こちらは、当時作られたMVでは「完全版」に当たるものです。
こちらは、ベルギーのテレビに出演した映像だということです(1982年)。
こちらは、スイスのテレビの公式アーカイブより。
ただ、「日時」まではやはり「不明」で、「1982年」とまでしか分かりません...。
こちらは、1990年代に入ってからの映像のようです。
アナログ時代のジャケット(オリジナル)は「これ」でした...(ちょっと買うのに「勇気」がいる...)。
さて、「夏のシャンソン/フレンチポップス特集」の「第4弾」、今回は...
当時、いわゆる「フレンチ・ニューウェイヴ」と呼ばれ、日本でも紹介され、レコードも発売されたこの「大ヒット曲」...
シャグラン・ダムール(愛の悲しみ)というデュオによる、「chacun fait( c'qui lui plait) "フレンチ・ナイト"」(1981)。
この曲について書いてみたいと思います。
私は当時、レコードを手に入れることは結局出来なかったのですが(後に「CD」は手に入れることが出来ました)、1983年8月のNHKテレビ「フランス語講座」、「夏のシャンソン特集」にて採り上げられてもいましたので、「音源」も含めて、その時に知ることが出来ました。
この曲の詞は、ほとんどが、1970年代半ばに、フィリップ・ブルゴワンによって書かれたものですが、(自ら歌うつもりだった)ジェラール・プレギュルヴィック(1953-)の曲・編曲(1977年)は「イマイチ」だったそうです。そして、その3年後に、あらためて編曲がなされましたが、これも、フィリップ・ブルゴワンの意に沿うものではありませんでした。
その直後、イギリスのパンクバンド、ザ・クラッシュの曲、「Magnificent Seven "7人の偉人"」(1981)の歌い出し、「Ring! Ring! It's 7:00 AM!」に影響を受け、「cinq heur's du mat', j'ai des frissons」という歌い出しになったということです。
こちらが、ザ・クラッシュの曲、「Magnificent Seven "7人の偉人"」です。
フィリップ・ブルゴワンは、自分で歌うことも考え、当時「流行」し始めていた「ラップ」を取り込もうと試みました。
しかし結局、2年前のロックオペラ、「スターマニア」(1979年初演)にて、ジギィ役を務めた、グレゴリー・ケン(1947-96)が呼ばれることになり、あわせて、ブルゴワンの仲間でもあった、アメリカ出身の女性歌手、ヴァリ(1958-)にも意見を求めることになったということです。
ヴァリは、フランス語が「苦手」だったにもかかわらず、録音に「挑戦」しました。
こうして、男女二人組のユニット、「シャグラン・ダムール」が「誕生」したのです。
この曲は、1981年8月に録音され、秋には「リリース」となったそうですが、「レコード会社」、「大手放送局」の、「絶対にヒットしないだろう」との「予想」を見事に覆し、半年も経たないうちに、「200万枚以上」という「スーパーヒット」にしてしまいました。
1日のうちに、「9回」も流したラジオ局もあったということで、「ピーク時」である、「1982年2月から4月」の間には、連日、「35000枚」のシングルが「出荷」されたということです。
この曲は、「フランス語による最初のラップ曲」と言われていますが、当然、その「勢い」は、フランス国内にとどまらず、周辺各国でも「大ヒット」し、各国語による「カバー」も多く出現しました。
「日本語」によるカバーもあります。
パリで活躍しているTomuyaさんのバージョンをどうぞ。
さて、先述のように、「グレゴリー・ケン」と聞くと、私は、どうしても、「スターマニア」初演版(1979)のジギィを思い出してしまうのですが、「この頃」はちょっと「イマイチ」...かな...(「ルックス」で選ばれたんでしょうけれども、「声」は、前年のスタジオ盤の、エリック・エステーヴの方が「好き」だった...)。
「la chanson de Ziggy "ジギィの歌"」。
こちらは、エリック・エステーヴ(1951-)による「la chanson de Ziggy "ジギィの歌"」(1978)。
「Disc-Jockey's song "ディスク・ジョッキーの歌"」。
「スターマニア」がテーマの記事一覧は「こちら」です。
「シャグラン・ダムール」としての曲をもう1曲どうぞ。
「fais le waou waou "ワウ・ワウ・ミャウ・ミャウ"」。
グレゴリー・ケンは、1960年代には、やはり、「ye-ye(イエ・イエ)」の歌手の1人でした。
「les moutons "羊たち"」(1967)。
ジャック・ブレル(1929-78)にも、同年、「同タイトル」の曲が存在しますが、当然ながら、まったく「別の曲」です。
こちらは、1989年の「prete moi ton amour "君の愛を僕に"」ですが、アーロン・ネヴィル(1941-)の大ヒット曲、「Tell It Like It Is」(1966)のカバーとなります。
こちらが「原曲」。
1988年のテレビ出演の映像だということです。
...ところで、グレゴリー・ケンの映像を見ていて思ったのですが、彼は何となく、「France 2」のアナウンサー、ローラン・ドゥラウッス(1969-)に「似ている」っぽい(?)
それとも、マイケル・J・フォックス(1961-)かな...?
こちらは、ローランが、ミレーヌ・ファルメールにインタビューしている、「2009年」の映像です。
そんな「グレゴリー・ケン」ですけれども、彼もやはり「がん」により、1996年4月26日、わずか「49歳」にて、その生涯を終えてしまったそうです。
「スターマニア」の「20周年」(1998-99)に、わずかに届かずに...。
何とも「残念」ですね...。
というわけで、今回は、「フランスのラップ第1号」ともなった、「記念」すべき作品、シャグラン・ダムールの、「chacun fait c'qui lui plait "フレンチ・ナイト"」について書いてみました。
以下に、歌詞を載せておくことにいたしましょう。
それではまた...。
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chacun fait c'qui lui plait フレンチ・ナイト(誰もがやっている 自分を喜ばすことを)
cinq heures du mat' j'ai des frissons
je claque des dents et je monte le son
seul sur le lit
dans mes draps bleus froisses
c'est l'insomnie
sommeil casse
je perds la tete
et mes cigarettes sont toutes fumees
dans le cendrier
c'est plein d'Kleenex et d'bouteilles vides
j'suis tout seul, tout seul, tout seul
pendant qu'Boulogne se desespere(*1)
j'ai d'quoi m'remplir un dernier verre
clac fait le verre en tombant sur le lino
j'm'coupe la main en ramassant les morceaux
je sterilise, les murs qui dansent
l'alcool ca grise et ca commence...
"Yeah, Yeah, Yeah, Yeah"
...font les moutons, sur les paquets
朝の5時に寒さで震えて
歯をガチガチ鳴らしながら、ボリューム(テンション)上げる
ひとり、ベッドの上で
しわくちゃな、青いシーツの中
不眠症
壊れた眠り
正気を失い
俺のタバコはすべて
灰皿の中
たくさんのティッシュと空き瓶と
俺はたったひとり、たったひとり、たったひとり
ブーローニュが絶望しているうちに(*1)
俺は最後のグラスを満たす何かを持っている
ガチャンと、音を立てて床に落ちるグラス
そのカケラを拾いながら俺は手を切ってしまう
俺は消毒をし、壁は踊っている
アルコールは、酔わせるうえにこれを始める
(Yeah, Yeah, Yeah, Yeah)
荷物の上の、羊の群れ...
et a c'moments-la, qu'est-ce que vous avez fait?
(刑事)で、その時、あなたは何をしたのですか?
j'crois qu'j'ai r'mis la radio
ラジオを、またつけたんだと思う
chacun fait, fait, fait
c'qui lui plait, plait, plait!
誰もがやってる、やってる、やってる
自分が喜ぶことを!
l'precipice est au bout
深い谷間はその果てにある
l'precipice on s'en fout!
chacun fait, fait, fait
c'qui lui plait, plait, plait
toutes les etoiles qui brillent
「谷間」なんてどうでもいい!
誰もがやってる、やってる、やってる
自分が喜ぶことを!
すべての星が輝いている
qu'est-ce qu'elles ont a m'dire, les etoiles?
彼女たちは、なんだって「星」なんて言ってるんだ?
six heures du mat'
faut qu'je trouve a boire
liqueur forte ou cafe noir
j'brule un feu rouge
police patrouille
je serre les fesses
y a rien qui presse
"quatre, cinq francs ma rose!"
crie le p'tit chose
dans le matin rose
j'gare mon ondine
sous ses comptines
朝6時
飲むものを見つけなくては
強い酒か、ブラックコーヒー
「赤信号無視」
パトロール中の警察に
俺は恐くなって
何も急かされているわけでもないけれど
「4フラン、5フラン、私のバラ!」
なんてことを大声で叫ぶ
バラ色の朝に
そんな声の中
俺は車を停めて...
ah qu'est-ce t'as la? qu'est-ce t'as ta?
ねえ、どう?
tout pres d'une poste
y a un p'tit bar
je pousse la porte
et je viens m'asseoir
trois, quatre, patibulaires
tapent le carton dans les waters
toute seule au bar
dans un coin noir
une blonde platine(*2)
sirotte sa fine
elle m'dit: "Champagne?"
je l'accompagne
elle m'dit: "cinquante?"
j'lui dis; "ca m'tente"
郵便局のすぐそばの
小さなバーへ
俺はドアを押して入り
そして座った
3、4人の悪人ヅラが
トイレでトランプをしている
暗いバーの片隅で
たったひとりで
プラチナ・ブロンドの女が(*2)
コニャックをちびちびと
「シャンパン?」と彼女は言い
俺は彼女と同席した
「50ではどう?」と彼女は言い
「いいね」と俺は答えた
et vous etes rentre comment?
(刑事)で、あなたは、どうやって家へ帰ったのですか?
dans ma voiture
ah! et y avait toujours l'meme air a la radio
車の中で...
ああ、ラジオは、いつもと同じ局だった
chacun fait, fait, fait
c'qui lui plait, plait, plait!
誰もがやってる、やってる、やってる
自分が喜ぶことを!
que d'pression dans les bars!
バーの中じゃ、すごいプレッシャーだからな!
personne te pousse a boire!
chacun fait, fait, fait
c'qui lui plait, plait, plait!
誰も飲むことを強制してはいない
誰もがやってる、やってる、やってる
自分が喜ぶことを!
les gens ont d'ces manies!
こんなこと、誰でもやってるだろ!
les decalcomanies
まるで「コピー」したかのようにね...
sept heures du mat', hum
l'hotel
je paie
j'abrege
je fouille mes poches
je sais c'est moche
son sourire rouge
son corps qui bouge
elle fait glisser son Coeur-croise
sur sa peau bronzee
t'as les bas nylon
qui filent sur l'edredon
ses ongles m'accrochent
"tu viens, cheri?"
le lit qui claque
et les volets claquent
seuls dans le lit
dans ses draps bleus froisses
sur sa peau glisse mes doigts glaces
elle prend la pose
j'pense a aut'chose,
ses yeux miroirs
renvoient mon r'gard
les anges presses
dans ce bleu glace
me disent: "c'est l'heure!"
j'leur dis: "quelle heure?"
朝の7時
ホテルで
俺は金を払い
でも短く
俺はポケットを調べた
分かってる こいつはひどい
彼女の赤い微笑み
うごめくその身体
彼女はその「クール=クロワゼ」(「ブラジャー」のブランド名)を
焼けた素肌の上にずらしていく
足かけ布団の上に延びる
彼女のナイロン・ストッキング
その爪が俺を誘惑する
「来て...」
ベッドがきしみ
シャッターも音を立てる
しわくちゃな、青いシーツの中
彼女の滑らかな肌の上に俺の凍りついたような指
彼女はポーズをとり
俺は他のことを考える
鏡のような彼女の眼が
俺の視線を送り返す
急かされた天使たちが
凍った空で俺に言う
「時間よ!」
俺はきく 「何時だ?」
et vous vous souvenez vraiment pas de c'qui s'est passe?
(刑事)それであなたは、何があったのか、まるで憶えていないということですか?
non, vraiment pas
そう、まったく...
chacun fait, fait, fait
c'qui lui plait, plait, plait!
誰もがやってる、やってる、やってる
自分が喜ぶことを!
sous mes pieds, y a la terre!
足の下には、「大地」がある!(俺は生きている!)
sous tes pieds, y'a l'enfer!
chacun fait, fait, fait
c'qui lui plait, plait, plait!
君の足の下は「地獄」さ!
誰もがやってる、やってる、やってる
自分が喜ぶことを!
mon Dieu, j'peux meme pas jouir!
tant pis pour toi, il faut dormir!
ああ、俺は、楽しむことも出来ないのか!
お気の毒さま、眠ったら!
alors j'me sauve dans le matin gris
c'est plein d'cageots et pas d'taxi
les chats qui s'tapent leurs p'tits ronrons
les Eminences, les P'tits Bateaux
porte d'la Chapelle
je m'sens pas belle
mes bigoudis
sont plus en plis
dans mon studio, j'aspirateur
la video m'fait un peu peur
それで私は、灰色の朝に逃げ出して
いっぱいの荷物、でもタクシーもない
猫は喉を鳴らすこともせず
枢機卿たちや、小舟
ポルト・ド・ラ・シャペル(パリの「北の玄関口」)
私は美しいとは思わない
私のカーラーも
もううまく巻くことが出来ない
アパートで掃除機をかけ
ちょっと怖いビデオを見るだけ
Madame pipi
a des ennuis
Monsieur papa
s'fait du tracas
dans les logis
des mals lotis
bebe vomit sa bouillie
マダム・ピピは
悩みのタネを抱えている
ムッシュ・パパは
心労を作り出す
運悪く
その家で
赤ん坊は離乳食を吐き出してしまう
huit heures du mat', j'ai des frissons
je claque des dents, et je monte le son
seule sur le lit
dans mes draps bleus froisses
c'est l'insomnie
sommeil casse
je perds la tete
mes cigarettes sont toutes fumees
dans le cendrier
c'est plein d'Kleenex et d'bouteilles vides
j'suis toute seule, toute seule, toute seule
pendant qu'Boulogne se desespere
j'ai d'quoi m'remplir un dernier verre
clac fait le verre en tombant sur le lino
j'm'coupe la main en ramassant les morceaux...
朝の8時に寒さで震えて
歯をガチガチ鳴らしながら、ボリューム(テンション)上げる
ひとり、ベッドの上で
しわくちゃな、青いシーツの中
不眠症
壊れた眠り
正気を失い
私のタバコはすべて
灰皿の中
たくさんのティッシュと空き瓶と
私はたったひとり、たったひとり、たったひとり
ブーローニュが絶望しているうちに
私は最後のグラスを満たす何かを持っている
ガチャンと、音を立てて床に落ちるグラス
そのカケラを拾いながら私は手を切ってしまう...
(訳注)
1.pendant qu'Boulogne se desespere
ブーローニュが絶望しているうちに
サルトル(1905-80)が、ブーローニュ=ビヤンクールのルノー工場を訪れた時のことについて書かれたものだと言われています。
2.une blonde platine
プラチナ・ブロンドの女が
マリリン・モンロー(1926-62)を「暗示」していると言われています。
(daniel-b=フランス専門)