大晦日。


この日ぐらいは家族5人揃って
年越ししたいのだけど

年々参加人数が減って
ついにハルと2人きりになってしまった。



仕事は休みに入ったのに
なぜか出かけずにゲーム三昧のハル。

おもてなし子ちゃんもヤタベェと同じで
帰省中なのかもね。


お互い残された寂しい身同士、
年越しそばでも食べましょうか。





元旦の夜は実家に泊まることに
決めていた。

「ハル、一応訊いとくけどさ」

「なに?」

「私の実家、行く?」

「なんで俺が」

ということで、一人お泊り。


結婚の報告以来
嫁の実家に1回も行かない人って

なかなか凄いと思う。






「ただいまー」

実家のドアを開けると
玄関に小汚い下駄みたいなのがあった。

うわー、きったねえ!誰だよ…


廊下をドスドス歩く足音と共に

「おう、マナ!大きくなったな!!」

ガタイのいい髭モジャ頭ボサボサの
山賊みたいな男が現れて

バカでかい声で私に話しかける。


えっ、誰?怖い、このおっさん…


怯えていると、母が笑いながら
リビングから出てきて

「タケシよ、タケシ」

えええっ!?

高校卒業して行方不明になった

「お兄ちゃん!?」

「やっとわかったか、ははは!!」

豪快に笑われる。



地方のド田舎で悠々自適に暮らしてきたが
親が心配になって出てきたらしい。




「この家を売り払って、お母さん達も
タケシの所へ引っ越そうと思うの」

突然の急展開に驚く私。


「隠居生活しとるとボケるからな!
まだまだ田植えや稲刈りで
働いてもらわんとな!ははは!」

今年中には移住すると言う。



両親の老後の心配をしていたが、
この件で一気に解決。

よかったよかった。




あとは、義父と義母の問題が
残されている。


夫婦仲が悪く今は別居状態なのだが、
嫁の私は手が出しようもない。

ハルは「俺の幸せには関係ねえ」と
全くもって聞く耳を持たない。

自分の親なのに。





ヤタベェが帰ってきて
お土産を買ってきてくれたそうなので

2日の夜に会いに行く。


部屋に入るなり

「おかえりなさい。会いたかった」

「ただいま」

抱き合ってキスをした。



私がリクエストした干物と、
私が好きそうなご当地おふざけグッズ
みたいな変な物を貰い、

「2人で食べようと思って」
と買ってくれた名物のお菓子を食べながら

ヤタベェのお土産話を聞く。



実家では、お母さんに食べさせられ
お父さんに呑まされ
『食べる呑む寝る』を繰り返して過ごし

その他の時間は3歳の甥っ子に
懐かれて、ずっと遊んでいたらしい。

微笑ましい話でほっこりする私。



そこまでは、よかった。

そこまでは笑って聞けていた。


青天の霹靂とは、
まさにこのことだろう。



「実は、お見合いしなきゃいけなくなって」

「ええっ!」

後頭部をハンマーでぶん殴られた
ような衝撃が走る。


「母親の友達の娘さんでね、
こっちに住んでるらしいのよ」

サーっと血の気が引く。


「年は?」

「23歳だって」

もう白目むきそう。


「……会うの?」

「うーん、報告しなきゃいけないから、
まぁ1回は会わないとだわ」


好きな人がいると、なんで
断ってくれなかったんだろう。


「そっか…」

ヤタベェが何か言ってるけど、
もう頭に入ってこない。




シャワーを浴びて
鏡に映った姿を見ると

そこに立っているのは
明らかに中年の女。


目尻の小じわ。
ほうれい線。
シミだらけの肌。

ハリがなく垂れた胸。


相手は20代。

無理だ、勝てるわけない。

こっちはババアだもん。

芸能人みたいな
綺麗な人ならいいけどさ、

こっちは普通のおばちゃんだもの。


いい年こいて夢見すぎだよね。





ヤタベェはいつものように
私を抱いてくれたけど

幽体離脱しているように
心がどこかへ行ってしまっている。


それでも

ヤタベェに貫かれると
全身がしびれ、震え、
喜びの声をあげてしまう。

この快感だけは失いたくない。



性欲を満たすためには
ヤタベェのモノが必要で。

ここで別れたら
また虚しくひとり遊びの日々だ。



割り切ろう。


お見合い子ちゃんと
うまくいくなら、それでいい。

結婚したら若い奥さんを持てて
自慢できるし、

子供だってできるだろう。


いいよ。

セフレでいい。


いや、

私のようなおばちゃんを
抱いてくれることに感謝するべき。

お願いだから
セフレでいさせて下さい。


あなたが本気で誰かを愛するまで。





「いっぱい出ちゃった」と笑うヤタベェ。

視点が合わなくて
その笑顔もボヤけて見える。



ヤタベェは幸せになって下さい。

私はヤタベェを幸せにはできない。



「お見合いの子と真剣に付き合うように
なったら、すぐに教えてね」

セフレの私は消え去るのみ。


ヤタベェは何も言わない。



聞いているのか、寝ているのか、

ヤタベェに背を向けている私には
わかりようもない。