(1972年2月16日のテレビ放送からです。グレコは、この作品を、ジェラールの作曲と言い間違えますが、すぐに「訂正」します。こういったところも、とても「微笑ましい」です)

(こちらは「オリジナル録音」です)

https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10096861753.html(これまでの記事)

https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10096189787.html(テーマが「ジャック・ブレル」の記事一覧)

 

今回は、久しぶりに、この方の曲をお届けしましょう。

 

すでに「引退」を発表されてはいますが、フランス・シャンソン界の「重鎮」であることには変わりありません。

 

ジュリエット・グレコ(1927-)で、曲は、「vieille "老婦人"」(1963)です。

 

この曲の「邦題」は、従来、「老婆」と表記されていましたが、この呼び方は、「時代にそぐわない」とも思いますので、ここでは、「老婦人」の語を使わせていただきたいと思います。

 

今回のこの曲、「vieille "老婦人"」は、彼女の「盟友」とも呼べる存在であった、「3大巨匠」の1人、ジャック・ブレル(1929-78)が、特に、「彼女のため」に書いた作品の1つです。

 

これまでにも書いているように、ブレルは、今年「没後40周年」(命日は、「10月9日」)であり、来年は、「生誕90周年」(誕生日は、「4月8日」)という、「記念の年」に当たります(この記事も、その「一環」として書いています)。

 

前回の記事、「non Monsieur, je n'ai pas 20 ans "ノン・ムッシュー、私は20歳じゃない"」(1977)でも書いているように、グレコは、「最初期」のブレルの「訪問」を受けています。

 

この時にブレルが歌い、その直後(1954年5月)に、グレコが「オランピア劇場」のステージで歌って、彼の名を知らしめた曲が、「le Diable(ca va) "OK、悪魔"」(1953-54)でした。これが、2人の、「終生変わらぬ友情」の「第一歩」だったのです。

 

再掲しておきましょう。

 

1959年には、後に彼女の夫ともなった、「新しい」ピアニスト、ジェラール・ジュアネスト(1933-2018, 「5月16日」に逝去)とともに、再びグレコのもとを訪れていますが、この時に持って来た作品が、「on n'oublie rien "人は何も忘れない"」(1961年発表)でした。「名義上」では、ジェラール・ジュアネストの、「初めて」の作曲作品です。

 

こちらも「再掲」しておきましょう。

 

今回紹介する作品「vieille "老婦人"」(1963)は、その次にグレコが採り上げた「ブレル作品」となります。

 

1963年のボビノ座公演で「創唱」されたと解説されていますが、「1964年9月21日」とする文献もあり、正確な日時ははっきりとは分かりません。しかし、この時の録音は、「レコード化」もされています(日本でも発売されています)。

 

当時のブレルは、すでに「多忙」を極めていました。そんな中にありながら、自身ではついに歌うことのなかった、「グレコ向け」の作品も書いていたのです(他にも、何と、エディット・ピアフのための作品「je m'en remets a toi "あなた次第"」も書いていましたが、それはまた「別の機会」に...)。

 

「女嫌い」という面も持ち合わせていたブレルでしたが、この曲は、数少ない、「女性視点」で書かれた作品であるとも言うことが出来ます。しかし、やはり、「自立した女性」である、当時のグレコが歌ってこその作品だとも言え、その「書きっぷり」からも、グレコの「鼻っ柱の強さ」を、明らかに意識していると思います。

 

タイトルこそ「vieille "老婦人"」ではありますが、単なる「老い」を描いた作品ではありません。

 

自分たちを「笑ったり」、「批判したり」していた「年長者」を、「いつか見返してやる」。そう「思った」時に、自分たちは「素敵」に、年を重ねていこうじゃないか、という、まさに、「先駆的」な「女性の生き方」が描かれています。すでに「55年」。「半世紀以上前」の作品であることを考えると、ブレルがこの作品を書いたことにも「驚き」を覚えます。それだけ、ブレルには、グレコが「強烈な存在」に見えていたのでしょう。

 

ブレルの「観察眼の鋭さ」は、今さら言うには及びませんが、「気丈な女性」を描き出すのもまた「得意」のように感じます。

この曲もまたその1つです。「grand-mere "ごらんよ、お婆さんを"」(1965)。

 

(曲は「3分40秒」頃に終了します。後は「無音状態」が続きます。ご了承ください)

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12159297171.html?frm=theme(参考:この曲について書いている記事)

 

この後も、ブレルは、「je suis bien "とても素敵"」(1966)という作品を、グレコのために書いていますが、こちらの音源は、動画サイトでは見つけることが出来ませんでした。ここに載せることが出来なかったのがとても残念です。

 

その後、グレコが、「la chanson des vieux amants "懐かしき恋人たちの歌"」(1967)や、「j'arrive "孤独への道"」(1968)といった、「ブレル/ジュアネスト作品」を採り上げ、自身の「主要レパートリー」としたことは、これまでにも書いている通りです。そして、「最晩年」のブレルから贈られた、「最後の作品」が、「voir un ami pleurer "泣く友を見ることは(涙)"」(1977)でした...。

 

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12239903423.html?frm=theme(この曲についての記事)

 

以下に、「vieille "老婦人"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

それではまた...。

 

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vieille  老婦人

 

c'est pour pouvoir enfin botter les fesses

a ces vieillards qui nous ont dit

que nos vingt ans que notre jeunesse

etaient le plus beau temps de la vie

c'est pour pouvoir enfin botter le coeur

a ceux qui nous volent nos nuits

ces maladroits qui n'ont que leur ardeur

croulants qui n'ont que leur ennui

 

私たちの「20歳」が、「若さ」が

人生で一番「美しい」時期だと言った

あの「年寄り」たちのお尻を

いつかきっと蹴とばしてやれるように

私たちの夜を奪う

思い込みの激しい、この「不器用者」たちを

「退屈」しかない、この「老いぼれ」たちの胸を

いつかきっと突き放してやれるように

 

c'est pour cela jeunes gens

qu'au fond de moi s'eveille

le desir charmant

de devenir vieille

 

それだから、若者たち

私の心の中には

「年を取りたい」という

素敵な欲望が目覚めるのよ

 

c'est pour pouvoir un jour enfin leur dire

a celles qui me jugent avec fureur

"pauvres grognasses" c'est pour pouvoir vous dire

"je vous pardonne votre laideur"

c'est pour pouvoir leur dire a ces matrones

qui mille fois m'ont condamnee

"comment voulez-vous que l'on vous pardonne

vous qui n'avez meme pas peche"

 

私を厳しく批判した女たちに

「不平不満ばかり言う哀れな女」

「あんたたちの醜さを許してやるわ」と

いつかきっと言ってやれるように

何度も何度も私を非難した

あの「品のないおばさん」たちにこう言ってやれるように

「許してほしいなんて、どうして思うの?

罪など犯してもいないあなたたちが」

 

c'est pour cela jeunes gens

qu'au fond de moi s'eveille

le desir charmant

de devenir vieille

 

それだから、若者たち

私の心の中には

「年を取りたい」という

素敵な欲望が目覚めるのよ

 

c'est pour pouvoir au jardin de mon coeur

ne soigner que mes souvenirs

vienne le temps ou femme peut s'attendrir

et ne plus jalouser les fleurs

c'est pour pouvoir enfin chanter l'amour

sur la cithare de la tendresse

et pour qu'enfin on me fasse la cour

pour d'autres causes que mes fesses

 

私の心の庭で、自分の思い出だけを

大切にしていられるように

女が心を動かされ

もう、花にも嫉妬しない時が来て

優しいツィター(琴)の調べに

愛を歌うことが出来るように

それから、このお尻のためではなく

人が私を口説いてくれるように

 

c'est pour cela jeunes gens

qu'au fond de moi s'eveille

le desir charmant

de devenir vieille

 

それだから、若者たち

私の心の中には

「年を取りたい」という

素敵な欲望が目覚めるのよ

 

c'est pour pouvoir un soir oser lui dire

que je n'ai bu qu'a sa sante

que quand j'ai ri c'etait de le voir rire

que j'etais seule quand j'ai pleure

c'est pour pouvoir un soir oser lui dire

un soir en filant de la laine

qu'en le trompant mais ca oserai-je le dire

je me suis bien trompee moi-meme

 

ある夜、彼にこう言ってやれるように

私が飲んだのは、あんたの健康を祈る時だけだったと

私が笑ったのは、あんたの笑顔を見るためだったと

私が泣いたのは、ひとりの時だったと

ある夜、彼にこう言ってやれるように

ある夜、毛糸を紡ぎながら

彼をだますように...でも、言えるだろうか

私自身が「間違っていた」なんて

 

c'est pour cela jeunes gens

qu'au fond de moi s'eveille

le desir charmant

de devenir vieille

 

それだから、若者たち

私の心の中には

「年を取りたい」という

素敵な欲望が目覚めるのよ

 

 

 

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(daniel-b=フランス専門)