(この曲の「主要」なバージョンは、やはり、「ライヴ」にあると言えます。こちらは、1966年10月、オランピア劇場での「さよなら公演(アデュー・オランピア)」での「伝説的名唱」です。ここでは、テンポをかなり落として、ゆっくりとした老夫婦の日常を、「リアル」に描き切っています。私が「最も好きな(お薦めする)バージョン」がこれです)
(こちらは、1963年7月23日、ベルギー・クノックでのライヴからの映像です。レコードが出て、まだ間もない頃の歌唱ですが、このことからも、この、「たった3年後」である、上掲の「アデュー・オランピア」での歌唱がいかに「凄い」か、ご理解いただけるものと思います。ブレルの、アーティストとしての「熟成の早さ」は、まさに、「天才」のなせるわざです)
(こちらは、1964年10月の「オランピア劇場公演」から。まさに、「絶頂期」であり、こちらも、「ライヴ盤のスタンダード」として、ぜひお薦めしたいレコードだと言えます)
(こちらが、「オリジナル録音」です)
https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12402074673.html(前回の記事)
https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10096189787.html(これまでの記事)
今年は、シャンソン界の「3大巨匠」の1人、ジャック・ブレル(1929-78)の「没後40周年」(「10月9日」が「命日」)、来年は、「生誕90周年」(「4月8日」が誕生日)という「記念の年」に当たります。
今回紹介する曲も、過去の記事中で何度か触れていますが、ブレルを代表する、「重要な作品」の1つということで、ここであらためて、書いておきたいと思います。
今回の曲は「les vieux "老夫婦"」(1963)。
ブレル「中期」を代表する、「最高傑作」の1つです。
つい先日、ジュリエット・グレコが歌った「ブレル作品」、「vieille "老婦人"」(1963)についての記事を書きました。
https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12401376966.html?frm=theme(ジュリエット・グレコ「老婦人」の記事)
その記事の中でも書いているように、当時、すでに「多忙」を極めていたとも言えるブレルが、グレコのために「vieille "老婦人"」という作品を書いていましたが、一方で、この「シャンソン史に残る名作」とも言える、「les vieux "老夫婦"」をも書いていたのです。
「(la )vieille」も、「les vieux」も、元の単語は同じもので、「お年寄り」を示します(現在では、「あまり良い表現ではない」とも言われますが、なにぶん、「半世紀以上前」の作品ですので、どうかご了承ください)。元は「形容詞」ですが、「名詞」としても使われ、「le vieux」の「女性形」が「la vieille」、「男女混合」ともなると、「les vieux」(「男性複数形」)が使われますが、「文脈」から、「老夫婦」の意味に解釈出来るわけです(もちろん、「お年寄りたち」といった解釈も「可能」です)。
この作品でも、ブレルの「鋭い観察眼」が光っていますが、その詞は「写実的」であり、「歌われる」ことで、よりいっそうの「凄み」を感じます。
この詞は、もはや「韻」を踏んでいるのが分からないほどの、1行「18音節」(最後に挙げている歌詞では、「2行」に分けて書いてあります)ともなっていますが、このことにより、「お年寄り」たちの、「ゆっくり」となった動作を、きめ細かく描写出来ているのだとも言えるのです。
広間で「ボーンボーン」と鳴り響く「振り子時計」の音は、やがて訪れる「死」を象徴していて、それは、「私たち」をも待っているのだ、と歌われています。
上掲の映像以外でも、この曲には、素晴らしい「歌唱映像」が残っています。その一部を、参考までにどうぞ...。
こちらは、1964年11月10日の「テレビ番組」からのものです。まさに、「オランピア劇場公演」直後の出演で、「充実しきった」様子が、ここからもうかがえます。
こちらは、ちょうど、その「2年後」、1966年11月10日のテレビ番組、「Palmares des chansons(パルマレス・デ・シャンソン)」(日本式に言うと、「歌のヒットパレード」です。「古っ」!!)からの映像です。ブレルはここで「全10曲」を歌っていますが、「アデュー・オランピア」の直後である今回は、声に「疲れ」も感じられます。
こちらは、以前も紹介した、1965年4月28日のテレビ放送(ベルギー)でのライヴです。「全5曲」で、「les vieux "老夫婦"」がトップです。今回で、最後に歌われる曲「Madeleine "マドレーヌ"」(1961-62)以外は、すべて、「記事」として書いたことになりました。
https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12371128679.html?frm=theme(参考:「les bigotes "信心深い女たち"」の記事)
この作品「les vieux "老夫婦"」は、1963年4月10日に録音され、程なく「発売」となりました(「les bigotes "信心深い女たち"」も、「同日」の録音です)。
詞はもちろんブレル自身が書いていますが、曲は、アコーディオニストであったジャン・コルティ(1929-2015)と、ピアニストのジェラール・ジュアネスト(1933-2018)の2人が手伝っています。
ジャン・コルティは、1960年にブレルと出会い、1965(66)年のアルバム「ces gens-la "あの人たち"」まで、伴奏アコーディオニストを務めていましたが、その後、「クラブ」を開店したため、メンバーからは外れました(「さすがに忙し過ぎた」というのも「理由の1つ」だったようです)。
後年、コルティは、「前衛的」な若手のバンド「Tetes Raides(テート・レード)」(「硬い頭」という意味でしょうか)に、メンバーとして招かれることになりました(1995年ごろのことです)。
その、「Tete Raides」の「一員」として、アコーディオンを弾いた映像がこれです。しかも、曲は「les vieux "老夫婦"」!!
彼らの演奏は、この直後に発売された、ブレルのトリビュート・アルバム、「Aux suivant(s)」(1998)に収録されました。
コルティは、2001年、何と、初のソロ・アルバム「couka "クーカ"」を発表し、「80歳を越えてからのソロ活動」として、当時、日本でも、ちょっとした「話題」になりました。この活動は、その後、2009年の3作目、「FIORINA "フィオリーナ"」まで続きました。
こちらは、アルバム「couka "クーカ"」の第1曲目、「amazone "アマゾンヌ"」です。
次の映像は、前回も紹介した、ブロードウェイ・ミュージカル「Jacques Brel is alive and well and living in Paris」(1968)から、「les vieux "老夫婦"」の英語版、「old folks」です。「オリジナル録音」(エリー・ストーン)は、残念ながら、動画サイトでは見つけることが出来ませんでしたが、代わりに、こちらもまた「美しい」、この歌唱をどうぞ。
歌っているのはカミーユ・オサリバン(1970-)。ロンドン出身の女性歌手で、何と、ブレルを「得意」としているようです...。これは素晴らしい!!
2009年10月22日、ロンドンでのライヴということです。
また、この曲に「感銘」を受けた、ブレルと同郷のブリュッセル出身の絵本作家、ガブリエル・ヴァンサン(1928-2000, 女性)は、この曲の世界観を、余すことなく、「絵本」に再現してみせました(1996年)。私も、2008年にブレルの「記念館」(ブリュッセル)を訪れた際、「原語版」を購入しましたが、本当に、「とても素晴らしい」ものです。
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こちらの映像は、その、ガブリエル・ヴァンサンによる、ブレルの「スケッチ」の数々です。とても「リアル」です。
以下に、「les vieux "老夫婦"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。
それではまた...。
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les vieux 老夫婦
les vieux ne parlent plus
ou alors seulement parfois du bout des yeux
meme riches il sont pauvres
ils n'ont plus d'illusions et n'ont qu'un coeur pour deux
chez eux ca sent le thym le propre la lavande
et le verbe d'antan
que l'on vive a Paris on vit tous en province
quand on vit trop longtemps
est-ce d'avoir trop ri que leur voix se lezarde
quand ils parlent d'hier
et d'avoir trop pleure que des larmes encore
leur perlent aux paupieres
et s'ils tremblent un peu est-ce de voir vieillir
la pendule d'argent
qui ronronne au salon
qui dit oui qui dit non
qui dit "je vous attends"
老夫婦はもう話さない
時折り、眼の端で語るだけ
お金はあっても、彼らは気の毒だ
彼らにもう「幻想」はなく、「二人でひとつ」の心を持つだけ
彼らの家では、タイムや、清潔な香り、ラベンダーの香りがして
それから、パリに住んでいた頃の昔の言葉
あまりに長く生き続けると
みんな、「田舎」で暮らすようになるんだ
昔のことを話して
あまりにも笑い過ぎたせいか、彼らの声はかれてしまった
そして泣き過ぎたせいで、彼らのまぶたには今も
涙が玉になって浮かんでいる
ほんの少し、彼らが震えているとしたら
銀の振り子時計が古びていくのを見ているからなのだろうか
それは、広間でボーンボーンと鳴って
「ウイ」とか「ノン」とか言って
「あなたたちを待っていますよ」と言う
les vieux ne revent plus
leurs livres s'ensommeillent leurs pianos sont fermes
le petit chat est mort
le muscat du dimanche ne les fait plus chanter
les vieux ne bougent plus
leurs gestes ont trop de rides leurs monde est trop petit
du lit a la fenetre puis du lit au fauteuil
et puis du lit au lit
et s'ils sortent encore bras dessus bras dessous
tout habilles de raide
c'est pour suivre au soleil
l'enterrement d'un plus vieux l'enterrement d'une plus laide
et le temps d'un sanglot oublier toute une heure
la pendule d'argent
qui ronronne au salon
qui dit oui qui dit non
et puis qui les attend
老夫婦はもう夢を見ない
彼らの本は眠りにつき、ピアノも閉じられたまま
小さな猫は死んでしまったし
日曜のマスカット・ワインも、もう彼らを歌わせることはない
老夫婦はもう動かない
二人のしぐさはあまりに「老い」を感じさせ、彼らの世界はあまりにも小さい
ベッドから窓へ、ベッドから肘掛け椅子へ
そして、ベッドからベッドへと
二人が手に手を取って、堅苦しく着飾って
また出かけるとしたら
それは、太陽のもと
もっと年長者の、もっと年を取った女の葬式に参列するため
そして、涙にむせんでは、その時を忘れる
銀の振り子時計は
広間でボーンボーンと鳴って
「ウイ」とか「ノン」とか言って
そして、彼らを待っている
les vieux ne meurent pas
ils s'endorment un jour et dorment trop longtemps
ils se tiennent la main ils ont peur de se perdre
et se perdent pourtant
et l'autre reste la
le meilleur ou le pire le doux ou le severe
cela n'importe pas celui des deux qui reste se retrouve en enfer
vous le verrez peut-etre vous la verrez parfois
en pluie et en chagrin
traverser le present
en s'excusant deja de n'etre pas plus loin
et fuir devant vous une derniere fois
la pendule d'argent
qui ronronne au salon
qui dit oui qui dit non
qui leur dit "je t'attends"
qui ronronne au salon
qui dit oui qui dit non
et puis qui nous attend...
老夫婦は死ぬことはない
ある日、眠りにつくだけ そして、あまりに長く眠るのだ
手に手を取るのは、お互いを失うのが怖いから
それでもやはり失ってしまう
そして残された者は
幸か不幸か、優しさゆえか、厳しさゆえか
いや、そんなことはどうでもいい とにかく、残された方は「地獄」を味わう
あなた方はたぶん「彼」を、時には「彼女」を見る
泣いたり、悲しんだりしている彼女を
今を生き
いまだに残っていることを謝りながら
最後にもう一度、あなた方の前を逃げて行く
銀の振り子時計は
広間でボーンボーンと鳴って
「ウイ」とか「ノン」とか言って
彼らに、「お前を待ってるよ」と言う
広間でボーンボーンと鳴って
「ウイ」とか「ノン」とか言って
そして、僕たちを待っている...
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