こちらは「オリジナル録音」です(1954年録音/同年12月発売)。

 

 

こちらは、南仏ニ―スにあるイタリアンレストラン(キャバレ―)、「ラ・ヴィラ・デステ」での「ライヴ録音」です。

 

*「ラ・ヴィラ・デステ」は、「エステ荘」という意味ですが、リスト(1811-86)のピアノ曲にもなっている、「世界遺産」である「本家」は、「イタリア」のティヴォリにあります。

 

 

 

こちらは、「最初期」である1953年のライヴ音源とのことで、大変「貴重」なものです。

 

(笑いで)歌詞は詰まり気味ですが、観客の「大合唱」に助けられるなど、何とも「微笑ましい」録音です。

 

同じく、1953年11月、「トロワ・ボーデ(三匹のロバ)」でのライヴ録音です。

 

 

この「トロワ・ボーデ」は、パタシュウ(1918-2015)(本名「アンリエット・ラゴン」)とともに、ブラッサンスを見い出した「大物プロデューサー」、ジャック・カネッティ(1909-97)が、自身で「経営」していた、「レストラン」にして「ミュージックホール」であり、その「歴史的/文化的価値」から、現在でも、「修復」されて、「存続」しています。

 

 

 

この録音(レコード)についての概要(フランス語)

 

 

 

数少ない、「貴重」な「日本盤CD」。

 

もうかなり「古い」商品で、「入手」出来るかどうかは「運次第」ですが、「歌詞対訳」、「日本語解説」は大変「貴重」です(「今回の曲」が収録されています)。

 

 

 

 
こちらは、いわゆる「文庫版」の全集ですが、「オリジナル・ジャケット」を「再現」したスリーヴが大変「貴重」です。

 

 

 

こちらは、「初期作品」のみの「後発盤」ですが、「ライヴ録音」、「カバー」、「インタビュー」なども収録されていて、意外と、「侮れない」内容となっています。

 

「ラ・ヴィラ・デステ」(ニ―ス)でのライヴは、こちらに収録されています。

 

 

 

こちらは「歌詞集」となります(書籍)。

 

 

 

 

そして、「知る人ぞ知る」、まさに「隠れた名盤」である、通称「Brassens en jazz "ジャズ・ブラッサンス"」(1979)のアルバムから(「一聴の価値」あり!!)。

 

 

「ムスタッシュ」(1929-87)率いる「レ・プティ・フランセ」をバックに、それこそ、ウィリアム・"キャット"・アンダーソン(1916-81, 「アメリカ」出身)のトランペット・ソロ、そして、「セカンド・ギタリスト」であるジョエル・ファヴロ―(1939-)のギタ―、そこにまた、「レ・プティ・フランセ」のメンバーでもあるテディ・マ―ティンのヴァイオリン・ソロが絡むという、何とも心地よい、「陽気な名演奏」であると言うことが出来ます。

 

 

 

 

 

 

この録音についての記事

 

 

これまでの記事

 

 

 

さて...

 

 

「10月22日」は、フランス・シャンソン界の「3大巨匠」の1人、ジョルジュ・ブラッサンス(1921-81)の「誕生日」、そして、「命日」も、ちょうどその「1週間後」という「10月29日」で、この時期は、まさに「ブラッサンス・ウィーク」とも言えるのですが、今年も、それに合わせて、やはり「名曲」を紹介してみたいと思います。

 

 

今回の曲もまた、発表された時期としては「最初期」に分類される作品ではあるのですが、ブラッサンスのその「魅力」が「凝縮」されたものとも言うことが出来、「コミカル」で、「軽快」で、「愛らしく」もありながら、どこか「皮肉」で、しかし、何となく「憎めない」、そんな「不思議な曲」であるとも言うことが出来る「佳曲」です。

 

 

 

「p... de toi "不貞な可愛い子猫"」(1953-54)。

 

 

 

今回は、この曲で行ってみたいと思います...。

 

 

 

 

今回のこの曲の「タイトル」、何やら、「不思議な字面」のようにも見えますが...。

 

 

 

「略語」か「暗号」か...。

 

 

 

実はこれ、「スラング」の一種で、「言いにくい言葉」を「濁した」言い方(書き方)なのです。

 

 

 

「p...」というのは、「putain」を略したもので、この言葉の持つもともとの意味は「娼婦」ということですが、これに「対応」する英語の「bitch」には、「雌犬」の他に、「(オオカミ、キツネなどの)雌」という意味もあります。

 

「類似」するフランス語の単語として、やはり「3大巨匠」の1人である、ジャック・ブレル(1929-78)の作品のタイトルにもある「les biches "女(雌)鹿"」がありますが、英語の「bitch」のように、「putain(pute)」にも対応するような、「悪い意味」はありません。

 

(英語の「son of a bitch」=フランス語の「fils de pute」)

 

 

むしろ、恋人相手に、「ma biche (僕の雌鹿ちゃん)」という使い方をします。

 

 

今回の曲のこのタイトル、「p... de toi」は、略さずに書くと、「putain de toi」ということになりますが、「putain de~」で「何ていまいましい~/何てひどい~」という意味になり、この場合、「何ていまいましい(ひどい)君」ということになります。

 

そして、それに「対応」するかのように、「pauvre de moi」(「何てかわいそう(哀れ)な僕」)と返しているところが、ブラッサンス一流の「ユ―モア」だと言えますね。

 

 

「putain」や「merde」は、「使うのがはばかられる言葉」だとされていますが、一方で、「ポジティヴ」な意味でも使われ、特に「putain」は、現在では、「感嘆詞」のような用例もよく見られるようです...。

 

 

(日本語で言うところの、「スゲェ!」、「ヤべェ!」などといった使い方です)

 

 

そのため、現在では、この曲のタイトルも、略さず「putain de toi」と書かれることが多くなってきているようですが、「意味」は、そのまま、「何ていまいましい(ひどい)君」で変わりませんので、その点だけにおいては、「注意」が必要です。

 

 

なお、ジャック・ブレルの最晩年の曲のタイトルにもある「les F... "エフ"」(1977)というのは、やはりこの「従来の(古い)書き方」に倣ったもので、ちょっと「よろしくない意味」にもなりますので、あまり「大きな声」では言えませんが、「messieurs les Flamingants(ベルギー国内のオランダ系住民諸氏」に対して、「je vous emmerde」と、堂々と「宣言」している曲なのです...(実際、「放送禁止」など、かなりの「物議」を醸しました)。

 

 

(参考)ジャック・ブレル「les F... "エフ"」(1977)。

 

 

「原曲」は、「ブラジリアン・ジャズ」「ボサ・ノヴァ」の「大家」、ジョアン・ドナート(1934.8.17-2023.7.17)の曲に、カエターノ・ヴェローゾ(1942-)が詞をつけたもので、ブレルは、「フランス語詞」で「カバ―」したということですが、「当然」のことながら、その「詞の内容」には、まったく「関係」はありません。

 

 

 

*「最初期」の記事です(2016年5月23日付け)。

 

 

 

 

ブラッサンスは、歌詞中に、「かなりの頻度」で「禁断のワ―ド」が出て来ることでも「有名」で、その意味では、実に「特異な存在」とも言えるのかも知れませんが、それだけ、「市井(しせい)」に根差した、「吟遊詩人」だったということでしょう。

 

 

そのようなことを「意識」もしているのか、このような、本当に「極端」な作品もあります...。

 

 

「la ronde des jurons "言いたい放題"」(1958)。

 

 

そのタイトルの通り(「原題」は、ズバリ、「罵言のロンド」)、ちょっと「口にしてはいけない」言葉を並べた、「ものスゴイ歌」です...。

 

 

 

 

「今回の曲」に戻って...

 

 

オリヴィア・ルイス(1980-)の、何とも「キュ―ト」な「カバ―」を見つけました。

 

 

「2017年2月18日」ということで、おそらく、「没後35周年」(2016年)に関連するテレビ番組だったのでしょう。

 

 

「現代的」で、しかも「女性」が歌う...。

 

 

何とも「新鮮」に響きますね...。

 

 

 

 

さて...

 

 

せっかくですので、もう少し、「関連作品」を紹介しておくことにしましょう。

 

 

(今年は、「スケジュールの都合」により、「命日(29日)の記事」が「書けない」と思いますので...)

 

 

 

今回の「p... de toi "不貞な可愛い子猫"」が収録されているアルバムには、こちらの「名曲」も収録されています。

 

 

「chanson pour l'auvergnat "オーヴェルニュ人に捧げる歌"」。

 

1972年1月19日、テレビでも放送された、ボビノ劇場でのライヴからの映像です。

 

 

この曲の記事(「歌詞対訳」も載せています)

 

 

 

「la mauvaise herbe "雑草育ち"」。

 

「les sabots d'Helene "エレ―ㇴの木靴"」。

(「1972年の映像」と表記されています)

 

 

「une jolie fleur (dans une peau d'vache) "美しい花"」。

(「1978年の映像」と表記されています)

 

 

何と、シャルル・アズナヴール(1924-2018)によるカバ―(1976年)もありました!!

 

...また、何とも「モダン」な...。

 

 

 

それでは以下に、「p... de toi "不貞な可愛い子猫"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

 

その「情景」が、本当に、「目に見える」ような「リアルさ」ですが、「一種の笑い話」のような感じで受け取っていただけると「幸い」だと思います。

 

 

 

 

ありがとうございました。

 

 

それではまた...。

 

 

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p... de toi  不貞な可愛い子猫

 

en ce temps-la, je vivais dans la lune

les bonheurs d'ici-bas m'etaient tous defendus

je semais des violett's et chantais pour des prunes

et tendais la patte aux chats perdus...

 

その頃、僕は月の上で暮らしていた

この世の幸せはすべて禁じられていた

僕はすみれの種をまき、ただいたずらに歌っていた

そして、迷い込んだ猫に救いの手を差しのべていた

 

ah ah ah ah! putain de toi!

ah ah ah ah ah! pauvre de moi...

 

ああ、何ていまいましい君

ああ、何てかわいそうな僕

 

un soir de plui', v'la qu'on gratte a ma porte

je m'empresse d'ouvrir (sans doute un nouveau chat!)

non de Dieu! l'beau felin que l'orage m'apporte

c'etait toi, c'etait toi, c'etait toi...

 

ある雨の夜、ドアを軽くノックする音が

急いで開けに行くと、(たぶん、また別の猫だ!)

何てこった! その雷雨が僕にもたらした猫というのが

それが、君だった 君だった 君だった...

 

ah ah ah ah! putain de toi!

ah ah ah ah ah! pauvre de moi...

 

ああ、何ていまいましい君

ああ、何てかわいそうな僕

 

les yeux fendus et couleur de pistache

t'as pose sur mon coeur ta patte de velours...

fort heureus'ment pour moi, t'avais pas de moustache

et ta vertu ne pesait pas trop lourd...

 

切れ長で、ピスタチオの種のように緑がかった眼の君は

僕の胸に、ビロードのような足を置いた

実に幸いなことに、君にはひげがなかった

君の道徳心など、大したことじゃなかった

 

ah ah ah ah! putain de toi! 

ah ah ah ah ah! pauvre de moi...

 

ああ、何ていまいましい君

ああ、何てかわいそうな僕

 

aux quatre coins de ma vi' de boheme

tu as prom'ne, tu as prom'ne le feu de tes vingt ans

et pour moi, pour mes chats, pour mes fleurs, mes poemes

c'etait toi, la pluie et le beau temps...

 

僕の気ままな生活のあちこちに

君は、君は、20歳の情熱を持ち歩いた

そして僕や、僕の猫や花たち、僕の詩にとって

君は、雨だったりお天気だったりした

 

ah ah ah ah! putain de toi!

ah ah ah ah ah! pauvre de moi...

 

ああ、何ていまいましい君

ああ、何てかわいそうな僕

 

mais le temps passe et fauche a l'aveuglette

notre amour murissait a peine, que, deja

tu brulais mes chansons, crachais sur mes violettes

et faisais des miseres a mes chats...

 

でも時は過ぎ、手探りで枕探し

僕らの愛が実るや否や、もうすでに

君は僕の歌を非難し、僕のすみれを罵倒していた

そして、僕の猫たちを責め立てた

 

ah ah ah ah! putain de toi!

ah ah ah ah ah! pauvre de moi...

 

ああ、何ていまいましい君

ああ、何てかわいそうな僕

 

le comble enfin, miserable salope

comme il n'restait plus rien dans le garde-manger

t'as couru sans vergogne, et pour une escalope

te jeter dans le lit du boucher!

 

挙句の果てには、何とも情けない奴め

戸棚にもう何もないからと

肉切れ1枚のために、恥知らずにも

君は、肉屋のベッドに入り込んだのだ

 

ah ah ah ah! putain de toi!

ah ah ah ah ah! pauvre de moi...

 

ああ、何ていまいましい君

ああ、何てかわいそうな僕

 

c'etait fini, t'avais passe les bornes

et r'noncant aux amours frivoles d'ici-bas

j'suis r'monte dans la lune en emportant mes cornes

mes chansons, et mes fleurs, et mes chats...

 

もうおしまいだ いくら何でもあんまりだ

それで僕は、この世のうわついた恋などあきらめ

再び、月の上へと戻った 間抜けな僕の角と

歌と、花と、猫たちを持って

 

ah ah ah ah! putain de toi!

ah ah ah ah ah! pauvre de moi...

 

ああ、何ていまいましい君

ああ、何てかわいそうな僕...

 

(daniel-b=フランス専門)