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「犯罪とは、われわれにとって、欲望探求の領域である」
――ラカン(フランスの精神分析家)
秋葉原、池袋、下関、大阪教育大付属池田小、
コロンバイン高校、ヴァージニア工科大・・・・
無差別殺人の犯人たちは、なぜこのような犯罪を犯すのでしょうか?
社会の影響は無視できませんが、
「格差社会」「いじめ」などの社会要因のみが原因ではありません。
無差別殺人の原因は単純ではないのです。
「一体何が殺人への一線を越えさせるのか?」
「凶行に走ろうとする人間を繋ぎ止めるのは何なのか?」
本書は、実際に起こった無差別殺人の事例を精神分析の手法で分析し、
共通構造をあぶり出しています。
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▼なぜ無差別大量殺人を犯すのか?
▽なぜ「誰でもよかった」のか?
全く面識のない人を襲うのは、自らの「内なる悪」を外部の他者に「投影」することによって、あるいは「特定の対象に対する憎しみ」を不特定の他者に「置き換える」ことによって、憎悪と復習の対象が無差別に広がったからである。
▽なぜ「大量」なのか?
憎悪と復習願望のみならず、強烈な自己愛と自己顕示欲ゆえに、たくさん殺すほど、憎悪を向けている社会や世間もしくは特定の集団に「仕返し」出来ると考えているからである。
▽なぜ「殺人(=自殺ではなく他殺)」なのか?
彼らの犯行が、赤の他人を道ずれにした「拡大自殺」に他ならないからである。
大量殺人犯は、「内なる悪」を自分自身で引き受けることに耐えられず、外部の不特定多数の他者に投げ抹殺しようとするのである。
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●無差別大量殺人を引き起こす6つの要因
① 長期にわたる欲求不満
「本当はこんなところにいる人間ではない」と不満を鬱積させているので、自分の置かれているその時その時の状況に上手く対処することが出来ず、現実の惨めな自分をますます受け入れられなくなる。
② 他責的傾向
自分の個人的な問題や失敗を他人のせいにして非難し、その人たちに怒りの矛先を向け、憎悪の念を抱く。
こうして、「自分中心」の世界に閉じこもり、自己愛的万能感を際限なく肥大させていく。
③ 破壊的な喪失
望まぬ別離や解雇などの対象喪失が重要な引き金になって、爆発的な怒りを急に引き起こす。
④ 外部のきっかけ
「コピーキャット」と呼ばれるやたらにまねる現象。
他者の無差別殺人を始め、ヒットラーのホロコースト、中上健次「19歳の地図」の主人公との同化、「タクシードライバー」のベトナム帰りの海兵隊員、また究極の大量殺人である「戦争」など、報道、映画、文学、漫画、ゲームがコピーキャットの対象となっている。
⑤ 社会的、心理的な孤立
彼らの多くは、独身あるいは離婚しており、愛情の絆や社会的な支えから切り離されて、「孤独な一匹狼」と呼ぶのがふさわしいような生活を送っていた。
⑥ 大量破壊のための武器の入手
大量殺人犯は強烈な自己愛の持ち主であり、それゆえに、誇大感や万能感を保ち続けるための手段として武器を必要とする。殺人の効率性のみによるのではなく、自己愛的イメージと現実の自分とのギャップを埋めるために、彼らは銃を手に入れようとするわけである。
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●犯人を生み出した社会・教育・家族の問題点
①「うつ社会」問題
成熟拒否社会が自己愛のない肥大を容認しており、自己愛的なイメージと現実のとのギャップが受け入れられない人間を数多く生み出している。
「成熟社会」の典型がうつ病を発症している。
②対象喪失と「喪の作業」
家族、友人、教師、上司、同僚など周囲の人々に相談することによって切り抜けてきたような悲哀反応――失恋や家族との別離、受験や仕事の失敗も含めて――までも、精神医療に託す傾向が強まってきた。
さまざまな共同体の崩壊によって、もはや身近な人間が一緒に受け入れられなくなったという深刻な事情がある。
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■精神医学の限界
無差別犯人者は、精神に障害を持っている場合が多い。
下関、池田小などの犯人は精神科での治療歴もあります。
精神医学によって心の病気を探知し、理解し、治療することは出来る。
犯罪を起こす危険性を感知することも出来ます。
しかし、可能性があるというだけで矯正隔離することは出来ません。
このような危険な情動を抱えた人間は、この世の中に溢れているのが現実なのです。
また、人格障害に対して、診断をつけることが出来ても完全に治療することが出来ないのが、精神医学の現状です。
医学では解決は不可能なのです。
■不満足社会
現代は、欲望を際限なく刺激する消費社会です。
人々を消費に駆り立てられるのは、「発展・膨張」していかざるを得ない資本主義の宿命でもあります。
そして、我々はもっと豊かに、満足するために、求め続けているのです。
自己愛のイメージを膨らませているのです。
現実の自分に不満があり、受け入れられないのです。
われわれは、「足るを知らない」のです。
いつも不満足な社会なのです
社会のあり方を変えないと、社会に殺されてしまいます。
■社会が守る?
社会情勢、環境、置かれた状況、歪めれた性格、大きな喪失やきっかけ・・・・・
殺人を起こしてしまう様々な要因がわかりました。
抑止力になるものは、周りの人や社会による支えですが、
そうした外部との接点がない、あるいはそれを拒絶した孤独な人が殺人を起こしている場合が多い。
それが実情です。
そうすると、それぞれの精神力の問題でしかなくなります。
本当に解決策が見当たりません。
最後に、お子さんを持たれている方は是非、しっかり読んで下さい。
◎わが子を殺戮者にしないためにやってはいけない十か条
1. 過度の期待
2. 母子密着
3. 過保護・過干渉
4. 欲望をすべて叶える
5. いい子・手にかからない子を放置する
6. 子供の多様な人間関係を妨げる
7. 「白か黒か」の二者択一的考えを教え込む
8. 危険信号を見逃す
9. 世間体を気にする
10. 他の兄弟・姉妹と比較する
目次
第1章 秋葉原無差別殺傷事件
第2章 社会全体に対する復讐
(池袋通り魔殺人事件・下関通り魔殺人事件)
第3章 特定の集団に対する復讐
(大阪教育大池田小事件・コロンバイン高校銃乱射事件・ヴァージニア工科大銃乱射事件)
第4章 無差別大量殺人は防げるか?
第5章 殺戮者を生み出さないために—何が抑止力になりうるのか?