『特別展 みちのくの仏像』 東京国立博物館
今や仏像展のメッカとなった感がある、東京国立博物館。過去に『仏像 一木にこめられた祈り』展 2006年、『飛騨の円空』展 2013年等。素晴らしい営業力で、各地の有名仏招請に成功。国立博物館というブランド力を差し引いても、お見事でした。特に2006年の仏像展は、私的にはレジェンド。今回も期待できそうです。
入場するなり、凄い仏像が…。
聖観音菩薩立像(しょうかんのんぼさつりゅうぞう)岩手県 天台寺 所蔵
「鉈彫(なたぼり)」と呼ばれる作風で、表面に鑿跡(のみあと)がくっきり残っています。初めて見るスタイルです。荒々しい(だが美しい)作りの身体と対象的に、丁寧に仕上げられた美しい顔。プレイボールホームランですね。
薬師如来坐像(やくしにょらいざぞう)
宮城県 双林寺 所蔵
特徴のある肉髷(にっけい)と静謐な御顔。東日本大震災に際し倒れた他の仏像を支える形となって、自らの左手を破損。2年かけて修復なったそうです。
青森県 西福寺 所蔵
円空(1632~1695)作。高さ175㎝、幅50㎝に対し奥行きが15㎝。板に彫ったような像、このスタイルも初めて見ます。
円空作。一般的な円空仏のイメージと違う、細やかな作品です。頭上の如来像の精緻さ、菩薩像の様々な表情。そして笑っているような御顔。最高です。
今回は、東北6県14の寺院から、19作品26軀の出品。少ないと思われるかもしれませんが、個性派揃いでお腹一杯です。御紹介した4軀以外も名品ばかり。会場のレイアウトも見事でした。各仏様を尊重しつつ見やすく配置。この展覧会がなければ出会うことがなかった仏様たちを見事に並べました。円空仏3作が並んだところ、会場に来なければ味わえない感動です。会場全体が名品ですね。
こういった展覧会は会期途中で作品入れ替えがあることが多く、目当ての作品が見られないケースがあります。ですから私はなるべく早めに行くことにしているのですが、今回は展示品の入れ替えはないそうです。会期は4月5日(日)までです。
平日にも関わらず大盛況でしたが、一つ気になった事があります。入場者の平均年齢はかなり高め、しかし仏像を拝んでいる人を一人も見かけませんでした。私は特に熱心な仏教徒ではありませんが、仏像は美術品である前に拝むものだと思っています。博物館で一人だけ仏像を拝んでいた私が変なのでしょうか?「御利益独り占め」それもいいかな。