1954年4月3日放送のテレビ番組からで、この曲の「公式映像」となっています。

 

「彼女は電話帳でも歌いこなせるだろう」と言ったのは、作家で詩人のボリス・ヴィアン(1920-59)でしたが、まさに、それだけの「魂の叫び」に「圧倒」されることでしょう...。

 

 

現在、すっかり「公式録音」として「定着」しているのは、実は、こちらの「ライヴ録音」であったりもします。

 

1955年のオランピア劇場公演からの音源で、上掲の1954年の映像とも、「歌唱スタイル」で言えば「同じ」であると言うことが出来ます。

 

 

こちらが、1940年5月27日の「オリジナル録音」となりますが、現在ではもはや、「実際に耳にすることはまれ」なのではないでしょうか...。

 

 

 

2015年、ピアフの「生誕100周年」を記念して発売された、「最新」の「2枚組ベスト」(日本盤)です。

 

各曲の「解説」、「歌詞対訳」もあります。

 

今回の曲、「l'accordeoniste "アコーディオン弾き"」は、先述のように、「オランピア1955」からの音源です。

 

 

 

もちろん「大全集」も発売されていますが、こちらは「輸入盤のみ」となります。

 

 

2007年、映画「エディット・ピアフ 愛の讃歌」(↓↓)の公開にあわせ、実際のピアフの「ステ―ジ映像集」も発売となりました。

 

 

 

こちらが、その「映画」のBlu-ray。

 

主演のマリオン・コティヤール(1975-)は、この作品で、「第33回セザール賞主演女優賞」、「第80回アカデミー賞主演女優賞」を「W受賞」しました。

 

 

 

ピアフを愛してやまない加藤登紀子さん(1943-)のこの著書は、なかなか知ることの出来ないエピソードも交えて書かれていて、それだけでも、「一読の価値」はあると思います。

 

 

 

 

これまでの記事

 

 

 

さて...

 

 

また何とも「久しぶり」となってしまって大変「恐縮」ではありますが、今回はこの、「世界的な伝説的歌手」、エディット・ピアフ(1915-63)の「名曲」を紹介してみたいと思います。

 

 

...と言うより、「10月10日」がその「命日」で(公式には、その死が「公表」された、「10月11日」とされています)、今年は何と、実に「没後60周年」ともなる「記念の年」でもあったのです!!

 

 

 

ピアフの葬儀は、「パリ中の商店が、弔意を表して休業し、喪に服した。墓地での葬儀は、40,000人以上のファンで混雑した」とのことで、シャルル・アズナヴール(1924-2018)も、「第二次世界大戦後、パリの交通が完全にストップしたのは、ピアフの葬儀の時だけだった」と話していたそうです。

 

 

その「生活ぶり」から、「カトリック教会」からは「反発」もありましたが、もうほとんど、「国葬」と言っても過言ではないくらいの状況だったようです...。

 

 

まさに「激動の時代」を、「劇的に生き抜いた」とも言える「波乱の生涯」でしたが、度重なる「事故」や、「病魔」を乗り越え、「現在」においてもまだなお、「計り知れない感動」が、その歌を聴く者たちの心をとらえ続けて離さないと言える「偉大な伝説的歌手」、エディット・ピアフ...。

 

 

今回紹介する曲は、まさに、その「代表曲」のひとつと言って良いでしょう。

 

 

 

「l'accordeoniste "アコーディオン弾き"」(1940)。

 

 

 

この曲について、少し書いてみたいと思います...。

 

 

 

この「l'accordeonist "アコーディオン弾き"」を書いたのは、ミシェル・エメ―ル(1906-84)というソングライター。

 

 

詞・曲ともに彼自身の手によりますが、彼がこの曲を持ってピアフのもとへと訪れたのは、1940年2月のことだといいます。

 

 

1939年、当時、フランス軍の「伍長」を務めていたミシェル・エメ―ルは、「虫垂炎」のために「入院」していたとのことですが、彼はピアフの「大ファン」でもあり、その療養中、「彼女のために曲を書こう」と、「決意」したそうです。

 

 

ピアフとは、放送局の廊下ですれ違った程度で、「ほとんど面識がない」ことから、「時間がない」と、いったんは「断られた」そうですが、「すぐに軍に戻らなくてはならない」と言って、「10分」だけ、時間をさいてもらったということです。

 

 

そこでエメ―ルは、自らピアノを弾きながら、この「l'accordeoniste "アコーディオン弾き"」を歌って聴かせたのですが、すっかり「魅了」されてしまったピアフは、「即座」にこの曲を歌うことを決め、「数日後」に迫っていた、「ボビノ劇場公演」(1940年2月16~22日)の曲目に加えることにしたのでした...。

 

 

結果は「大成功」で、その後発売されたレコ―ドも、一説によれば、「85万枚」とも言われるほどの、「空前の大ヒット」となりました。

 

 

それ以降、ミシェル・エメ―ルは、ピアフにとって、「大変重要な音楽パ―トナ―」のひとりともなったのです...。

 

 

 

この曲、「l'accordeoniste "アコーディオン弾き"」は、同じ1940年、ルネ・ルバ(1917-2009)も歌っています。

 

 

 

 

さて、せっかくの機会(「没後60周年」)ですから、可能な限り、エディット・ピアフのその「名曲名唱」を載せておくことにしましょう(今後、「正式な記事」として書くこともあるかと思います。なお、「すでに紹介している曲」は、「除外」しています)。

 

 

 

「les trois cloches "谷間に三つの鐘が鳴る"」(1946)。

 

1956年5月14日放送のテレビ番組からで、「オリジナル」通り、コ―ラスグル―プ「レ・コンパニオン・ド・ラ・シャンソン(シャンソンの友)」との共演。

 

「人間の一生」を歌った、とても「感動的」な作品です。

 

「padam, padam "パダム・パダム"」(1951)。

 

 

「la foule "群衆"」(1957)。

 

原曲は、「誰も私の悩みを知らない」という、「南米」の曲。

 

 

「mon manege a moi "私の回転木馬"」(1958)。

 

イヴ・モンタン(1921-91)が歌っていることでも知られています。

 

 

「c'est a Hambourg "ハンブルグにて"」(1955)。

 

こちらは、同年のオランピア劇場公演からの音源です。

 

 

「l'homme a la moto "オ―トバイの男"」(1955-56)。

 

原曲は「アメリカ」の曲で、「黒いデニムのズボン」というタイトルでも知られています。

 

1956年8月5日のテレビ番組から。

 

 

「la goualante du pauvre Jean "哀れなジャンの歌"」(1954)。

 

「人生の教訓」が、楽しく歌われる曲です。

 

1954年4月3日のテレビ番組から。

 

 

「le chevalier de Paris "パリの騎士"」(1950)。

 

「難解な詞」で知られている曲ですが、その後、「英語詞」も付けられ、何と180人ものア―ティストによって採り上げられたという、むしろ、「アメリカ」でよく知られている曲のひとつです。

 

 

「la vie en rose "バラ色の人生"」(1946)。

 

こちらは、「公式のライヴ映像」で、1954年3月4日のものです。

 

この曲もまた、イヴ・モンタンのレパートリーとして「有名」ですが、モンタンは、「男性側から見た場合」の歌詞で歌っているので、その点に、一部「違い」が見られます。

 

 

「l'hymne a l'amour "愛の讃歌"」(1949-50)。

 

こちらは、1952年の映画、「Paris chante toujours "パリはいつも歌っている"」(ピエール・モンタゼル監督)からの一場面です。

 

 

「a quoi ca sert l'amour "恋は何のために?"」(1962)。

 

「最後の恋人」で、「夫」となった、テオ・サラポ(1936-70)とのデュエット曲。

 

「デュエット・バ―ジョン」を録音する前の、1962年7月27日の映像とのことで、ピアフがひとりで歌ったバ―ジョンも、同年5月4日に録音されています。

 

この曲もやはり、ミシェル・エメ―ルの「詞・曲」による作品です。

 

 

 

それでは以下に、「今回の曲」である「l'accordeoniste "アコーディオン弾き"」の詞を載せておくことにいたしましょう。

 

 

この「l'accordeoniste "アコーディオン弾き"」は、当初は、詞の一節にも出て来る、「la fille de joie est triste (あの娼婦は悲しい)」がその「タイトル」でしたが、実際に歌うことが決まってすぐ、「改題」されたようです。

 

 

また、歌詞中の「au coin de la rue la-bas (そこの街角)」も、「au coin de la rue Labat (ラバ通りの街角)」だとする説があって、「論争のもと」にもなっているようです...。

 

 

 

 

ありがとうございました。

 

 

それではまた...。

 

 

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l'accordeoniste  アコーディオン弾き

 

la fille de joie est belle

au coin de la rue la-bas

elle a un' clientele

qui lui remplit son bas

quand son boulot s'acheve

elle s'en va a son tour

chercher un peu de reve

dans un bal du faubourg

son homme est un artiste

c'est un drole de p'tit gars

un accordeoniste

qui sait jouer la java

 

そこの街角にいる

あの娼婦は美しい

彼女には

貢いでくれる上客がいて

仕事が終わると

今度は、彼女が楽しむ番だ

場末のダンスホ—ルへ

ちょっとした夢を求めに行く

彼氏はア―ティストで

小柄な面白い男

アコーディオン弾きで

ジャヴァを弾かせたら、それは大したものだ

 

elle ecoute la java

mais elle ne la dans' pas

elle ne regarde meme pas la piste

et ses yeux amoureux

suivent le jeu nerveux

et les doigts secs et longs de l'artiste

ca lui rentre dans la peau

par le bas, par le haut

elle a envie d'chanter

c'est physique

tout son etre est tendu

son souffle est suspendu

c'est une vrai' tordue d'la musique

 

彼女はジャヴァに聴き入る

でも、彼女は踊らない

ダンスホ—ルには目もくれず

恋するその瞳は

生き生きとしたその演奏を追う

ア―ティストの、荒々しく長い指を追う

その音楽は、彼女の中に入り込む

つま先から頭のてっぺんまで

彼女は歌いたくなってしまう

どうしようもないくらいに

全身がピンとこわばり

息を飲んでしまう

本当に、この音楽と来たら!

 

la fille de joie est triste

au coin d'la rue, la-bas

son accordeoniste

il est parti soldat

quand il reviendra d'la guerre

ils prendront un' maison

elle sera la caissiere

et lui sera l'patron

que la vie sera belle

ils seront de vrais pachas

et tous les soirs, pour elle

il jouera la java

 

そこの街角にいる

あの娼婦は悲しい

アコーディオン弾きの彼氏が

兵隊に行ってしまったから

戦争から戻って来たら

ふたりで店を持とうと

彼女がレジ係で

彼が店主

人生とは、何て素晴らしいことだろう

彼らは豪勢に暮らし

そして毎晩、彼女のために

彼は、ジャヴァを弾くことだろう

 

elle ecoute la java

qu'elle fredonne tout bas

elle revoit son accordeoniste

et ses yeux amoureux

suivent le jeu nerveux

et les doigts secs et longs de l'artiste

ca lui rentre dans la peau

par le bas, par le haut

elle a envie d'pleurer

c'est physique

tout son etre est tendu

son souffle est suspendu

c'est une vrai' tordue d'la musique

 

彼女はジャヴァに聴き入る

小声で口ずさんでみる

すると、愛しいアコーディオン弾きの姿が目に浮かんで来る

恋するその瞳は

生き生きとしたその演奏を追う

ア―ティストの、荒々しく長い指を追う

その音楽は、彼女の中に入り込む

つま先から頭のてっぺんまで

彼女は泣きたくなってしまう

どうしようもないくらいに

全身がピンとこわばり

息を飲んでしまう

本当に、この音楽と来たら!

 

la fille de joie est seule

au coin d'la rue la-bas

les filles qui font la gueule

les hommes n'en veulent pas

et tant pis si elle creve

son homme ne reviendra plus

adieu, tous les beaux reves

sa vie, elle est foutue

pourtant, ses jambes tristes

l'emmenent au bouis-bouis

ou y'a un autre artiste

qui joue toute la nuit

 

そこの街角にいる

あの娼婦はひとりぼっち

女たちは嫌な顔をし

男たちも声をかけてくれない

彼女がどうなろうと、仕方のないこと

彼氏はもう、戻っては来ないだろう

さよなら、美しかった夢のすべて

彼女の人生はもうおしまいだ

それでも、哀れなその足は

安酒場へと向かう

そこでは別のア―ティストが

夜通し演奏しているのだ

 

elle ecoute la java...

...elle entend la java

...elle a ferme les yeux

...les doigts secs et nerveux...

ca lui rentre dans la peau

par le bas, par le haut

elle a envie d'gueuler

c'est physique

alors, pour oublier

elle s'est mise a danser a tourner

au son de la musique....

 

彼女はジャヴァに聴き入る...

...ジャヴァをつい聴いてしまう

...彼女は目を閉じる

...荒々しく、生き生きとした指の動き...

その音楽は、彼女の中に入り込む

つま先から頭のてっぺんまで

彼女は大声で叫びたくなってしまう

どうしようもないくらいに

それで彼女は、忘れるために

踊り始める、回り始める

その音楽に合わせて...

 

...

arretez!

arretez la musique...

 

...

やめて!!

その音楽をやめて...

 

(daniel-b=フランス専門)