今回の曲、「les biches "女鹿"」(1961-62)は、1961年10月のオランピア劇場公演にて発表された曲のひとつです。

 

 

こちらは、その「ライヴ録音」となります。

 

 

 

 

続いて、1962年3月23日、オランダのテレビにて放送されたライヴですが(約52分)「1961年」との表記が大々的に出ていることもあり、実際に行なわれた日時は、はっきりとしません。

 

 

「全12曲」(「DVD」ではなぜか、今回の曲だけ「カット」されています)、「前回記事」の曲、「Rosa "ローザ"」も収録されています(11分09秒頃から)。

 

 

今回の曲、「les biches "女鹿"」は、「22分39秒頃」から始まります。

 

 

 

こちらは近年、2018年(没後40周年)に発見された、大変「珍しい」ライヴ録音で、1962年、パリの「アルハンブラ劇場」での公演の模様だということです。

(発売は「アナログ盤」のみで、「アマゾンフランス」では、現在も取り扱いがありますが、日本国内での入手は、少し「難しい」ようです)

 

 

 

 

このレコードについての「詳細」(英語)

 

 

 

 

こちらが、「オリジナル録音」となります(1962年3月7日録音/同15日発売)。

 

 

 

 

「12弦ギター」を用い、1972年6月23日、新たに録音されたのがこのバ―ジョン。

 

 

「初期作品の再録音集」として、全11曲が、「1枚のアルバム」となって発売されました。

(「今回の記事」によりついに、このアルバムも、正式に、「全曲紹介」達成となりました!!)

 

 

 

 

このアルバムについての記事

 

 

 

 

この曲が発表された、1961年10月のオランピア劇場公演のCDはこちら。

 

 

こちらが、「オリジナルアルバム」(1962年3月録音)となります。

 

 

こちらは、1972年6月の「再録音盤」です。

 

 

 

こちらが最新の「大全集」です(上掲のアルバムは、いずれも、このセットに含まれています)。

 

 

こちらは、いわゆる「文庫版」の全集です。

 

 

 

以下は、「過去」の「大全集」(現在では、「コレクターズ・アイテム」です)。

 

 

 

 

 

こちらは「全歌詞集」となります(書籍)。

 

 

 

 

「ブレル財団」公式サイト

 

https://fondationbrel.be/maintenance/

 

 

 

これまでの記事

 

 

 

 

さて...

 

 

 

 

今年は、「フランスシャンソン界の3大巨匠のひとり」、ジャック・ブレル(1929-78)が、「生誕95周年」ということで「記念の年」に当たっており(「4月8日」が、その「誕生日」でした)、その作品を、いろいろと紹介しています。

 

 

(もうすぐ「誕生日(5月22日)」のシャルル・アズナヴールも、今年は、「生誕100周年」に当たっています!!)

 

 

 

 

アズナヴール(1924-2018)の前に、(都合により、)予定を一部変更して、今回と次回は、やはりブレルの作品について書いてみたいと思いますが、5月16日が、ブレルの偉大な「伴奏ピアニスト」で、「作曲家」であった、ジェラール・ジュアネスト(1933-2018)の「命日」ということもあり、今回は、この曲、「les biches "女鹿"」(1961-62)について、書いていくことにしましょう。

 

 

 

ジェラ―ル・ジュアネストについての記事(昨年が、「没後5周年」でした)

 

 

 

 

今回の曲、「les biches "女鹿"」は、1961年10月、「急病」(「仮病」という説も...)で出演をキャンセルした、マレーネ・ディートリヒ(1901-92)の「代役」として、急きょ、オランピア劇場で、「真打ち(トップスター)」として歌うことになった際、発表された「新曲」のひとつです。

 

 

詞はもちろん、ブレル自身が書いており、ジェラ―ル・ジュアネストが書いた曲らしく、ピアノによる伴奏がメインというのが、「オリジナル」の演奏形態です。が...

 

 

 

伝えられるところによると、

 

 

 

「詞は鋭いが、曲には才気の輝きがない」

 

 

 

と評され、ブレル自身も、「歌っていて、時には退屈した」のだとか...。

 

 

 

そのためか、1962年バークレー社に移籍して、その「第1弾」として、「スタジオ録音」されたレコ―ドでありながら、その中の曲として「唯一」、後の1972年6月に「再録音」もされたのが、「この曲」だというわけです。

 

 

 

その「新録音」では、「12弦ギター」が用いられるなど、その「アレンジ」も大きく様変わりしました。

 

 

 

私自身も、その「新録音」から先に聴きましたが、続いて聴いたのが、1961年10月のオランピア劇場公演の音源であったため、この、「オリジナルの編曲」も決して嫌いではなく、むしろ、「好きな方」だとも、言うことが出来るものです。

 

 

 

みなさまは、どのように感じられるでしょうか...。

 

 

 

 

さて、ところで今回、せっかく「珍しい音源」(上掲参照)を発見したのですから、その「収録曲」も、少し紹介しておきましょう。

 

 

 

「アナログ盤」の「A面」に収録されている以下の曲は、1954年から56年にかけ、キャバレー(クラブ)に出演して歌ったものだということですが、ジャケットを見る限りでは、各曲の、その「正確な場所」までは分かりません(これらの録音については、「ディスコグラフィ」にも記載がありません)。

 

 

 

「c'est trop facile (Grand Jacques) "それはあまりにも簡単なことだ(グランジャック)"」(1953-54)。

(この曲については、すでに、「正式な記事」を書いています)

 

 

 

 

「les bles "小麦"」(1956)。

 

 

小麦は鎌のため

太陽は地平線のため

少年たちは少女たちのため

少女たちは少年たちのため...

 

 

 

 

「si tu revenais "もし君が戻って来るのなら"」(~1953)。

 

 

この曲、「si tu revenais "もし君が戻って来るのなら"」は、2003年以降の「新全集」に収録されているもので、大変珍しい、「若書き」の1曲(「1953年以前」に書かれた作品)とも、言うことが出来るものです。

(この音源は、「最初に発見された時のもの」で、2013年以降の「大全集」では、音質が、飛躍的に「向上」しています)

 

 

 

「tu n'as rien compris (s'il te faut) "君は何も分かっちゃいなかった(それが君に必要なら)"」(1955)。

(「EP(ミニアルバム)収録曲」のため、いわゆる、「文庫版全集(上掲参照↑↑)」には、収録されていない曲です)

 

 

 

 

 

それでは以下に、今回の曲、「les biches "女鹿"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

 

 

この曲で歌われているのは、ブレルの「女性観」であると言えますが、従来言われていたような、「女嫌いな面を示す曲」と言うよりは、「女性に対して臆病な点もあった」と言えば、少し、「理解の仕方」も変わるのではないかと思います。

 

 

(私だってそうですからね。分かりますよ...笑)

 

 

 

たしかに、ブレルに「女嫌いな面」があることも否定はしませんが、当時は「若かった」こともあって、この曲ではまだ、「カワイイ」方だと思います。

 

 

(「女鹿」とは、「(若い)女性」のこと。原題の「les biches」は、英語の「bitches」にとてもよく似ていますが、英語のような、「悪い(差別的な)」意味はないようです。

 

どちらかと言えば、「呼びかけ」で、「ハニー」とか、「小鹿(バンビ)ちゃん」とかいったニュアンスです)

 

 

 

 

こちらの曲、「les filles et les chiens "娘たちと犬たち"」(1962-63)もやはり、ジェラ―ルの作曲で、タイトルの通り、「娘たち」と「犬たち」を「対比」させた作品ですが、「テ―マ」としては、今回の曲とも「同じ」です。

 

 

この曲も実は、「今回の曲の候補」のひとつでした...。

 

 

 

ブレルの「女性観の終着点」ということでは、この曲、「la ville s'endormait "眠れる町"」(1977)も挙げることが出来ますが、現在では、「女性蔑視」ともとられかねない一節があるため(「真理」には違いないのですが...)「美しい曲」でありながら、紹介が、大変「難しい」1曲ともなっています。

 

 

だが女性たちは、いつでも、女性たちにしか似ていない

中でも、○○な女たち(「connes」)は

○○な女たちにしか似ていない

私は信じない

ある人たちが言うように

彼女たちが、人間(男)の未来となるのかどうかは...

 

 

 

この一節は、「女性歌手」であるモラーヌ(1960-2018, 7日が「命日」でした...)も、その「遺作アルバム」の中で、「省いて」歌っています。

 

 

 

 

次回は、やはり同時期に発表された曲、「les paumes du petit matin "明け方のろくでなし"」(1961-62)について書いてみたいと思います。

 

 

 

 

ありがとうございました。

 

 

 

それではまた...。

 

 

 

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les biches  女鹿

 

elles sont notre premiere ennemie

quand elles s'echappent en riant

des paturages de l'ennui

les biches

avec des cils comme des cheveux

des cheveux en accroche-faon

et seulement le bout des yeux

qui triche

si bien que le chasseur s'arrete

et que je sais des ouragans

qu'elles ont changes en poetes

les biches

et qu'on les chasse de notre esprit

ou qu'elles nous chassent en rougissant

elles sont notre premiere ennemie

les biches

de quinze ans

 

彼女たちは、僕たちの最初の敵

倦怠の牧場から、彼女たちが

笑いながら走り去るとき

若い娘たち

髪の毛のように長いまつ毛で

束ねたその髪で

そして、ただ目をやるだけで

人をだます

それだけで狩人は立ち止まる

その心かき乱された者たちも

彼女たちは、詩人に変えてしまった

若い娘たち

心の中から追い払おうとも

彼女たちは、赤くなりながら僕たちを追い回す

彼女たちは、僕たちの最初の敵

若い娘たち

15歳の

 

*elles sont notre plus belle enemie

quand elles ont l'eclat de la fleur

et deja la saveur du fruit

les biches

qui passent toute vertu dehors

alors que c'est de tout leur coeur

alors que c'est de tout leur corps

qu'elles trichent

lorsqu'elles grignotent(broutent) le mari

ou lorsqu'elles croquent(broutent) le diamant

sur l'asphalte bleu de Paris

les biches

qu'on les chasse a coup de rubis

ou qu'elles nous chassent au sentiment

elle sont notre plus belle ennemie

les biches

de vingt ans*

 

*彼女たちは、僕たちの最も美しい敵

花のような輝きを持ち

果実の味わいをも備えたとき

若い娘たち

見かけは純潔そのもの

まさしく彼女たちの心で

まさしく彼女たちの体であるのに

そうやってだます

夫からくすねるときも

パリのアスファルトで

ダイヤを粉々にするときも

若い娘たち

僕たちは、ルビ―で彼女たちを追いかける

彼女たちは、感情で僕たちを追い回す

彼女たちは、僕たちの最も美しい敵

若い娘たち

20歳の*

 

elles sont notre pire ennemie

lorsqu'elles savent leur pouvoir

mais qu'elles savent leur sursis

les biches

quand un chasseur est une chance

quand un beaute se leve tard

quand c'est avec toute leur science

qu'elles trichent

trompant l'ennui plus que le cerf

et l'amant avec l'autre amant

et l'autre amant avec le cerf

qui biche

mais qu'on les chasse a la folie

ou qu'elles nous chassent du bout des gants

elles sont notre pire ennemie

les biches

d'apres vingt ans

 

彼女たちは、僕たちの最悪の敵

その力を自覚したとき

しかもそれが当分続くと知ったとき

若い娘たち

狩人に分があるとき

彼女たちの美しさが、夜遅く目覚めるとき

彼女たちは、あらゆる手を使って

そうやってだます

男たちより、うまく退屈を紛らし

他の恋人とともに、恋人を裏切り

夫とともに、その、他の恋人をも裏切り

喜んでいる

僕たちは、必死に追いかける

彼女たちは、手袋の端で(適当に)僕たちを追い払う

彼女たちは、僕たちの最悪の敵

若い娘たち

20歳過ぎの

 

elles sont notre derniere ennemie

quand leurs seins tombent de sommeil

pour avoir veille trop de nuits

les biches

quand elles ont le pas resigne

des pelerins qui s'en reviennent

quand c'est avec tout leur passe

qu'elles trichent

afin de mieux nous retenir

nous qui ne servons a ce temps

qu'a les empecher de vieillir

les biches

mais qu'on les chasse de notre vie

ou qu'elles nous chassent parce qu'il est temps

elles restent notre derniere ennemie

les biches

de trop longtemps...

 

彼女たちは、僕たちの最後の敵

あまりに多くの夜を眠らずに過ごし

彼女たちの胸がようやく眠りに落ちるとき

若い娘たち

戻り来る巡礼者のように

観念したような足取りで

そんなときでも、過去のすべてを出して来て

そうやってだます

僕たちをもっと引き留めようとするけれど

その頃の僕たちと言えばもう

彼女たちが老いるのを防ぐぐらいのことしかできない

若い娘たち

僕たちは生涯、彼女たちを追い求める

彼女たちが僕たちを追い求めるのは、ほんの一時期だけ

彼女たちは、僕たちの最後の敵であり続ける

若い娘たちのまま

あまりにも長い間...

 

 

*訳注:1961年のオランピア劇場公演では、この「第2節」は歌われていません

 

 

(daniel-b=フランス専門)