「4月8日」は、ジャック・ブレル(1929-78)の「誕生日」でした。

 

今年は、「没後40周年」(10月9日が「命日」)、来年が、「生誕90周年」の「記念の年」に当たりますので、「特集」でお送りしています。

https://ameblo.jp/daniel-b/themeentrylist-10096189787-1.html(これまでの記事一覧)

 

今月は、「ブレルとベルギー」にこだわって、曲をお届けしています。

 

今回紹介する曲は、「l'Ostendaise "オスタンドの女"」。

1968年9月に発売されたアルバム「j'arrive "孤独への道"」からの作品です。

 

自分でも「意外」ですが、このアルバムからの紹介は、「全9曲」中、今回で何と、「5(7)曲目」ともなります。

それだけ、このアルバムが「充実している」ということでもあるのですが、当時は、いわゆる「5月革命」によって、パリが、フランス全土が、大いに「揺れた」年でもありました。

 

「芸術家」たちは、「創作意欲」を「刺激」されたのでしょうか。この「1968年」は、「巨大な才能」がひしめき合った「1960年代」においても、一種の「ピーク」とも言える時期なのです。バルバラ(1930-97)も、「最高傑作」とも言えるアルバム、「le soleil noir "黒い太陽"」を、ブレルに続いて、「10月」に発表しています。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12324573006.html(バルバラ「黒い太陽」の記事)

 

ブレルは、父方の先祖が北海に面するウエスト=フランデレン州の出身ということもあり、そのシャンソンにも、これらの地域が歌い込まれたものがいくつかありますが、この曲もその1つとなります。

 

今回登場する「オスタンド」は、そのウエスト=フランデレン州の主要都市のひとつで、「ベルギー王室」にも愛された、美しい、「マリンリゾート地」です。この「オスタンド」というのは、「フランス語」での呼び方ですが、地域としては、「オランダ語圏」に属していますので、「Oostende(オーステンデ)」という呼び方も「一般的」です。

 

今年、こちらも「没後25周年」となる、レオ・フェレ(1916-93)にも、長年の友人であった、詩人ジャン=ロジェ・コシモン(1918-85, こちらは、「生誕100周年」!!)との共作、「comme a Ostende "オスタンド(で)のように"」(1959-60)という傑作があり、このブログでも、「レオ・フェレ」として採り上げた作品の「第1号」となった曲でもありました(2016年7月17日付け)。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12181415405.html(レオ・フェレ「オスタンドのように」の記事)

 

ちなみに、このような街です。

 

今回の作品「l'Ostendaise "オスタンドの女"」は、詞はもちろん、ブレル自身の手によりますが、曲は、編曲・指揮担当のフランソワ・ローベール(1933-2003)の手によります(この曲は、フランソワ単独の作曲のようです)。

 

フランソワ・ローベールも、気付けば、今年は、「生誕85周年」「没後15周年」という「ダブルアニヴァーサリー」の年となります。

ブレルの作品の編曲・指揮者として、現在でも、その名が忘れられることのないフランソワ・ローベールですが、彼も、「コンセルヴァトワール」で高等な音楽教育を受けていることから、「クラシック畑」の音楽家とも言うことが出来ます。とは言え、音楽活動は「1951年」からと、かなり「早い」時期から始めているようで、1956年7月、「最初期」のブレルとの出会いを果たしたのも、名プロデューサー、ジャック・カネッティ(1909-97)からの紹介だったということです(当時のフランソワは、「ピアニスト」としての参加でした)。

 

このブログでは、これまでも、「意識」してフランソワ・ローベール作曲の作品を紹介していますが、その中でも最も有名なものが、1962年の傑作、「chanson sans paroles "無言歌"」でした。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12202868754.html(「無言歌」の記事)

 

フランソワの後にメンバーに加わったのが、「専属ピアニスト」および、「作曲家」として「大活躍」することになるジェラール・ジュアネスト(1933-)(彼も、「コンセルヴァトワール」の出身です)ですから、そのことからも、フランソワは、オケの編曲・指揮に「専念」することになりました。以降、作曲作品が「減った」ことは確かなのですが、残されたそれらの作品は、いかにもフランソワらしい、「独特の個性」が感じられるものばかりとなりました。

 

「華麗」で、「ピア二スティック」なジェラールの曲とは対照的に、落ち着いた、「瞑想曲風」な作風がフランソワの曲の特徴です。これは、聴けばすぐに分かると思います。

 

「管楽器」を主体とした、フランス的な「色彩感」の感じられるオーケストレーションで、今回はさらに、ハープも「主役の1つ」となっています。これが、静ひつな「海辺の風景」を、すぐにイメージさせてくれます。ブレルの「声」も、「穏やか」でありながら、独特の「凄み」を感じさせますので、意外に「緊張感のある曲」と言うことも可能です。いずれにせよ、とても「美しい曲」です。

 

歌詞は、解釈がやや「難しい」ところがあります。日本語訳は、基本的に「古い時代」のものしか残っておらず、「達意」の翻訳は、なかなか難しいのですが、何とか、がんばってみました。

 

その歌詞を、以下に載せておくことにいたしましょう。

 

さて、今後ですが、「命日」を含む「10月」には、また「特集」を組みたいと考えていますが、それまでに、「散発」で、いくつかの曲は紹介してみたいと思っています。それだけ、「名曲が多い」ということでもありますので、どうぞ、ご期待ください。

 

直近の予定では、やはり「ブレルとベルギー」、そして「5月」ということから、2003年になってようやく「解禁」となった、1977年の「未発表(だった)曲」の1つ、「mai 40 "1940年5月"」について書いてみたいと思っています。

 

それではまた...。

 

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l'Ostendaise  オスタンドの女

 

une Ostendaise

pleure sur sa chaise

le chat soupese

son poids d'amour

dans le silence

son chagrin danse

et les vieux pensent

chacun son tour

a la cuisine

quelques voisines

parlent de Chine

et d'un retour

a Singapour(*)

une Javanaise

devient belle-soeur

de l'Ostendaise

 

オスタンドの、ある女が

その椅子で泣いている

猫は、飼い主の

その愛を推し量っている

静寂の中で

彼女の悲しみは踊る

そして、年寄りたちは

それぞれに考える

台所では

近所の女たちが

中国の話をしている

そして、「帰る」話もしている

シンガポールへ(*注)

ジャワ島の女が

オスタンドの女の

義理の姉妹になるということだ

 

il y a deux sortes de temps

y a le temps qui attend

et le temps qui espere

il y a deux sortes de gens

il y a les vivants

et ceux qui sont en mer

 

「時」には2つの種類がある

「待つ」時と

「望む」時だ

「人」にも2つの種類がある

「生きている」人たち

そして、「海にいる」人たち

 

notre Ostendaise

que rien n'apaise

de chaise en chaise

va sa blessure

quelques commeres

quelques comperes

battent le fer

de sa brisure

son capitaine

sous sa bedaine

de biere pleine

bat le tambour

homme de voiles

homme d'etoiles

il prend l'escale

pour un detour

 

オスタンドの女は

まったく心が休まらない

椅子から椅子へと

心の傷は深まるばかり

代母たちは

代父たちは

その傷で

心を鍛えている

彼女の船長は

「太鼓腹」のもとで

棺に入った

太鼓を叩け

帆の男よ

星の男よ

まわり道のために

この船は寄港する

 

il y a deux sortes de temps

y a le temps qui attend

et le temps qui espere

il y a deux sortes de gens

il y a les vivants

et ceux qui sont en mer

 

「時」には2つの種類がある

「待つ」時と

「望む」時だ

「人」にも2つの種類がある

「生きている」人たち

そして、「海にいる」人たち

 

notre Ostendaise

au temps des fraises

devint maitresse

d'un pharmacien

son capitaine

mort sous bedaine

joue les baleines

les sous-marins

pourquoi ma douce

moi le faux mousse

que le temps pousse

t'ecrire de loin

c'est que je t'aime

et tant je t'aime

qu'ai peur ma reine

d'un pharmacien

 

オスタンドの女は

いちごの季節に

ある薬屋の恋人となった

彼女の船長は

「太鼓腹」のもとで死に

クジラや

潜水夫たちとたわむれている

愛しい人よ どうしてだろう

本当の水夫でもない僕が

遠くから君に

手紙を書きたくなるというのは

それは君を愛しているから

とても愛しているからだ

僕の女王よ

僕は、薬屋が怖いからなんだ

 

il y a deux sortes de temps

y a le temps qui attend

et le temps qui espere

il y a deux sortes de gens

il y a les vivants

et moi je suis en mer...

 

「時」には2つの種類がある

「待つ」時と

「望む」時だ

「人」にも2つの種類がある

「生きている」人たちと

そして、僕は「海にいる」...

 

(*注)ブレルは、「韻」を踏むため、「Singapeur」と歌って(発音して)います。

 

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(daniel-b=フランス専門)