電車に揺られながら、ヤタベェから
送られてきたス力イプを見る。


『嬉しかった』

『ありがとう』

『好きだよ』

『ごめん』


繰り返し繰り返し、
この言葉達が文中に並んでいる。

私は意外と冷静に
ひと文字ひと文字を目で追った。



うーん…


打っては消し、打っては消し、
なかなか返事ができない。

それほど気持ちは複雑で…


ダメだ、ちょっと考えよう。


携帯を膝に伏せて目をつぶり
今までの経過を整理してみた。




ヤタベェは私のことをずっと
好きでいてくれていた
気付かない私
サエキョとヤタベェ、呑みに行く
勢いでヤッてしまう
ヤタベェ「付き合おう」宣言
5、6回のデートでサエキョの狂気を知る
ヤタベェ、距離を置く
サエキョ、荒れる
私がヤタベェの想いに気付く
私とヤタベェ愛あるH
サエキョ、ノリでシンタロとH(たぶん)
↑今ここ




ヤタベェとサエキョ
両方の言動を見て、聞いて、

私が思うことは


『サエキョはヤタベェのことを
本気で好きではない』


それから


『勢いだとしても、迫られたとしても、
ヤタベェはサエキョとヤッた』


このふたつ。



特にモヤモヤするのは後者で、


『据え膳食わぬは男の恥』
なんてことわざもあるけど

男ってたいして好きでもない
女とヤレるもんなのかい

他に好きな女がいても
ヤッてしまうもんなのかい

そこがどうしても腑に落ちない。



よく考えたら、

人妻とヤレる神経もわからない。




…もういいや。

ヤタベェに返事をするのは
もう少し時間が経ってからにしよう。





ブルブル…

携帯のバイブが振動する。

今度はマイムちゃんだ。



『グレ子ちゃん、店に行ったよね?』

『うん、行ったよ』

『シンタロ、客の女に手ぇ出してない?』


だ、出してました……

しかも、相手はあなたも知ってる
サエキョちゃんです……


いやいやいやいや、言えないわ。



『酔っ払った女の子と話はしてたよ』

これは嘘じゃない、うん。


『アイツ、遊び人だしヤリチソだし、
彼女の私としては心配なのよねー』

か、彼女…?

お互いセフレっていう同意の上じゃ
なかったっけ…

マイムちゃんは、なぜ私には
彼女設定で話すんだろう。



『グレ子ちゃんは大丈夫?
アイツにヤられてない?』

『ないない!あるわけない』


いやらしいキスはされたけど、
いつでも抱いてやる言われたけど、

口が裂けてもマイムちゃんには言えない。


『そっか、よかった!グレ子ちゃんの
ことは信用してるからね、私』


…ん?

この言い方はなんだ?


ハッ!

ここで気付いた。


『グレ子よ、シンタロに手を出すな』

ということか。

遠回しに警告しているのか。


なるほど、そういうことね。




独占欲が強そうなマイムちゃん
ヤリチソのシンタロさん
新規参入のサエキョ

不倫人妻の私
罠にハマったヤタベェ
彼女という立ち位置のサエキョ



サエキョという爆弾低気圧のせいで
これから嵐が吹き荒れることは


容易く予想できる。