でもね、

私だって人のことをあーだこーだ
言う資格はないんだよ。



私がしてしまったのは

『不倫』


離婚が法律で認められる

『不貞行為』


私がしたことは、立派な罪だ。




禁断の一線を越えてしまったのは
自業自得であって、

ヤタベェを責めることはできない。


ましてや

ハルだって、ハルだって!など
子供じみた責任逃れもできない。



なにしろ、ハルとおもてなし子が
ヤッているという確証はないのだから。





「お母さん、これネットに入れて洗濯して」

「うん、わかった…」

「なんで顔そむけんの?」

「別にそむけてないよ」


子供達の顔も見れなくて


「今日帰り遅いから」

「わかった…」


ハルの顔も見れない。



私は、この家族を裏切った。



激しい後悔と
バレやしないかという焦り。


「うわー!」と叫びながら
頭を掻きむしりたい気分になる。



心の中で念仏のように

ごめんなさいごめんなさい
ごめんなさいごめんなさい

何度も何度も唱える。



もうしません、もうしませんから
どうか許して。
お願いだから許してください。

空に向かって懺悔する。



取り返しがつかないことを
してしまった。


なんて馬鹿なことを…



と思う反面。




夜になり、電気を消して布団に潜ると


あの唇の感触が蘇って

あの快感が蘇って


ぞわぞわと鳥肌が立つ。


あの温もりが恋しくなって

熱くなったものが恋しくなって


私の体中の細胞が

欲しい欲しいと訴える。



女として愛される喜びと

人を愛する喜びを

知ってしまった心と体は

もう理性で抑えることができない。




だってほら、

下着がこんなに……



中指で直に触ると
トプンと入ってしまう。


熱くなった柔らかな壁が
ヒクヒクと動いている。



こんなになってしまったら、
もう我慢なんて無理。


前よりも、もっともっと激しい
ひとり遊びをしてしまう。



ヤタベェが愛しい

ヤタベェのが欲しい


快楽に身を任せて指を動かしていると

手のひらに暖かい液体が
ピュッと飛んできた。


これって…


開発された自分の体に驚き
進化したことに気付く。


ヤタベェが変えてくれた。


彼となら…

一緒に新境地に行けるかもしれない。



一気に波が押し寄せて
頂点に達した後


なんでここに
ヤタベェは居てくれないの?

私はなんで
ヤタベェのそばに居れないの?


そんな当たり前のことを思って
余計に寂しくなってしまう。




ヤタベェに会いたい

会ってはいけない



抱いて欲しい

ヤってはいけない




精神と肉体のバランスが取れない。




『中年のセックスなんてグロい』

したり顔で言い放っていたけど


単に自分を抑止するために
言い聞かせていたんだろうな、と

こうなってから思い知る。




そういえば、
マイムちゃんに怒られたよね。

セックスできる人への嫉妬だって。
相手がいる人への僻みだって。

その通りだと思う。


「私だって愛が欲しい」と本音を
ぶちまけてしまったけど、

もっと正直に言えば

「愛が欲しい!セックスしたい!」

こうだろうな。



「いくつになったって女は女なんだよ」

マイムちゃんが言っていたことは
すべて正しい。

この体の疼きが証明している。




かと言って、
不倫を続けるわけにもいかない。

どちらかをキッパリと
やめるしかない。



大事な家庭を取るのか

女と欲と快楽を取るのか

きちんと決断しなくてはならない。



家庭を取るのが真っ当だろう。

結婚してから20年の月日を
積み重ねてきたんだもの。


いくらハルと同居人のような関係でも
旦那は旦那だし、私は妻であるし、

たかが突然現れた誘惑なんぞに
振り回されて壊れるような

そんな軽い時間を
過ごしてきたのではない。



でも


このままで私は幸せなんだろうか


そんな、たったひとつの疑問に
グラグラと心が揺らぐ。


人生は一度きり。
ましてや、もうこんな年。


子供達も大きくなった。
親としてのお役目御免も間近だ。


子供達が独立していったら
残されるのは、老いたハルと私だけ。



耐えられるのか?

幸せなのか?



この世とサヨナラする時に

ああ、楽しかった

そう思って満足して逝けるのか?




わからない。


答えが出ない。