ほんとうに解けない問題とは 「完全なる証明」 | フォトリーディング読書感想文

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完全なる証明/マーシャ・ガッセン

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数学という科学の存在自体が、解けない矛盾のように思われる。

今から百年以上前に、当時の数学者のあいだでは「最後の万能人」として知られたアンリ・ポアンカレの言葉です。


ポアンカレが残した問題が、数学七つの難問のひとつとされる「ポアンカレ予想」です。

単連結な3次元閉多様体は3次元球面S3に同相である



今世紀中に解かれることがないであろうといわれた難問をロシア人数学者、ペルンマンは2003年に証明してしまいます。
しかし、彼は当然受けるべきである数学最高の栄誉であるフィールズ賞を辞退、数学会からも世間からもすべての連絡を絶って消えてしまいます。



ペルンマンの証明の功績を奪い取ろうとするハーバード大学教授ヤウ・シントゥン、彼が自分のもとで指導を行っていた2人の中国人が、ペルンマンの証明を「完全な証明」にしたとする偽りの論文を発表、フィールズ賞は2人の中国人のものだと主張しました。



ペルンマンは自分の証明に群がる人間の功利主義、権威主義、政治的行動に嫌気がさしてしまったのです。



いかに強靭な頭脳にも、人間行動という複雑極まりないものの全貌を捉えることが出来ない。


ペルンマンはあらゆる可能性を見通して把握するという、底知れぬ頭脳を持っていました。
だから、彼は解けない問題には出会ったことがありませんでした。



しかし、その彼にも解けない問題があったのです。



それは、野心や幻滅のためには、ときに矛盾した行動をとる、欲深い人間だったのです。
証明を成し遂げたペルンマンが出会ったのは、まさにそうした複雑な人間行動だったのです。



数学の世界でさえ、金が中心になり、マーケティングに走った宣伝文句が当たり前になってしまっています。



ペルンマンのそんな愚問は解きたくもなかったのかもしれません。





目次

序章 世紀の難問を解いた男
一〇〇万ドルの賞金がかけられた数学上の七つの難問のひとつポアンカレ予想。それを解いたその男は、名誉も金も全て拒否し、森へ消えていった
第1章 パラレルワールドへの招待
七〇年代のソ連の子どもたちは、全土で毎朝同じ時間に、学校に同じ服で出かけ、同じ内容を学習した。その一人だった私は別世界の存在に気づく
第2章 創造への跳躍
旧ソ連で、科学はイデオロギーに従属した。音楽と詩を愛した天才数学者コルモゴロフは、イデオロギーの砂漠に奇跡のようなオアシスを作り出す
第3章 天才を育てた魔法使い
自らは天才ではない。しかしその魔法使いは、才能を見いだし育てた。その教育法の秘密は、子どもたちに説明させ、それに耳を傾けることだった
第4章 数学の天使
才気走った生徒ではない。「それを超えるのはまた違った種類の人間」。レニングラード第239学校の数学教師リジグは、数学の天使と出会う
第5章 満点
ソ連の大学はユダヤ人の入学に厳しい制限を課していた。それを突破するための方法の一つが、数学オリンピックの代表選手に選ばれることだった
第6章 幾何学の道に
ペレルマンは、大学院進学に向けて「幾何学」を専攻する。一方、数学クラブで教師役をつとめることになるが、生徒に自分と同じ完璧さを求める
第7章 世界へ
ゴルバチョフ政権下でグラスノスチが始まる。ソ連の数学者たちは、初めて自由に西側の数学者たちと交流を持ち始める。世界へと誘った幾何学者
第8章 アメリカでの研究
渡米したペレルマンは、アメリカの数学者が二〇年前に試みてなしとげられなかった「ソウル予想」の証明を、たった五ページの論文で完成させる
第9章 その問題、ポアンカレ予想
球や箱や丸パン、そして穴のない塊の表面は、本質的にはどれも同じだ。だが次元をひとつあげるとどうだろうか。これが与えられた究極の問いだ
第10章 証明現る
インターネット上に、忽然と現れたその証明が、数学界に衝撃を与える。ペレルマンは、講座に出席し、丁寧に自分の証明の説明を始めるのだが。
第11章 憤怒
二人の中国人数学者が、自分たちこそが、ポアンカレ予想の完全な証明をなしとげたのだと発表する。ペレルマンにとって数学は別の顔をみせる
第2章 完全なる証明
一〇〇万ドルの問題は、完全に解けたのだ。クレイ研究所は授与のための準備をはじめる。が、その頃ペレルマンは、かつての師との連絡も絶った。
著者あとがき
ソースノート
補遺1 コルモゴロフの四つ穴ボタンの解答
補遺2 ケーニヒスベルグ橋の問題の証明
訳者あとがき