金子國義さんがお亡くなりになった。
昨日だ。

友人の安珠が昨日、知らせようと電話をくれていたのだが
ずっと地下鉄に乗って乃木坂キャンペーン巡りをしていたので
電話に出れず、今日の昼に聞かされた。

夕方から教えられた葬儀場に行った。

もうお歳なので死んでしまわれてもおかしくはない。

特に感慨はなかったが、実際に焼香をすませ
棺の中のお顔をみていただけますといわれ
みさせてもらうと、やはりいろんな想いが込み上げ
胸が締め付けられた。

会場には大きな油彩が飾られていた。

棺の中には金子さんの遺体と共に、
金子さんが好きだったレコードジャケットや本などが
一緒に収められていた。

死化粧をほどこしてあるのだろうか
まるで遺体というよりも蝋人形のようだった。

控え室に行くと、澁澤龍子さんや佐野史郎さんらがいた。

この後はファンの人達に入っていただきますからといわれ
関係者は会場を後にする。
階下に降りると、あがた森魚さんにあった。

もう十年振りくらいの再会だろうか?

お互いに、元気ですか? と
連絡先を交換し合った。


葬儀なんて必要ないという人もいる。
お墓もいらないという人もいる。

僕は葬儀というものに殆どいったことがないので
喪服さえなく、とりあえず黒い格好をして
参列した訳だが

君達にいっておく。

僕が死んだら葬儀は盛大に行って下さい。
お墓もちゃんと建てて下さい。


葬儀というものは故人の為にやるものではないと思う。
死んだら魂が遺るのか?
僕は遺らないと思う。
だから、故人も喜んでいます
というのは嘘だと思うのだけど
葬儀やお墓はあるにこしたことがない。


遺されたものの為にそれはあるのだろう。

だから僕の葬儀では思いっきり泣いて頂きたい。
頭がおかしくなるくらい泣いて欲しい。

身内や親族はどうでもいいので
読者や仲間のために
そうさね、四日間くらいやろうではないか。
地方からくる人もいるだろうから
それくらい日数があっていい。

写メも撮り放題にしよう。

気持ち悪くないなら触ってもいいし
キスしてくれてもいい。


だから、僕が死んでその葬儀を堪能するまでは
君は死ぬな。

嶽本野ばらの最後の作品、イベントは
お葬式だ。

なんなら棺に遺体をいれて全国を巡回したいくらいだ。

墓参りもして欲しいから
野ばらちゃんが死んだら私も死にますなんてことを
いうな。

桜桃忌のように毎年、日を決めて
君達には僕の墓の前に集り
あの作品が一番好きだとか
語り合う義務がある。

そういうことが出来るのかどうか解らないけど
君が寿命を全うし、僕の墓に君が一緒に入りたいというなら
もれなくいれてあげたい。

そうすれば僕達はずっと一緒だろうよ。



そんなことを考えながら、帰路に着いた。



金子さんの作品を知ったのは中学生の頃だったと思う。
当時、富士見ロマン文庫の表紙は金子さんで
それが欲しいが為にロマン文庫を集めた。

作品、といってもリトグラフだが
を最初に買えたのはもう随分と大人になってからだけれども
作家になってお金が儲かるようになってからは
随分とたくさん、購入した。

龍子さんと知り合いになり、澁澤邸に招かれ
(無論、もう澁澤氏はお亡くなりになっていた)
澁澤氏所有の金子さんの初期の大きな油彩を観た時は
ああ、こんな日がくるとはと感無量になったものだ。

思えば自分が作家になり、憧れていた人達と親しくなったり
特別なことが出来たりすることに
少し慣れ過ぎたのかもしれない。


初心・・・


人の死は、それを想い出させてくれるものなのかもしれない。