「謎解きはクリスマスディナーのあとで」の巻
ーその3-
「お嬢様」
「しっかり為さいませ」
「お嬢様・・・」
「うーん・・・」
「か・・影山・・・」
「何を寝ぼけておられるのですか・・」
「私は・・影山ではありません・・執事の髭山でございます」
「ひ・・ひげやま・・」
「髭山・・おお・・執事の髭山じゃないか・・」
「・・・・って・・にゃあご・・・」
「いえ・・わたくしは髭山でございます・・」
「まっ・・いいかっ・・」
「うーん・・でも少し頭が痛いんだけど・・・」
「当たり前で御座いますお嬢様・・・」
「捜査の最中に椅子に躓きテーブルの角で頭を強打され・・」
「意識を失っていたので御座いますから・・」
「そ・・捜査って・・・」
「何を仰っておられるのですかお嬢様」
「このお屋敷の主・・三田修三様が殺されたので御座います」
「みた・・三田のおじさんが・・殺された・・」
「い・・いつ・・だってさっきまで私達の前で・・」
そう言うと私はゆっくりと体を起こしながら辺りを見渡した。
さっきまでクリスマスパーティーであんなに賑っていたホールなのに
今はガランとして静まり返っていた。
人の姿は疎らで警察官に事情聴取を受けている数人の来客をはじめ
パーティーのあと片付けを待つスタッフやこの家の執事やメイド達だけだった。
「ねえ髭山・・私が意識を失っている間にいったい何が起こったと言うの」
「本当に覚えてらっしゃらないのですかお嬢様・・」
「よろしゅう御座いますお嬢様・・今一度今回の事件を振り返って見ましょう」
私は傍にあった椅子に腰掛けると髭山の話に耳を傾けた。
「あれはちょうどクリスマスパーティーもお開きに近いプレゼント交換の前辺りでした」
「ホールでは司会者の人気芸人今田幸次郎がプレゼント交換について説明をしていました」
「プレゼント交換って確か・・ステージ横に設営された強大ツリーの足元に今回各自が持ち寄ったプレゼントを置き帰り際に自分以外のプレゼントを持って帰るって事だったわよね」
「左様で御座いますお嬢様・・」
「私は今回これ・・キティちゃんのポシェット・・」
私はバッグの中からクリスマスプレゼント用に綺麗にラッピングされた小さな包みを取り出した。
「そして司会者の説明も終わりこの家の主三田修三様のご挨拶が始まる予定でしたが・・」
「ところが・・・会場に三田様のお姿は無く・・」
「そこで・・急いで今回のパーティーの企画を任されていたあの鑑定団でもお馴染み名プロデューサーの森田クリスティーヌ嬢が三田様を探しにお部屋に参りました直後でした」
「きゃああああっ・・」
「クリスティーヌ嬢の絶叫と共にこの恐ろしい惨劇の幕は上がったのでした」
「何かいやに芝居がかっるわね髭山・・・まっ・・いいわ続けて・・」
私はテーブルの上にあったグラスを持ち口に運んだ。
「うげっ・・これって・・シャンパン・・・」
「わたし・・アルコールはだめ・・」
「おおこれは・・・」
「お嬢様がお生まれになった1999年のヴィンテージもののドンペリで御座います」
そう言うと髭山はグラスのドンペリを一気に飲み干した。
「髭山・・・お前・・良く人の飲みかけのお酒を平気で飲めるわね」
「うっぷ・・いや・・失礼いたしましたお嬢様・・」
「髭山・・・お前少し顔が赤くなって来たわよ」
「それではお嬢様お話の続きを・・・うっぷっ・・・」
髭山はそう言うとピンク色に染まった頬をハンカチで隠しながら話を続けた。
「どこまでお話をいたしましたでしょうか・・・おう・・そうそう・・うっぷっ・・」
「三田氏をお部屋に迎えにいったクリスティーヌ嬢が悲鳴を上げて会場に飛び込んできた所からでした」
「三田さんが・・三田さんが死んで・・殺されています・・」
「そのクリスティーヌ嬢の言葉で会場は大騒ぎ・・パーティーどころでは無くなりました」
「ショックで娘さんの香奈枝様はお倒れになり今ご自分のお部屋で零児様数人のご友人により介抱されております」
「そしてその後すぐに執事長の影山氏が警察に連絡を取りました・・・」
「それにより・・当然の事・・警察の支持で警察が到着するまでの間事件現場の保存と本日の来客をこのお屋敷から一歩も帰らぬ様に足止めをすることを影山氏は命じられました」
「そして先程警視庁の本郷警部はじめ捜査一課の刑事さん達が到着され大勢の来客は別室で待機・・」
「事件現場の鑑識による捜査と重要参考人の事情聴取が始まったところで御座います」
「なるほど大方の話は分かったわ・・」
その時だった後ろから聞き慣れた大きな声が聞こえて来た。
「はいはいはい・・高見君。このくそ忙しい時に何を野良猫とくっちゃべってるのかね・・」
「急いで捜査に加わってくれたまえっ・・」
「本郷警部って・・まさか本郷先輩・・・」
「何か大人びていつもと雰囲気違うけど・・」
「それに捜査に加われってどう言うことですか・・・」
「何を寝ぼけた事を言っておるのだ高見君・・」
「君は警視庁捜査一課の刑事なんだから当たり前だろうが・・」
「私が刑事・・冗談はよして下さい本郷警部・・私はれっきとした中学生・・・」
「・・・・」
その本郷警部の言葉で私は改めて自分の体の変化に気がついた。
「えええっ・・えええっ・・胸が・・・」
「胸がある・・」
良く見ると私の体はいつの間にか大人の女性になっていた。
「何・・何が起こったの・・助けて髭山・・・」
「・・・・」
「・・・って・・・髭山がいない・・・」
そして本郷警部の視線に耐えられなくなった私はその場でべそをかき泣き出したのでした。
「つづく」

