「N響」の「桂冠名誉指揮者」でもある「マエストロ」、ヴォルフガング・サヴァリッシュ(1923-2013)。1999年5月14日、「横浜みなとみらいホール」にて、当時「音楽監督」を務めていた、「フィラデルフィア管弦楽団」を率いての「名演奏」です。

こちらは、「歴史的名演奏」と言っても良いでしょう。「ハンガリー出身」で、主に「アメリカ」で活躍したマエストロ、ジョージ(ゲオルク)・セル(1897-1970)が、「手兵」のクリーヴランド管弦楽団を指揮した、1959年の録音です。

こちらは、「譜面付き」でどうぞ(演奏者不詳)。

さて、いよいよ「2018年」も「暮れ」の時期となりました。

今年も、この時期に「ピッタリ」の曲をお届けします。

 

今回の曲は、当然知っている方も多い「有名曲」だとは思いますが、昨年末は、ベートーヴェン(1770-1827)の「第9交響曲」(1822-24)、および、このドヴォルザーク(1841-1904)の「チェロ協奏曲」(1894-95)を採り上げていることから、「その流れ」で、この年末は、この曲で行ってみたいと思います。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12339572552.html?frm=theme(ベートーヴェン「第9」の記事)

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12336303904.html?frm=theme(ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」の記事)

 

後期ロマン派、「国民楽派」の作曲家である、アントニーン・ドヴォルザークは、1892年から95年にかけての、いわゆる「アメリカ時代」に書かれた名曲によってよく知られています。この曲、「交響曲第9番 ホ短調 op.95 "新世界より"」(1893)や、「弦楽四重奏曲第12番 へ長調 op.96 "アメリカ"」(1893)、そして、昨年採り上げた「チェロ協奏曲 ロ短調 op.104」(1894-95)は、「特に有名」な作品です。

 

1891年春、「ニューヨーク・ナショナル音楽院」の創立者で、理事長であったジャネット・サーバー女史より、その「院長職」への就任依頼が届き、ドヴォルザークは、迷った末に、この依頼を引き受けることにしました。これが、「アメリカ時代」の始まりです。

 

音楽では「新興国」だったアメリカでしたが、さらなる「音楽家育成」のために招へいされたドヴォルザークは、1892年10月から、さっそく、講義を始めることになりました。

 

その3ヶ月後に着手した、「交響曲第9番 ホ短調 op.95 "新世界より"」は、5月24日に完成しました。ドヴォルザークは、「私は、アメリカの先住民たちの音楽を主題に使ったのではなく、その"精神"をもって書こうとしたのです」という旨の話を、友人への手紙に書いています。

アメリカの黒人の音楽が、故郷「ボヘミア」の音楽に似ていることに刺激を受け、「新世界」アメリカより、故郷へ向けて作られた作品だと言われています。

 

その「直後」に、「異例のスピード」で書き上げられたのが、「弦楽四重奏曲第12番 へ長調 op.96 "アメリカ"」であり、「チェロ協奏曲 ロ短調 op.104」は、アメリカを離れる直前に書き上げられた、いわば、「アメリカ時代の総決算」とも言える作品なのです。

 

こちらが、「弦楽四重奏曲第12番 へ長調 op.96 "アメリカ"」(1893)です。

「チェロ協奏曲 ロ短調 op.104」(1894-95)は、ピエール・フルニエ(1906-86)と、ジョージ(ゲオルク)・セル指揮ベルリン・フィルの録音(1962)を「再掲」しておきます。両巨匠による「名演中の名演」です(昨年の記事においての、エマヌエル・フォイアマンの名演がすべて消えてしまっているのは、誠に「残念」です。現在のところ、「当該録音」の「代替」は見つかりません...)。

 

では、「新世界交響曲」に戻ることにしましょう。

 

「自分が、もしアメリカを訪ねなかったとしたら、こうした作品は書けなかっただろう」と、ドヴォルザークは語っていました。それだけ、アメリカでの「新しい生活」や、「環境」に、「深い感銘」を受けたということですが、先述のように、「アメリカの先住民の音楽」を「主題」に使ったというのは「ナンセンスな話だ」と一蹴しています。

 

しかしながら、ドヴォルザークは、故郷「ボヘミア」の民謡との「近似性」を見出していたであろうことは疑いがなく、だからこそ、「その"精神"をもって書こうとした」と表現していたのです。ですから、この作品は、紛れもなく、彼の故郷「ボヘミア」の音楽であり、「新世界(アメリカ)」より、「故郷へ向けて書かれた音楽」と言えるのです。

 

ドヴォルザークの故郷「ボヘミア」は、古くから、ドイツ、オーストリアとの交流が盛んであり、彼自身、ベートーヴェンやシューベルト(1797-1828)の音楽に、強く「憧れていた」ようです。また、この「新世界交響曲」を聴くと、ワーグナー(1813-83)の「影響」を感じ取られる方も中にはいらっしゃるかも知れません。なお、ブラームス(1833-97)とは、「師弟」のような間柄でした。

 

これらのことから、ドヴォルザークは、「チェコ国民楽派」としての「特色」を持ちながらも、同時に、「ドイツ・オーストリア系」の、「後期ロマン派」としての「流れ」も受け継いでいると言えるのです。

 

今回のこの曲、「交響曲第9番 ホ短調 op.95 "新世界より"」は、「第2楽章」が特に有名です。「家路」のタイトルで、また、日本語詞(堀内敬三)の歌い出しである、「遠き山に日は落ちて」で、誰もが、必ずどこかで聴いているはずです。

 

「歌曲」、「合唱曲」、または「BGM」として有名なこの曲は、もとはこの交響曲の「一楽章」なのです。

 

この曲は、ドヴォルザークの弟子であった、ウィリアム・アームズ・フィッシャー(1861-1948)が、1922年に、作詞・編曲したものです。原曲も、「黒人霊歌」や「先住民の音楽」に影響を受けていると言われていますが、あくまでも、ドヴォルザークの「オリジナル」です。

 

全曲を通して見ますと、構成は、あくまでも「古典的」な、「交響曲」のスタイルによっていますが、「第1楽章第1主題」が、すべての楽章で「回想」される他、「最終(第4)楽章」では、それまでの楽章の主題が次々と回想されています。このことから、ベートーヴェンの「第9」の影響ももちろん考えられます。何はともあれ、このようにして、「全曲の統一」が図られているのです。

 

ベートーヴェンの「第9」の季節ですが、この、ドヴォルザークの「第9」も、負けず劣らず、この時期に「ピッタリ」の曲だと言えます。この「暮れ」は、「ドヴォルザーク」を聴いてみてはいかがでしょうか。

 

それではまた...。

 

(ヴァーツラフ・ノイマンは、ドヴォルザークの故国「チェコ」のマエストロです)

(こちらは、フルニエ/セルによる「チェロ協奏曲」のCDですが、入手はもう、「困難」かも...)

Dvorak: Cello Concerto Dvorak: Cello Concerto
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(daniel-b=フランス専門)