「自分を責める女、アピールする男」〜片づけ問題にみる男女性差〜
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「自分を責める女、アピールする男」
このところの「断捨離」の取材現場で感じることはこれ。「片づけ」とは男女の社会的性差を映し出す鏡であるということ。男性と女性では、これほどまでに「片づけ」の捉え方に差があるのかという事実をあらためて意識させられることばかり。
かつてのベストセラー本「話を聞かない男、地図が読めない女」（アラン・ピーズ／バーバラ・ピーズ著）ではないけれど、根深い男女の心理差がそこに横たわる。たとえば、こんなふうに。
「片づけられないんです、わたし…」と、多くの女性が私に訴える。そして、「わたし…」の後には、言葉にするかしないかの違いはあるけれど、「わたしって、ダメな女なんです…」という気持ちの吐露が、必ずといっていいほどに続く。女性は、とかく「片づけ」問題で自分を否定する傾向にある。
ところが、男性は違う。「まったく、机の上が片づかないんですよね！」と訴えはするものの、その症状がどんなに展開していたとしても自分を「ダメな男」と認識するには至らない。なぜなら、男性にとって「片づけ」は「する」か「しない」かの問題で、その「する」時間が取れないほどの多忙な「俺」「僕」は、すなわち、仕事上の「重要な人物である自分」のアピールにもなるから。
「片づけられない」
「片づかない」
この言葉の違いにこそ、片づけ問題の捉え方に関する男女の違いが如実に現れている。
女性は、「女」であるならば「片づけは出来るのが当たり前」という思い込みの中で生きてきた。つまり、そのような意識教育はされてきたものの、実際、片づけの本質を学ぶこともなく、実践方法を習得することなく、大人になり社会に出る。
つまり、たいていの女性の頭と心の中には、
「片づけとはできて当然」
↓
「けれど、その当然なことができないわたし」
↓
「わたしは、ダメな女」
という図式がどんどん大きく膨らんでいく。
これは、仕事で能力を発揮している女性、有能な女性にもあること。いえ、彼女たちの方がかえって悩みが深いかもしれない。仕事で周囲から高い評価を受けてはいるけれど、家に帰ると「ぐちゃぐちゃな部屋」が待っているだけ。そのギャップに苦しみ、そのギャップを他者に悟られまいと必死に隠そうとして、自分をさらに追い込む。
さて、そんな女性が縁を得て結婚をしたとする。残念ながら、「片づけ下手」はもう隠せない。そして、これらの女性が辿ってしまうのは、この二つの道。
夫に呆れられ、夫に責められ、意気消沈し、ますます自分を卑下するか、あるいはまた、片づけを自分ばかりに押しつける夫の理不尽さに強く反発を覚えるか、そのどちらか。いえ、その二つを行ったり来たりする。
もちろん、夫である男の側にもこんな思い込みがある。
「女であれば、片づけは当たり前にできるはず」
実際、先日、仕事でご一緒した独身のカメラマン男子は、こんな幻想を臆面なく語っていた。「嫁さんができれば、旨い飯とキレイな部屋にありつけますよね」。これには、私の方が驚いた。今時こんなことをのどかに考えている男性がいるのか…。
そう、これこそが大きな勘違い。片づけとはとても難しいものなのだ。男女を問わず、誰もが簡単にできるものではない。そして、人はそれぞれ、得意科目も不得意科目も持ち併せている。男と女という属性で安直に「ひとくくり」することがおかしい。
けれど、こういう事実もある。夫は、片づけ下手の妻に呆れて、責めたというよりは驚いたのだ。今までの女性への「思い込み」と目の前の「混乱住空間」との落差に、大いに戸惑っているのだ。その戸惑いを発する声は、片づけ問題で自分を否定している妻には実際以上の大きな「叱責」となり、心に突き刺さってしまうのです。
しかも、仕事も抱えている妻は、同時に、この住空間の有様は自分だけの責任ではないとも感じている。けれど、プライドのある妻は、夫に「一緒に片づけて欲しい」と素直には頼めない。結果、休日にゴロゴロしている夫の姿を見ては、「夫はちっとも片づけてくれない」と、見事な被害者意識の塊「くれない族」となり、不平と不満で身を包んでいくのです。
「片づけられない」と自分を責める女と、「片づかない」と自分をアピールする男。
ああ、どちらも厄介であることには変わりがない話。
やましたひでこ
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