「最近の小学生たちがいい自転車に乗って走り回ってるのを見ると、あの頃のあんたには本当に可哀想なことをしたなぁと思うんだよ」


おかんが唐突にそんなことを言って涙ながらに語り始めた。


幼少期、わしの自転車はずっと近所のおばさんの娘のお古だった。

1台目は幼稚園の時。いかにも幼児向けの黄色い自転車で、最初はコマをつけて乗り、コマを卒業してからもしばらく大事に乗ったが、団地内のドブ川に転落して廃車となり、わしは一旦自転車を失った。

小学校に上がる頃、そのおばさんが次なる自転車を持ってきた。今度はキャラクターの絵柄入りの明らかに女の子用の赤い自転車であった。

↓こんなやつである、


娘さんが大きくなり新しい自転車を買ったからわしにくれてやるとのことだった。今思えば古い自転車の処分に困って押し付けたのだろう。うちは決して経済的に恵まれない家庭ではなかったが、おかんのお人好しで断れない性分が災いした。


それでもわしは嫌な顔ひとつせず、その女の子用の赤い自転車を受け入れたらしい。


小学生にもなると、周りの子供たちはみんな変速機のついた自転車を買い与えてもらっていた。子供にとって自転車は貴重な財産であり、ちょっとしたステータスである。

友達の家に遊びに行くにも、習い事に行くにも、わしはいつもその女の子用自転車であちこち走り回っていたようだ。

どんな気持ちで乗っていたのか今となってはわからないが、羨ましいとか悔しいとかそういった感情が無いわけないから、きっと唇を噛みしめて黙って乗ってたんだろう。そしてそんなわしの姿をおかんは見て、今も脳裏から離れないのだろう。


この2台目は小学3年で初めて自分の自転車を買ってもらうまで、2年間大事に乗り続けた。本当によく我慢したなと思う。


周りの友達に遅れること3年、わしはようやく憧れの6段変速機付き自転車FUJIコンコルドを手に入れた。


これは本当に嬉しかったな。

行動範囲が一気に広がり、走らせるのが楽しくていつまでもどこまでも走れるような気がした。

ライトの青いレンズが特徴的で、わしが今でもホンダ400Xに惹かれるのは、コンコルドの面影を重ねているからだと思っている。

↓ホンダ400X


あれから長い年月が経ち、女の子用の中古自転車で町を駆け回っていた少年は、今は自分で買ったクロスバイクであの頃と同じところを走っている。
そう思うと感慨深いものがある。

初めて買ってもらった時のようなときめきはない。
でも必死にペダルを漕いで風を切って走るのはとても気持ちがよく、とても楽しいと感じる。
わしはきっと二輪車が好きなんだろうな。

それにしてもこのサドルの小ささよ。
初めて乗った時は尻が痛くて1キロも走れなかった。

こんなの乗れるか!

こんなのセクシーレディしか乗れんだろ!

本気でそう思った。


でもなるようになるもので、今じゃ尻が痛いどころか、この小さいサドルがフィットしてとても快適に思える。

わしの尻の皮が厚くなったのか?

それともわしの尻が順応してセクシーになったのだろうか?