土曜日は丸一日空くことになったので

今までできなかった所の掃除や
いらない物を処分して整理整頓や

ちょっと手間暇かかる料理を作ったり
チーズケーキなんか焼いちゃったり

なかなか充実した時間を過ごしていた。



ハルは特に何も言わず
「あ、いるんだ」という感じ。


子供達からは笑いながら
「邪魔くさっ!」と言われる。



シンタロさんの店に通う交通費で
資金も底をついたし、

まあいいか、と思う。



ヤタベェのことは忘れたのか
と言えば全くそんなことはなくて

ふとした時に

ヤタベェ何してるかな

とか

会って話したらこのモヤモヤは
消えるのかな

とか、ごちゃごちゃ考える。


ス力イプを開いて
さりげなく『元気?』くらい
言ってもいいのに

どうしても躊躇して指が止まる。




一度目覚めた身体の疼きは
収まることがなくて

前に買ったえげつないオモチャを
引っ張り出してきては

ひとりで欲を満たす。


頂点を迎える時には無意識に
ヤタベェの名前を呼んでしまい

そこだけは自分に嘘はつけなかった。




刺激もなく、穏やかな毎日。



このまま時間が忘れさせてくれるなら
それでいい。


一時的に見た夢だと思って
終わらせればいい。




そんな風に思い始めて、
もうすぐクリスマス。


咲希は彼氏とお泊りデートだし
実希は友達とネズミーランド、
光希は男同士でゲーセンらしい。

親がすることは何もない。


「サンタさんだけ来ればいいよ」

3人から同じことを言われた。

ちゃっかりしてるわ。




「ハル、クリスマスはどうする?」

一応訊いてみた。

家にいるならケーキくらい焼こうかと。


「土曜日だけど普通に仕事だし…
ああそうだ!ソノアト忘年会ダッタワー」


そうかー
ずいぶん演技くさい返事ダナー
ものすごい大根役者ダワー


そりゃクリスマスだもんね。
おもてなし子と会うに決まってるわな。

予定なんて訊くんじゃなかった。






夕暮れのクリスマスイブの街は
装飾がキラキラと輝き、

行き交うカップルは
みんな幸せそうに笑っていて、

私は人の流れに逆らい
コンビニ袋をぶら下げて家に帰る。



今年は、
誰もいないクリスマス。

家でひとりぼっち。



ハルはおもてなし子から貰ったであろう
ダッサいネクタイをして、
朝っぱらから出て行った。


マイムちゃんは実家だし、
新婚のカナヤン達はホテルで食事らしい。


他に知り合いといえば…
ネットの中の人しかいないじゃん。


うわーなんて寂しいババアなんだ、
私ってば。




テレビを見ながら
コンビニで買ったパスタを食べる。


年末音楽祭ねえ…
最近の曲は全然知らんし。

パスタもイマイチ美味しくない。


つまんないな……




ピロンピロン

ス力イプの着信音が鳴った。


『こんばんは、久しぶり』

ヤタベェだ!


ちょっと嬉しい。
いや、だいぶ嬉しい。

その勢いで

『久しぶり。元気だった?』

普通に返事をしてしまった。


『もし良かったらだけど、
これからお食事でもしない?』

今から!?

うーーーん……

さすがに考え込んでしまう。


『グレ子ちゃんちって、確か
◯◯市だったよね?』

『うん』

『仕事で近くまで来てるの』

ええっ!

どうしよう…



嬉しい、会いたかった

いやいや、断るべき


ふたつの思いが交錯する。



どうしよう どうしよう


迷っているうちに

『やっぱり急すぎたかな、
ごめんなさいね。また今度ね』

ああっ!!

待って待って!!

『行く』

急いで送信した。



返事は来ない。


ああ、諦めてしまったか…

迷ってすぐに返事をしなかったことを
ものすごく後悔した。



携帯の前で15分待ったけど、
いつまで経っても着信は鳴らない。


こうなると
会いたい気持ちが勝ってしまって
どうしようもなくなる。


馬鹿だな、私は。



冷え切ったパスタを
悲しい気分で食べ終わると

ピロン ピロン

あっ!返事きたーー!!

ガバッと携帯を取って見る。


『よかった。じゃあ支度できたら
連絡してね。待ってるから』


やったーーーー!!


嬉しくて部屋の中を
ぐるぐる走り回る私。

自分でもなにやってんだか意味不明。


『うん!待ってて』


お皿も洗わず、メイクもせず、
洋服ダンスから服を引っ張り出して
大慌てで着替え、

バックを掴んで家を飛び出した。