「僕が体と心をコントロールするのではなく、体と心にすべてを任せよう」
哲ちゃん復骨祈念「写真&エッセイ」選25
心と体のバランス、これは果て無き深遠な世界なのだと想う。
この世は意識の世界。僕らはどんな思いで目の前を見つめるかによって、世界観はがらりと変わる。太古の昔から言われている叡智、これはきっとこの先も変わることのない普遍な事実なのだと思う。
でも、僕らは有限のいのち、そして制約のある体に魂を乗せる生き物。
だからこそ、悩み、迷い、落ち込む。骨折してからの一か月間は、体にメスを入れたからか、それとも体が緊急事態宣言を出していたかで、内から沸き上がるような氣を感じられなかった。
心は仕事をキャンセルする心苦しさ、アテンドできないため愛する周りの人たちに迷惑をかけてしまう悲しさ、そして何より動けないことによる過剰なストレスと早く治さねばという焦りばかりが先行した。
あれだけひでこさんから断捨離の真髄を学ばせてもらっているのにな、いざ実際その渦中に入ると、心を体を制御できない自分がいた。
2カ月目に入ると、装具を付けて散歩するように。そして出来るだけ自分が心地良い、ご機嫌様になることを求めた。と言っても、僕の場合、ただ外に出て自然に遊んでもらうだけなんだけれど。そして今朝、ようやくひとつの想いが沸きあがってきた。
「僕が体と心をコントロールするのではなく、体と心にすべてを任せよう」
早く治るも良し、時間がかかるも良し。体が治りたい時に骨を繋げてくれれば、僕はそれに従う。だって、世界で唯一の大切な大切な体だから。あれだけ体ファーストと言いながら、僕は心で焦り、体にそれを映していた。常にベストを尽くしてくれているのに、早く治ろうと焦らせていた。体も大変だったろうな。ごめんね、もう辛くはさせないから。
「折れているから出来ない」のではなく、「折れているけれど出来るよう工夫する」ことが、僕のすべきことなのだと知った。
体が心地良いよう、体が求める時間で、体とお付き合いしていきます。
<2021/4/8 野村哲也 写真と文>
写真家野村哲也
大骨折につき撮影戦線離脱!
哲ちゃん復骨祈念
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