだ、そりゃ?

 

でも、そのような祝福を、

君が僕に与えるから

僕は、どんな時だって

自分が自分であることを、

嫌になったりはしないんだ。

 

僕が、僕であることを

欠片も残念に思わず

気に入り続けていられるのはね、

君が僕をものすごく贔屓して

くれるからなんだ。

 

贔屓の度が過ぎて、

申し訳ない。

恐縮するので、

トイレ掃除でもお使いでも

なんでもお返しするつもり

なんだけど、

そういうことはやらないでいい

と君がいうので、

仕方なくまた僕は、本を書きます。

 

君が大好きだといってくれる

小説やエッセイや文章を書いて、

君をよろこばせようと企みます。

 

ずっと手を握っていることは

不可能なので、

その代わりに、いつでも

開けば読むことの出来る

言葉を紡ぎます。

 

大好きだよ。

僕は返す。

ありがとう。

僕は君に頭をさげる。

 

君が認めてくれていなけりゃ

いくら楽観的でも

僕はとっくに、

汚れてしまっていただろう。

殺していただろう。

気位を、

堕としてしまったことだろう。

 

駄目な部分の方が圧倒的に

多いのは冷静に観察せずとも

解りきっているんだが、

それでも、自分に対して、

一点の曇りなく迷いもなく、

胸を張って堂々、としていられるのは、

君が僕のことを

私が一番好きな文章を書く人——

の棚に、

置いていてくれているからです。

 

そんな君が

長生きしろっていうのだから、

まだしばらく、生きようかな。

もっとたくさん、勉強をして、

もっと鋭利に己を研磨して、

ここまで好きにならせようとするかー!

君が呆れるような

ものを差し出そうかな。

 

好き過ぎて、もう笑いが止まらない。

涙を流しながら、お腹を抱えて、

君が爆笑してくれる

とんでもないものを作れるまで、

老人だけど、頑張る。

 

幸い、この歳まで生きたので

技術や知識は、格段に進歩しています。

 

息が出来なくなるくらい

息をしなくていいくらい

君を満たす。

死ねないくらいに君を殺す。

老人だから、益々、背は縮む。

僕という監獄に

生涯、君を閉じ込める。

 

牢で君は暮らす訳だから、

僕が食事を運び、必要なものが

あれば全てを僕が差し入れる。

なければ、お使いに行く。

 

老人なので、たまに間違って

買ってきてしまう。

 

頼んだものと違うよ、これ!

どんぶりものが食べたい

っていったのに、どんぐりじゃん!

あまりのトンチンカンに、

君は怒りながらも笑ってしまう。

 

君も生まれ変わったら、

また君であって欲しいな。

 

どんぶりが食べられず、

どんぐりを渡される人生であっても

それでいいといってくれると

とても嬉しいな。

 

今日は、君のお誕生日でもある。

ハッピー・バースディ・トゥー・キミ。

 

 

 

嶽本野ばら 2018・01・27