こちらが「公式のMV」(1991)となります。

 

「フルカラー」のMVなので、「最近」とも思ってしまいがちですが、すでに「30年近く前(!)」の映像です。

 

この曲、「un homme heureux "幸せな男"」は、元々が「スタジオライヴ」で発表された作品であり、そのため、純然たる「スタジオ録音」というものは存在しません(このMVも、「発表後」制作されたものと思われます)。

 

それにもかかわらず、この曲はたちまち「大評判」となり、翌年の「ヴィクトワール・ド・ラ・ミュージック」において、「曲」、「アルバム」ともに、「最優秀賞」に輝きました。

 

こちらは、その「授賞式」の模様です。

 

2016年の「ヴィクトワール・ド・ラ・ミュージック」では、その「長年のキャリア」、「音楽界への貢献」を讃えて、「名誉賞」が贈られました。

 

「三世代(「孫」、「娘」、「妻」の世代)」の女性アーティスト、ルアンヌ(1996-)、ジャンヌ・シェラル(1978-)、ヴェロニク・サンソン(1949-)が見守るなか、「弾き語り」でこの曲を披露しました。

 

こちらは、同じ映像の「ロングバージョン」です。

ルアンヌ、ジャンヌ、ヴェロニクが、シェラーに「敬意」を表して、彼の「代表曲」を披露しています。

 

3人の女性歌手が歌った曲は次の通りです。

 

1.ルアンヌ  「dans un vieux rock'n'roll "昔のロックンロールのように"」(1976)

2.ジャンヌ・シェラル  「fier et fou de vous "あなたが自慢 あなたに夢中"」(1978)

3.ヴェロニク・サンソン  「oh! j'cours tout seul "ああ、僕はひとりで走っている"」(1979)

 

 

前回のバルバラ(1930-97)に引き続き、「冬が似合う名曲」として、今回は、「しっとり」としたこの曲をお届けしたいと思います...。

 

 

今回紹介する作品は、「ピアニスト」としても知られているアーティスト、ウィリアム・シェラー(1946-)を代表する名作で、彼の「代名詞」とまで言われている曲、「un homme heureux "幸せな男"」(1991)です。

 

ウィリアム・シェラーは、前回の記事にも書いている通り、バルバラのアルバム「la louve "雌狼"」(1973)にて、「編曲・指揮」を担当しました。

 

このアルバムでは、「詞」を、やはり「新世代」であるフランソワ・ヴェルテメール(1947-)が書いており、これまでにない、「ロック色の強い」作品となったことは、すでにお話しした通りです。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12574609843.html(前回の記事:バルバラ「雌狼」)

 

 

1946年7月9日、パリに生まれたウィリアム・シェラーは、「クラシック音楽」の素養に裏打ちされた、「類いまれな」アーティストであると言うことが出来ます。

 

彼の作曲の「ジャンル」だけ見ても、「ミサ曲」、「交響曲」から「弦楽四重奏曲」、「協奏曲」など幅広く、その上で、「ミュージカル」、そして自身が歌う楽曲、「映画音楽」など、「ポピュラー」のジャンルにおいても数多くの作品を書いている、まさに「巨人」です。

 

 

父親が「アメリカ軍兵士」だったこともあり、シェラーは、「3歳」の時にアメリカに渡っていますが、そこで、「両親の友人」でもあった、ジャズ・ミュージシャンたちの音楽を、「しっかり」と聴いて育ったのだと言います。

 

「7歳」の時、パリに戻ることになりましたが、母方の祖父母が働いていたこともあって、「劇場」への出入りを許されたようです。

 

「10歳」になった時の「将来の夢」は、「ベートーヴェンみたいになる」とのことでした...。

 

そこで、「クラシック音楽」の先生について、本格的に「作曲」を学ぶことになりましたが、一方ではやはり、「ビートルズ」の影響も受けることになり、ついには、「ロック」の道へ「方向転換」することになったようです。

 

これを嘆いた先生は、

 

「あなたの持っているその荷物(知識/能力)で、"道化"になるのだけはおよしなさい」

 

と諭したそうです...。

 

 

1960年代の終わり頃には、「ポピュラー界」において、「作・編曲家」としての活動を始めました。

 

パリ在住のアメリカ人学生らによって結成されたグループ、「les irresistibles(the irresistibles)」(「抗しがたい魅力を持つ者たち」という意味)の「my years is a day」(1968)の「作曲」を担当しましたが、これが、シェラーにとっても、グループにとっても、「最初の大ヒット」となりました。

 

またこの曲は、ダリダ(1933-87)によって、「フランス語」、「イタリア語」両方で「カバー」されました。

 

こちらは、「フランス語版」で、「dans la ville endormie "眠っている街で"」というタイトルです。

 

 

1969年には、前回記事のフランソワ・ヴェルテメール(1947-)らとともに、ミュージカル「poperacosmic "ポペラコスミック"」(1966)の「レコード化」に取り組み、その「編曲」を担当しました。

 

その後、シェラーは、自分でも「歌ってみる」ことにしましたが、これらは「成功」とならず、再び、「作・編曲」に専念することになりました。

 

 

そんな中、1972年に発売したものの、たった「2000枚」のセールスに終わった作品、「Lux Aeterna "永遠の光もて"」(友人の結婚式のために作曲された「ミサ曲」)が、バルバラ(1930-97)の耳に留まることになり、そのことから、1973年のアルバム、「la louve "雌狼"」の「編曲」を「依頼」されたということです(前回記事参照)。

 

こちらがその「Lux Aeterna "永遠の光もて"」(1972)の冒頭部分です。「参考」までにどうぞ。

(フランス語版「ウィキペディア」によると、この作品は、現在では、なぜか「「日本」で、「カルト的作品」として崇められているそうです...)

 

Lux Aeterna Lux Aeterna
 
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バルバラはシェラーを高く評価し、再び「歌う」ようにも勧め、レコード会社を見つけることにも「協力」したということです。

 

その後は、「作・編曲家」としての活動と並行して、「自作」を歌う歌手としての活動も「再開」し、やがて、「フランスを代表するアーティスト」の一人にまでなりました。

 

 

上掲の動画で、ルアンヌ(1996-)も歌っている、「dans un vieux rock'n'roll "昔のロックンロールのように"」(1976)をどうぞ。

 

1976年9月22日放送の「テレビ番組」からの映像です。

 

 

1991年3月19日、「200人」の観客を集めて、旧フィリップス社の代表的な録音スタジオである、「ダヴー・スタジオ」にて、「ピアノの弾き語り」によるライヴ、「Sheller en solitaire "孤独なシェラー"」が開催されました。

 

今回紹介している曲、「un homme heureux "幸せな男"」は、この時発表された「新曲」で、プログラムの「最後」に歌われたものです。

 

ちなみに、こちらは、「最初」に歌われた曲、「Symphoman "シンフォマン"」(1977)。

「クラシックの名曲」を思わせる「壮大」な楽曲です。

 

新曲「un homme heureux "幸せな男"」は、瞬く間に「大評判」となり、このライヴの模様を収めたレコードは、「80万枚」のセールスを記録、そのうち「20万枚」は、「発売後1ヶ月」で達成したということです。

 

このことから、この曲、アルバムともに、翌年の「ヴィクトワール・ド・ラ・ミュージック」において、「最優秀賞」に輝き、以降、「un homme heureux "幸せな男"」は、シェラーの「代名詞」とまで言われるようになったのです。

 

そんなシェラーも、2014年、「過労」から「不整脈」を起こし、「肺水腫」にまで至ったことから、「入院生活」を余儀なくされましたが、「その間」にも、作曲された作品は「あった」ということです(スゴイ!!)。

 

 

2016年2月の「ヴィクトワール・ド・ラ・ミュージック」では、その「長年のキャリア」、「音楽界への貢献」を讃えて、「名誉賞」が贈られることになりました。

 

 

このイベントの模様は、動画を上に挙げていますので、ぜひご覧ください!!

 

 

(追記:その後、2021年3月、「自伝」の出版を機に、「健康上の理由」から、正式に「引退」を表明されました)

 

 

それでは以下に、シェラーの「代名詞」、「un homme heureux "幸せな男"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

「恋愛感情」に対する「疑問」を投げかけるこの曲。

 

「しっとり」と、そして「切々」と歌われるこの曲は、まさに「最高傑作」と言って良い作品だと思います。

 

雰囲気が、ちょっと「小田和正さん(1947-)」にも似ている?

 

それではまた...。

 

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un homme heureux  幸せな男

 

pourquoi les gens qui s'aiment

sont-ils toujours un peu les memes

ils ont quand ils s'en viennent

le meme regard d'un seul desir pour deux

ce sont des gens heureux

 

どうして愛し合う者たちは

いつも似たような感じになってしまうのだろう

彼らがやって来るときには

二人とも同じ眼差し、ただひとつの望みを持っている

それは、「幸せな人々」ということだ

 

pourquoi les gens qui s'aiment

sont-ils toujours un peu les memes

quand ils ont leurs problemes

ben y'a rien a dire

y'a rien a faire pour eux

ce sont des gens qui s'aiment

 

どうして愛し合う者たちは

いつも似たような感じになってしまうのだろう

彼らが問題を抱えているとき

何も言えることはなく

彼らのために何かが出来るわけでもない

それは、「愛し合っている者たち」だということだから

 

et moi j'te connais a peine

mais ce s'rait une veine

qu'on s'en aille un peu comme eux

on pourrait se faire sans qu'ca gene

de la place pour deux

mais si ca n'vaut pas la peine

que j'y revienne

il faut me l'dire au fond des yeux

quel que soit le temps que ca prenne

quel que soit l'enjeu

je veux etre un homme heureux

 

そして僕は、君のことをあまりよくは知らない

でも、それは幸運と言うべきだろう

彼らのように僕たちもちょっとやってみよう

そこでは、誰の邪魔も入ることはないだろう

僕たち二人のための場所

しかし、僕が

そこにわざわざ戻る価値がないのだとしたら

瞳の奥でそれを僕に言うべきだろう

どんなに時間がかかろうと

賭けたものがどうであろうと

僕は幸せな男になりたい

 

pourquoi les gens qui s'aiment

sont-ils toujours un peu rebelles

ils ont un monde a eux

que rien n'oblige a ressembler a ceux

qu'on nous donne en modele

 

どうして愛し合う者たちは

いつもちょっと反抗的になってしまうのだろう

彼らは彼らの世界を持っている

それらに似せる必要なんてまったくない

彼らが与えてくれるのはいわゆる「モデル(手本)」なんだ

 

pourquoi les gens qui s'aiment

sont-ils toujours un peu cruels

quand ils vous parlent d'eux

y'a quelque chose qui vous eloigne un peu

ce sont des choses humaines

 

どうして愛し合う者たちは

いつもちょっとつれない態度なのだろう

あなた方に彼ら自身のことを話すとき

あなた方を少し遠ざけてしまう何かがある

でもそれは、「人間的なこと」ゆえのものだと思う

 

et moi j'te connais a peine

mais ce s'rait une veine

qu'on s'en aille un peu comme eux

on pourrait se faire sans que ca gene

de la place pour deux

mais si ca n'vaut pas la peine

que j'y revienne

il faut me l'dire au fond des yeux

quel que soit le temps qu'ca prenne

quel que soit l'enjeu

je veux etre un homme heureux

je veux etre un homme heureux

je veux etre un homme heureux...

 

そして僕は、君のことをあまりよくは知らない

でも、それは幸運と言うべきだろう

彼らのように僕たちもちょっとやってみよう

そこでは、誰の邪魔も入ることはないだろう

僕たち二人のための場所

しかし、僕が

そこにわざわざ戻る価値がないのだとしたら

瞳の奥でそれを僕に言うべきだろう

どんなに時間がかかろうと

賭けたものがどうであろうと

僕は幸せな男になりたい

僕は幸せな男になりたい

僕は幸せな男になりたい...

 

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私が最も早くに聴いていたのは、こちらの「オランピア1994」の音源からです(このディスクそのものではありませんが...)。これを「きっかけ」に、上掲の「Sheller en solitaire "孤独なシェラー"」(1991)のライヴ・アルバムに進みました。

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(daniel-b=フランス専門)