「藤堂さん。まだあいつら来てないようですね・・」
「俺達にビビッてあのラーメン屋・・逃げ出したか・・」
「あははは・・」
あの先頭の背の高いのが藤堂君みたいね・・
なかなかのイケメンじゃん・・
静香さんが好きになるのも分るような気がする・・
僕はそんな独り言を言いながらひとり草むらの影から彼らの様子を見ていた。
それにしても香織の奴何処行ったのよ・・
やっぱりここ蚊が居るみたい・・
僕は手で首や足を掻きながらふと足もとを見た。
大きなガマ蛙が一匹足もとでこっちを見上げていた。
シッシッ・・あっち行ってよ・・
と手で掃う仕草をしてみるが一向に動かない。
そのうちぴょんと僕の膝の上に飛び乗って来た。
「あぁぁぁ・・」
僕は我慢できずに声を出してしまった。
「藤堂さん。今何か聞こえませんでしたか・・」
「いいや・・たぶんこの辺によくいるガマ蛙だろう・・」
「そ・・そっすかね・・」
誰がガマ蛙なのよ・・失礼ね。僕はほっぺを膨らまして呟いた。
でもお陰で蛙は僕の声を聞いて驚いて何処かへ行ったみたいだった。
藤堂君たちはゆっくりと鉄橋の方へと歩いて行った。
ひとり・・ふたり・・さんにん・・
僕は彼らの人数を数えていた。
えー決闘って一対一じゃなかったの・・どう見ても7、8人こは居るわね。
その時だった鉄橋を挟んで反対方向から内の学校の制服を来た男子達が数人こちらにやって来るのが見えた。
やだぁ・・あれって乾君たちじゃないかなぁ・・
彼らはその内鉄橋の下まで来ると一定の距離を置いて立ち止まると睨み合った。
ここからあそこまでの距離はおよそ100メートルかぁ・・
ぎりぎり唇が読める距離だな・・
僕の読唇術の力は僕のマサイの戦士の視力を持ってしても100メートルが限界だった。
「僕のところへ・・届け言霊。僕のこころへ・・響け言霊」
僕はいつものように全神経を集中して彼らの唇を捉えていた。
「オウ・・・ラーメンヤ。ニゲダシタカトオモッタゼ・・」
「バカヤロウ。ダレガニゲダスカ・・」
「テメエ・・ヨクモコノアイダ・・オレンチノラーメンヤキテ・・」
「ダシガションベンクセーダノ・・シナチクガウスイダノイイヤガッテ・・」
「ヨクモ・・キャクノマエデハジカカシテクレタナァ・・」
「ナニイッテル・・オマエコソコノアイダノ・・ウチノヤキュウブノレンシュウジアイデ・・」
「ションベンピツチャーダノ・・ハゲカントクダノ・・ヤジトバシヤガッテ・・」
「オレノカワイイコウハイノビツチャーヲコケニシテクレタナァ・・」
まさかこの喧嘩・・いや決闘の原因ってそんな事だったのぉ・・
馬鹿っじゃないの・・こんな事みんなに聞かせられないよ・・
「キョウハキツチリ・・オトシマエツケサセテモラウカラナァ・・」
「バカヤロウ。ソレハコッチノイウセリフダ・・」
二人とも不良っぽく凄んでるんだけど・・
昔のヤクザ映画を真似たようなその台詞に
僕は可笑しさを堪えきれず思わずひとり吹き出していた。
そして二人は他の生徒達を後ろに下がらせると着ていた制服の上着を脱ぎ捨てた。
なによ・・もう決闘はじめちゃうの・・どうしよう・・香織早く帰ってきてよ・・
そして僕は思い出したように沙織たちの方へと視線をやった。
しかしさっきの場所に彼女達の姿はなかった。
えぇぇ・・・今度は沙織達まで居なくなってる・・どうするのよぉ・・
流石の僕もあっという間の展開にちょっと慌てていた。
「つづく」

