原田宗典さんが覚醒剤と大麻所持で逮捕された。

同様の罪で逮捕されたことのある僕としては
同業であることもあり面識などは全くないが
複雑な気持ちである。

良い、悪いなどの議論はさておき
これは執行猶予がつこうと
その後が大変なのである。

当時は出来る限りノンシャランを気取っていた僕であったが
まぁ、騒ぎが一段落した辺りから徐々に
罪を犯したことに対する報いはやってきた。

当然、ファンは激減した。
仕事も、激減で
この頃から経済状態はあからさまに悪化しはじめる。
いいものを書いていても正当な評価を得られない。
何かにつけてどうせ薬をやっている人だからと揶揄される。
具体的にはいわないが、様々な嫌がらせも受けた。
自分はタフなほうだと思っていたが
思った以上に世間は厳しかった。
打ちのめされた。

僕がどうにか復帰し、筆を折ることなくやってこられたのは
周囲とまだしぶとく残ってくれた一部のファンのおかげである。
周囲はいい体験しましたねーと笑い
出来る限りの援護に奔走し、精神的な援助をくれた。
あれがなければこうしてまだ文筆家をしてはいなかっただろう。

未だに事件は僕の人生に暗い影を落とし続けている。
小説家なんて反社会的な存在だから前科の一つくらい勲章ですよ
といってはくれる人達は多いが、
実質、赦されていないことを執行猶予ももはや解けた身でありながらも
痛感し続けている。
罪状の如何に関わらず、前科を持つということは
そういうことなのである。

原田さんは復帰出来るだろうか?
こういういいかたをすると申し訳ないが
お年もお年である。
周囲やファンが、これでもか!という程に支援しなければ
かなり難しいだろう。
作家として復帰することが最善であるとは思わないが
人間として復帰出来る環境を
彼の周りの人には整えてあげて欲しいと願うばかりである。


とりあえず、捕まってから
反抗的な態度はとられてはいないようなので少し安心ではあるのだが。

かつて、やはり同様に捕まった時
中島らもさんは裁判所で、
大麻の何が悪いと反論をした。
僕は素直に詫びた。
そのことで野ばらはヘタレだ、らもさんを見習えと
いう意見も沢山、頂いたが
はっきりいえば、反省していなくても裁判では
反省している振りをしなくてはならない。
でないと、少しでも情状酌量をと動いてくれた人達に
申し訳なさ過ぎる。
こればかりは捕まったことのある人間にしか解らぬことである。

大麻の事件以来、結局、ダメになったなと
いわれるのが嫌なので
いわれては皆に申し訳ないので
僕はまだ書いている。
キツいけれども、書いている。

アイツ、タイマで捕まった癖に
なんで今も楽しそうにやってんだ?
と思われたいが為、
なんとか生きることにしがみついている。

予定では、ここまで生きているつもりはなかった。
あの逮捕がなければ今日のように書くことに固執し続けて
なかったろうと思う。
もう辞めていたと思う。

僕はアンダーグラウンド育ちが故の
アンダーグラウンドな仲間達がいたからやってこられたけれど
原田さんはどうなのだろう?

こんなしょーもないことで(と敢えて書く)
晩年が台無しになるようでは、つまらなさ過ぎる。
彼の周囲の人はくれぐれも親身になってあげて欲しいと思う。
言葉を発する度に、同罪故に庇う印象を持たれるだろう。
庇いはしない。しかし彼の今の気持ちは
誰よりも解るつもりではいる。

なのでここに記させて貰うことにした。