今回の記事は、前回紹介した、こちらの曲とも「関連性」が認められることから、その「リブログ」としています(「元の記事」も、どうぞご覧ください)。

 

 

今回の曲、「les paumes du petit matin "明け方のろくでなし"」(1961-62)も、1961年10月のオランピア劇場公演にて発表された曲のひとつです。

 

 

こちらは、その「ライヴ録音」となります。

 

 

 

こちらは、1962年3月23日、オランダのテレビにて放送されたライヴの映像です。

 

(「前回記事」に、「ライヴ全曲の映像」を貼り付けています)

 

 

 

こちらのDVDにも収録されていますが、「再生」には、「PAL」対応のプレイヤーが必要です。

 

 

 

 

こちらが、「オリジナル録音」となります(1962年3月9日録音/同15日発売)。

 

 

 

 

ブレルは、この曲をやはり、「オランダ語」でも録音しています。

 

 

1965年2月12日に録音されたもので、CDにも、同年録音の「補遺」として収録されています。

 

「オランダ語詞」は、アムステルダム出身の作家、詩人で、「翻訳家」でもある、エルンスト・ヴァン・アルテナ(1933-99)の手によるものです。

(オランダ語タイトルは、「DE NUTTELOZEN VAN DE NACHT」です)

 

 

 

 

この曲が発表された、1961年10月のオランピア劇場公演のCDはこちら。

 

 

こちらが、「オリジナルアルバム」(1962年3月録音)となります。

 

 

 

こちらが最新の「大全集」です(上掲のアルバムは、いずれも、このセットに含まれています)。

 

 

こちらは、いわゆる「文庫版」の全集です。

 

 

 

以下は、「過去」の「大全集」(現在では、「コレクターズ・アイテム」です)。

 

 

 

 

 

こちらは「全歌詞集」となります(書籍)。

 

 

 

 

「ブレル財団」公式サイト

 

https://fondationbrel.be/maintenance/

 

 

 

これまでの記事

 

 

 

 

さて...

 

 

 

今年は、「フランスシャンソン界の3大巨匠のひとり」、ジャック・ブレル(1929-78)が、「生誕95周年」ということで「記念の年」に当たっており(「4月8日」が、その「誕生日」でした)、その作品を、いろいろと紹介しています。

 

 

(もうすぐ「誕生日(5月22日)」のシャルル・アズナヴールも、今年は、「生誕100周年」に当たっています!!)

 

 

 

 

予定を一部変更して、今回も、前回に引き続き、ブレルの作品について書いてみたいと思いますが、今回、「この曲」について書くことで、アルバム「les bourgeois "ブルジョワの嘆き"」(1962)は、全12曲中、「10曲目」の紹介。

 

 

また、アルバム「オランピアライヴ 1961」は、全15曲中、「14曲目」の紹介ということになり、残すは何と、「les singes "猿"」(1961)の1曲のみということになりました。

 

 

 

「前回」「今回」とも、このアルバム2枚に「共通」する曲を採り上げていることもありますが、その「当時」というのはちょうど、「レコード会社移籍」の時期(「フィリップス」→「バークレー」)でもあり、「棚ぼた式」に舞い込んだ(「急病」の、マレ―ネ・ディ―トリヒの「代役」)、そのオランピア劇場公演での大成功が、アメリカナイズされた新しい音楽、「ye-ye(イエ・イエ)」にも充分「対抗」し得るものとして、「新たな期待」をもって迎えられた、まさに、「上昇気流の勢いに乗った」頃のことでもあるのです。

 

 

 

その、「バークレー社」への「移籍第1弾」として、「録音・発売」されたアルバムが、この「les bourgeois "ブルジョワの嘆き"」(「30cmLP」)というわけですが、過去には、「le plat pays "平野の国"」のタイトルでも発売され、日本では、1979年、「ブレル追悼盤(シリーズ)」(キングレコード社)の1枚として、「chanson sans paroles "無言歌"」(GP-665)のタイトルにて、発売となっています。

 

 

 

(参考)「日本盤」(GP-665)の詳細

 

 

 

 

このアルバム、「les bourgeois "ブルジョワの嘆き"」(「le plat pays "平野の国"」/「chanson sans paroles "無言歌"」)は、「移籍直後」の制作のため、当時は、まだまだ「手探り」といった感じで、「試行錯誤の跡」も多く見られます。

 

 

つまり、その「特殊性」が、このアルバムの「特徴」(「謎」とも言い得る...)としても挙げられるわけで、たとえば、次のようなものがあります。

 

 

 

これまでのような「ストレートな歌唱」から、「細部の技巧」を意識するようになった。

 

 

ステージにおいて、実際に歌っている歌詞の順とは異なる曲がある。

また、「メロディ」も、一部変更されている箇所がある。

 

(「Madeleine "マドレーヌ"」/「le plat pays "平野の国"」)

 

 

 

そして、どのような「制作上の意図」があったのかは分かりませんが、今回のこの曲、「les paumes du petit matin "明け方のろくでなし"」も実は、「後半部分」がそのまま繰り返され、「5分33秒」にもおよぶ、「長い曲」となっていたのです。

 

 

 

現在発売、もしくは「公開」されている音源ではもう、この「繰り返し」が省略された、「4分20秒程度」のものしか残っていないようですが(フランスでは、1988年発売の「旧全集(CD)」以降、この「再編集版」を採用)、日本で、1987年12月に発売された「2枚組CD」(新星堂/オーマガトキ)では、その、「5分半」の「オリジナル」のまま収録されているため、現在となっては、「大変貴重な資料」であるとも言うことが出来るのです。

 

 

 

こちらはもう、かなり「古い」商品で、現在入手出来るかどうかは「運次第」ですが、「歌詞対訳」、「日本語解説」もあわせて、大変「貴重」です(「2枚組」)。

 

 

 

 

ここで、今回の曲の「カバー」を見ていくことにしましょう。

 

 

いずれも、「大変珍しい」ものばかりです...。

 

 

 

 

こちらは、2010年ごろに録音されたアルバムのようですが、やはりブリュッセル出身の女性歌手、ルース・シャバヌによる歌唱です。

 

なかなかに、「自由」な感じがします...。

 

 

 

こちらも、とても「上手い」ですね(「横顔」とか、その「身振り手振り」とかが、ブレル本人をも思わせる...)。

 

少し「オーバー」な感じもしますが、本当によく、「特徴」をとらえていると思います。

 

 

 

こちらもまた、大変「珍しい」レコードです。

 

「1980年」制作で、「シンセサイザー」での演奏ということですが...。

 

 

 

こちらは、ちょっと「ジャズ版」といった印象の演奏です。

 

まあ、「原曲」自体が、「ナイトクラブで流れるジャズ」といった感じですが...。

 

 

 

こちらは、「原曲」が、「短編映画」にて使用された例です。

 

1984年の「カンヌ国際映画祭」に出品された作品だということですが、「オリジナルフィルム」が見当たらなかったということで、とりあえず、「コピー」をアップしたということのようです。

 

 

 

 

それでは以下に、今回の曲、「les paumes du petit matin "明け方のろくでなし"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

 

 

この曲、「les paumes du petit matin "明け方のろくでなし"」は、「前任」のピアノ伴奏者で、発表当時はすでに、「編曲・指揮担当」となっていた、フランソワ・ローベール(1933-2003)が「曲」を書いた作品です(「詞」は、もちろんブレル自身)。

 

 

1962年3月に録音されたレコードではもちろん、ジェラール・ジュアネスト(1933-2018)が「ピアノ」を弾いていますが、「2台ピアノ」であった「オランピア1961」では、あるいは、フランソワ自身が、この曲の「ピアノ」を弾いていたのかも知れません...。

 

 

(この公演では、「オランピア劇場のオ―ケストラ」が、「専任の指揮者」により演奏していたため、フランソワも、「ピアノ」にまわっています)

 

 

 

 

この曲は、「若者の固定概念」と、それに基づく「行動パターン」(「スノビズム」とも...)を、「カリカチュアライズ」して歌われているものだと思います。

 

 

現在では、「そんなの、大人による決めつけだ!!」と、「反論」されそうですけれども...。

 

 

 

 

「夕方に目を覚まし、お茶の時間だからと起き上がり、夜遅くになって出かけ、仲間たちと、たわいもない会話を楽しんだ後、明け方には、別れを惜しんで泣き崩れる...」

 

 

 

 

...これって、

 

 

 

♪さあ 親が寝たから 何でもやりたい放題よ! 何をしよう?

 

 

そうだわ! コンビニ行こうかな!♪

 

 

 

と歌われる、「ブリーフ&トランクス(ブリトラ)」の「コンビニ」(1999)の歌詞を思い出しますよね...(テ―マ「J-pop」にて、「正式な記事」を書いています。どうぞご覧ください)。

 

 

 

今回の曲の「邦題」は、従来、「夜明け前の呆(う)つけ者」とされていましたが、この字は「常用」ではなく、歌詞のイメ―ジからも少し外れるため、「旧邦題」でもある、「明け方のろくでなし」を採用いたしました。

 

 

原題の「paumes」という語は、もともと、「途方に暮れた」という意味で、その語義では、ダニエル・バラボワーヌ(1952-86)の曲、「ne pas parle de maleur "不幸を話さないで"」(1985)(「正式な記事」あり)での使用例もありますが、今回の曲では、「(「俗語」で)一文無しの/哀れなやつ」の意味で使われています。

 

 

ただ、「明け方の一文無し」という邦題もどうかと思いましたので、「オランピア1961」の「日本盤」にて使用されていた、「明け方のろくでなし」を、そのままお借りいたしました。

 

 

 

 

ところで、ようやく、「ようつべ」の貼り付けが「復旧」したようですね。

 

 

もっとも、今回の記事は、「復旧前」に着手したものなので、「ここまで」の動画はやはり、すべて「手貼り」ですが...。

 

 

 

 

せっかくなので、あと1曲、「この曲」だけ、貼り付けておきましょう(こちらは、「復旧後」に貼り付け)。

 

 

 

最初にも書いている通り、「オランピア1961」では、もう、あと「この1曲」だけです。

 

 

「les singes "猿"」(1961)。

 

 

 

 

ありがとうございました。

 

 

 

それではまた...。

 

 

 

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les paumes du petit matin  明け方のろくでなし

 

ils s'eveillent a l'heure du berger

pour se lever a l'heure du the

et sortir a l'heure de plus rien

les paumes du petit matin

elles elles ont l'arrogance

des filles qui ont de la poitrine

eux ils ont cette assurance

des hommes dont on devine

que le papa a eu de la chance

les paumes du petit matin

 

黄昏時に目を覚まし

お茶の時間に起き上がる

そしてあらぬ時に出かける

明け方のろくでなし

彼女たちは

胸のデカい女の尊大さを見せつけ

彼らは自信満々で

見たところ

親父が成金だろう

明け方のろくでなし

 

venez danser

copain copain copain copain copain copain

venez danser

et ca danse les yeux dans les seins

 

さあさあ、踊ろう

みんな、みんな、みんな...

さあさあ、踊ろう

踊る胸に目は釘付け

 

ils se blanchissent leurs nuits

au lavoir des melancolies

qui lavent sans salir les mains

les paumes du petit matin

ils se racontent a minuit

les poemes qu'ils n'ont pas lus

les romans qu'ils n'ont pas ecrits

les amours qu'ils n'ont pas vecues

les verites qu'ils ne servent a rien

les paumes du petit matin

 

彼らは夜を漂白する(夜を明かす)

メランコリーの洗い場で

手を汚すこともなく

明け方のろくでなし

彼らは、真夜中に語り合う

読んだこともない詩を

書いたこともない小説を

したこともない恋を

何の役にも立たない真実を

明け方のろくでなし

 

*venez danser

copain copain copain copain copain copain

venez danser 

et ca danse les yeux dans les seins

 

*さあさあ、踊ろう

みんな、みんな、みんな...

さあさあ、踊ろう

踊る胸に目は釘付け

 

l'amour leur dechire le foie ah

ah c'etait, c'etait si bien

c'etait ah vous ne comprendriez pas...

les paumes du petit matin

ils prennent le dernier whisky

ils prennent le dernier bon mot

ils reprennent le dernier whisky

ils prennent le dernier tango

ils prennent le dernier chagrin

les paumes du petit matin*

 

恋は... 彼らにはこたえる

それは... それは、とてもいいことだったんだが

それは... あんたたちには分からないだろうよ...

明け方のろくでなし

最後のウィスキーを飲み

最後の冗談を交わす

それからまたウィスキーを飲み

最後のタンゴを踊る

そして最後の悲しみ

明け方のろくでなし*

 

venez pleurer

copain copain copain allez

allez venez venez

allez venez pleurer

et ca pleure les yeux dans les seins...

 

les paumes du petit matin...

 

さあさあ、泣こう

みんな、みんな、みんな、さあ...

さあさあ、おいでよ

さあ、泣きにおいで

泣くその目も、胸に釘付け...

 

明け方のろくでなし...

 

 

 

*訳注:「オリジナル録音」は当初、この部分(2回目の「ルフラン」、および「第3節」)をまるごと「繰り返し」て収録されていました。

 

 

(daniel-b=フランス専門)