Twitterにこんな相談がきました。長文なので必要な箇所だけコピペしてみました。



このあと、彼女は服装に関してとやかくいわれるのは構わないが今回は心が折れそうになった。
自分は自分の服装を変えるべきかどうか解らなくなってしまった
ということで僕にどうすればいいか相談したいということでした。

Twitterでは書き切れないので
ここにその返事を書きます。

現在の僕は自分のブランド、ノヴァラーズでジャージを作るほどの
ジャージ愛好家なので、ジャージも悪くない。
可愛いのいっぱいあるよ。特にヤフオクなどで出て来るデッドストックのイモジャージは
サイコーにロリータ! と思っているのですが
それだからジャージをはけばいいじゃんというのは答えになりませんよね。

質問の意図が違います。

そしてもう一つ。
8年前の逮捕の時は、僕は留置所でも可愛いものを着て
裁判にもピアスをしたまま、靴もロッキンでのぞみました。
反省が足りてない状態でしたし、初犯、執行猶予がみえていたので
そんな姿で出廷しました。

が、今回の身柄拘束では服装に頓着する余裕がまるで
在りませんでした。
自分の罪の本質を知り、良心の呵責が考えれば考える程に
強くなる極限の状態ではお洋服のことに執着する余裕を持てませんでした。
ですから施設内ではずっと約一ヶ月、ジャージ上下でした。

僕の場合は身から出た錆なので比べるのは躊躇われますが
震災の被害にあった方なども、極限状態の中
自分らしいお洋服が着られないのは悲しいとは
思わない筈です。

裁判に於いても僕は少しでも軽を軽くして貰いたい
印象を少しでもよくするため
ピアスを全て外し、坊主になり、大人しいスーツ、
合う靴はロッキンのみなのでわざわざ裁判用に地味なローファー
を買いました。

実刑を覚悟していたものの可能ならば執行猶予が欲しいので
僕は弁護士さんや周囲のいう通り、印象のよくなるように
自分を曲げました。
刑務所に入るのはやっぱり恐かった。
だから入らなくてもいいならと世間に歩み寄りました。


かつての僕はどんなに迫害されようと己の好きな服を着ることを
やめないのが自分を大事にするということだといってきました。

が、実際の僕は、極限状態においては自分の意志にそぐわぬ姿や言動で、世間に歩み寄り
世間と上手くやっていくことの狡さを憶えてしまいました。

こんな僕にいま、貴方の問いに答える資格があるでしょうか?

しかし一ついえるのは、教習所で貴方が遭った状況は、極限の状況ではありません。
ですから、心が折れたとしてもジャージなぞ着ず、何時も通りの貴方らしいお洋服を
貫いていいのではないでしょうか。
無論、早く免許がとりたいから教官の意向にあわせジャージにしても構わないです。
狡いやりかたを憶えてしまった僕からは、そういうしかありません。

ごめんなさい。

只、またこのブログで書いたように、自分の裁判の話に戻りますが、
地味にする為、反省していることをアピールする為、僕は坊主になったものの
スーツとシャツはギャルソン、靴はコールハーンにしました。

もしそれも駄目、デザイナーズブランドのものなんてやめてくれ。
背広の量販店にいけな一万円くらいで普通のビジネススーツ一式が
一万円くらいで揃うだろうからそういうのにしてくれと
弁護士さんからいわれていたなら
僕は拒否していたと思います。否、絶対拒否しました。

裁判にオシャレする必要はないし、別に傍聴人がわんさか
つめかえる訳ではない。
裁判官にいい印象を持って貰う為には量販店のスーツのほうがいい
といわれる可能性もあったんです。
でもそうなれば僕は執行猶予が貰えなくてもいいから
そのような服は着られないと突っぱねる決意を最初から固めていました。

やっぱりどうしても譲れないものは譲れないんです。
それをしてしまうと自分ではなくなってしまうから・・・

僕はもはや貴方にアドバイスできる立場の人間ではありませんが
この文章が貴方なりにどうするかを決めることに
少しでも役立てばと思います。

                            嶽本野ばら