私を積んだストレッチャーは緊急外来室を出て、
どこかへ運ばれていく。

無機質な廊下がそうさせるのか、
ぶるっと寒気がする。
この病気がそうさせているのかもしれない。
 

しかしとにかくフィリピンの病院内は寒い。
クーラーをがんがんかけている。
まるで秋冬にかけての気温。

何でも医師達が軽い運動をしても
汗をかかないようにとの配慮のことだ。
しかし限度ということもある。
とにかくフィリピンの病院は寒い。

この脳梗塞が起こる日の前日、
子供達が熱があるので、病院に来たばかりだ。
そこでも寒いからと妻が羽織るものを用意してくれ、
それで風邪を引かずにすんだ。
結果的に風邪以上の病気で次の日来ているのだが。
今回は急いでいたこともあり、シャツ1枚だ。そして短パン。
とても寒い。

寒さを感じながら、
ストレッチャーが停まり、無機質な白色のドアが開かれる。
ドアの上には
"MRI ROOM"
と書かれている。

やっとか。
そしてこの症状の原因が何なのか、いよいよわかる。
早くしてくれ。

私のストレッチャーが部屋の中に入る。


~~~続く

焦れている。
自分の病気はなんなのか?
焦りからなのか若干気持ち悪くもなり、寒気もしだした。

不安を感じていると、ほどなくしてまた別の人が来た。
医師か看護師かわからない。

「人差し指を鼻にあてたあと、私の人差し指にあててください。」
また例の質問セットか。。。

「目を見開いてください。」
「ベロを出してください。」
「両手をあげてください。」
「片足をあげてください。」
「(爪楊枝を各所にあてながら)左右の感度の違いありますか?」
また????
そして今???
呆れ始めてきた。
左足の痺れが強く出てきた感じがあるので、
最後の質問は若干誇張気味に答えた。
「左は右の50%くらいかな?」

ただこれを答えても、聞き直したり何かを急ぐ素振りはない。
この質問の目的が全くわからない。
私が
「痺れが強く出てきた」
と言っても
「それで?」
と言わんばかりで何も反応しない。


フィリピン人の特徴で
「これをやるものだ」
ということだけ教育されたら、
相手がどう言おうが
応用が利かず、とにかく杓子定規だ。


なんて仕事上でも思っていることを
暫く頭の中に巡らせている。
頭に血が上り始めている。
こんな時とは思いつつも。

暫くすると看護師が複数来て
「移動します」
と言った。
どこ?

あれよというまに点滴等を外され
ストレッチャーに寝ている私は
どこかへ連れて行かれる。


~~~続く
 

一通りの質問が終わった後、急ぎ緊急外来病室に行かされ
あっという間にストレッチャーの上に。
そしたら、矢継ぎ早に腕をとられ
血圧、血糖値、そしてなぜか両腕に点滴が取り付けられる。
今までのフィリピンでの病院と比べたら、とてつもなく早い。
それで一度は安堵する。

暫くすると、医師っぽい人が来て、
「人差し指を鼻にあてたあと、私の人差し指にあててください。」
「目を見開いてください。」
「ベロを出してください。」
「両手をあげてください。」
「片足をあげてください。」
「(爪楊枝を各所にあてながら)左右の感度の違いありますか?」
の質問が来た。
応じてはいるけど、10分ほど前と同じ質問されたけど・・・
なんて思いつつ、進行形で症状が進んでいるための質問かと思い、
答える。
ただその質問の後、なにもアクションがない。
この質問の後、
「症状は?」
と聞かれたので、
「左腕と左足が痺れている。」と同じ内容を返答する。
それで、何もアクションしない。

それより脳の検査が必要なのでは?
持参したスマホで
脳 検査
を調べる
そうすると
頭部MRI検査
が出てくる。
早くMRI検査しないのか?
まだこのときは何が脳に起こっているか分からない。
とにかく検査して、何が起こっているのか
早く知りたいと焦る。
焦る。
 

車椅子に連れられ、ようやく緊急外来に到着。
一刻も早く処置を受けたい。焦る。。

過去に何度か緊急外来来たことあるが、
最初の受付でよく30分ほど待つことがあるが、
朝7時、
それほど人が緊急外来に人がいない。
受付も空いている。

「ラッキー、早くしてくれ」
なんて思いながら受付をする。

名前、生年月日聞かれる。
そして症状を言う。
では、
「血圧を測って」
なんてのんびりやっている。
この国では普通なので、なかば早く処置をしてくれることは諦める。
「人がいないのでまぁましかな?

15分くらいは待つことになるかな?」
そんなことを考えて車椅子にのりながら、
待機場所に行こうとした瞬間、

 


大勢、5,6人いただろうか、
白衣の人たちが私の元にかけつける。

えっ?えっ?と思いながら、
担当の女医師が矢継ぎ早に私にテストしてくる。
「人差し指を鼻にあてたあと、私の人差し指にあててください。」
「目を見開いてください。」
「ベロを出してください。」
「両手をあげてください。」
「片足をあげてください。」
「(爪楊枝を各所にあてながら)左右の感度の違いありますか?」
変わった質問だけど、これが脳異常に致しての質問なんだな
と思いつつ真剣に答えた。

ただこれらの質問は後になって
私にとって負担になることは
このときの私は知るよしもない。

 

 

~~~続く

病院へ着いた。

いくつか言づてを言い運転手を帰す。

 

メインロビー横の緊急外来の場所にたどり着いた。。。

朝6時半。

しかし緊急外来だったら、明かりが着いてスタッフも沢山いるはずだ。

しかし、しっかりドアは閉じられ、ガラス戸の中は暗く人もいない。

 

看板を見る

"URGEENT CARE"

緊急外来じゃないの?

しかしドアに鍵がかかっている。

 

仕方なく、メインロビーの警備員がいる通常入り口に向かう。

ここまで来ると、歩行がよくゆかなくなっている。

 

やばいな。。。

 

警備員に話しかける。

「Left art and leg is numbness」

伝えると

「Here is not Emergency! I call a person with wheel chair, wait a moment」

親切な警備員に感謝しつつも待つ。

 

待つ間、ここなしかなんか動悸もも出てきた。

 

ちなみに、フィリピンの「暫く待つ(wait a moment)」は

日本人の「暫く待つ」感覚と違って長い。

しかもこんな状態だから、

早く早くと心の中で叫ぶ。

 

やっぱやばい、絶対に脳がおかしい。

俺はどうなってしまうんだ?

 

ようやく一警備員と車椅子が到着した。

ほっとした。だけど上手く歩けなくなってる。

けどなんとか車椅子に座った。

 

「Go Emergency」

 

警備員と車椅子に乗った俺が緊急外来へと行く。

 

 

~~~続く

運転手は病院へと急ぐ。

 

車の中で私は左腕と左足に痺れを感じている一方

痺れが治らないところを見ると、やはりいよいよ脳卒中の可能性が頭をよぎる。

(おふくろと一緒になっちゃたかな?)

何年か前に亡くなった母の事が思い出される。

 

母はまだ自分が社会人になりたての頃、

脳出血になった。

発症した直後脳に異変を感じた母は直ぐに妹に電話をかけたらしい。

その際には既に上手く喋れなかったらしい。

これを思いだし、自分で喋れるかどうか確認する。

「あ・え・い・う・え・お・あ・お か・け・き・く・け・こ・か・こ」

言えた。

 

声を出して、口を大きく開けてもう一度言う。

「あ・え・い・う・え・お・あ・お か・け・き・く・け・こ・か・こ

さ・せ・し・す・せ・そ・さ・そ た・て・ち・つ・て・と・た・と

な・ね・に・ぬ・ね・の・な・の は・へ・ひ・ふ・へ・ほ・は・ほ

ま・め・み・む・め・も・ま・も や・ゑ・ゐ・ゆ・ゑ・よ・や・よ

ら・れ・り・る・れ・ろ・ら・ろ わ・うぇ・うぃ・うぇ・を・わ・を」

ときどき旧文字などを浮かべながら、昔の人は言えたのかな?

なんてことを考えつつも全て言うことが出来た。

 

なんともないのかな?でも痺れてるし・・・

 

と思っているうちに病院へ着いた。

 

 

~続く~

 

 

痺れを自認してから、約1時間が経過していた。

痺れが強くなってきて、少し動悸も出てきた。

 

早く行かないと。

 

そこで着替えをすませる。

 

日本ならここで救急車を呼ぶんだが、

ここはフィリピン。

以前コロナ時に救急車を呼んだが

20分待っても来なかったため、

外に出てタクシーを呼んだ記憶がある。

 

まだ朝早いので、タクシーは捕まらない。

そこでgrab(配車アプリ)を使おうと思ったが、

通常ならほぼ仕事で家を出る時間。

 

もう出迎えの車が来ているはず。

(フィリピンでは運転手付きの車通勤が普通。)

少し早めだが、運転手を呼ぶ。

 

いつもは階段がある先の待ち合わせだが、

階段を歩く自信がないので、

階段を通らずにすむ地下に車を呼ぶ。

 

程なく待つと車が来た。

歩きがおぼつかなくなっているが、

車まで歩く。

 

「〇〇 Medeical Center」

と告げる。

「Hurry up」と言おうと思ったが、

それを言うと運転手が見境なく

急ぐので言わずにいた。

それでも運転手はいつもと様子が違う私に何か感じたようだ。

「Are you OK?

「Not so OK」

 

運転手は急いで病院に向かった。

その間私は

「Safety, please」

と言いながら。

 

 

続く

妻はベッドから飛び起き、怪訝そうな顔をして

[ダイジョウブ?」と聞く。

 

「ダイジョウブじゃない。I have numbness, left arm and leg.」

 

だけどその後、自分の中で葛藤が続く。

本当に脳に異常が来ているのか?それともただの痺れなのか。

 

その間、妻は子供達の様子を見る。

 

いったん落ち着かせるため、ベッドに横たわる。

痺れは変わらない。

 

「ダイジョウブ?」

もう一回妻が言葉を投げかける。

もう一回痺れを確認する。

変わらない。

 

変わらないということは、本当に脳に異変が?

 

そう考えると、早く病院に行かなければいけない。

そうこうしているうちに、焦りからなのか、

この病気がさせているか分からないけど

気持ち呼吸ができなくなってきている気がした。

 

これは尋常ならない。

決めた。

 

「I go hospital immediately」

 

痺れに気づいてから1時間が経過していた。

 

 

続く

 

「左半身が痺れているんだ・・・」

言おうと思った。

しかし単語が出てこない。

 

というのも、妻はフィリピン人。日本語がわからない。

なので通常の会話は英語。

で、「痺れ」という言葉が咄嗟にその時は出てこなかった。

昨日妻から「痺れ」の単語を聞いていたけど、

ジェスチャーと共に言っていたこの単語のことを忘れた。

だって昨日の段階では自分がまさか

この単語をこの後連呼するとは夢にも思わなかったからだ。

 

自分の部屋に携帯を取りにいき、単語を調べる。

「numbness]

これがこの後1日に何回も連呼する単語だ。

 

急ぎ妻の寝ている場所まで戻る。

「I have numbness, left arm and left leg」

妻が起きた。

そして朝っぱらから自分を起こしている夫を見る。

勿論だが、寝起きなので何が発生しているかわからない。

それでも真顔で何かを訴えかけようとしている夫を見る。

 

もう一度ジェスチャーを交えながら強めに言う。

「I have numbness, left arm and left leg. This is strange!」

妻は私が何を言いたいのか理解は出来ていないようだが、

自分を起こすことはないのに起こしたこと、そして夫が

非常に怪訝なことを悟ったみたいだ。

 

「What's happen?」

「I have numbness, left arm and left leg stolongly. This is strange! First time for me!!」

「...」

「I'd like to go hospital immediately」

 

妻の顔が変わった。

 

 

続く

左半身の麻痺はまだ続いている。

これは間違いなく脳に異常が起きている。

間違いない・・・

 

不安が大きくなるとともに、麻痺の範囲が広がっているようにも感じる。

 

もう1回確認する。

寝違えた時の痺れではない。

 

そこでもう1回不安になる。

と同時に、次に何をしなければいけないか、いろいろ考える。

病院に直ぐにでも行かなければいけない、さもないと悪くなっていく。

 

先ずは妻の元へ行く。

 

この日の前日、子供二人に熱と咳が出ていたため、

仕事を休んで家族で病院に行っていた。

診察の結果子供二人だけでなく、もう一人も同じだった。

プラス妻の手に痺れがあるということで、こちらも

診てもらっていた。

ちなみに妻が痺れを訴えたのは、その日初めてだった。

診察の結果、原因不明だが要観察という内容だった。

 

ということもあり、妻への報告、

それも次の日に自分も痺れがあるということを

子供の看病で疲れている妻をわざわざ起こして、

それでも言わなければいけなかったから、

妻を起こした。

 

「左半身が痺れているんだ・・・」

 

 

続く