「4月8日」は、ジャック・ブレル(1929-78)の「誕生日」でした。

 

今年は、「没後40周年」(10月9日が「命日」)、来年が、「生誕90周年」の「記念の年」に当たりますので、「特集」でお送りしています。

https://ameblo.jp/daniel-b/themeentrylist-10096189787-1.html(これまでの記事一覧)

 

今月は、「ブレルとベルギー」にこだわって、曲をお届けしています。

 

さて、今回は、前回からの流れで、「les bigotes "信心深い女たち"」(1962-63)について書いてみたいと思います。

 

歌詞を見る限りでは、直接「ベルギー」とは関係ないのかも知れませんが、その「民族舞踊」調な曲から言っても、「都会」とは無縁な、「のどかな田園風景」、「田舎町の教会」といったイメージが浮かんできます。やはり、いかにも「ブレル的」であり、「ベルギー的」な感じがします。

 

この曲も、前回の「les Flamandes "フランドルの女たち"」(1959)同様、「アンチ・コンフォルミスム(反既成主義)」的な作品であると言うことが出来ると思いますが、今回の「標的」は、「les bigotes "信心深い女たち"」となっています。

 

この単語、「レ・ビゴット」ですが、実は、あまり「感じの良い言葉」ではありません。

 

「イワシの頭も信心から」と言われるように、信仰心の「不思議さ」というのは、全世界のどこにでもあるようで、この「レ・ビゴット」と言う言葉も、それを「皮肉った」ようなニュアンスがあります(「凝り固まった信心」ということです)。

 

この言葉、元々は「形容詞」ですが、「名詞」としても使われます。

 

元の形「bigot」の末尾に、「女性形」を示す「e」が付き、さらに、「複数形」の「s」が付いています。その上、「名詞」を示す「定冠詞 les(laの複数形)」が付いていますから、ただこれだけ、「les bigotes」で、「信心深い女たち」という意味になるのです(前回の曲「les Flamandes」も同様で、「Flamand」の「女性形複数」なので、「フランドルの女たち」になります)。

 

この曲は、「信心深い」ばっかりに、それにすべてを捧げてしまい、「世の中」が見えなくなって、そのまま「老いて」しまう女性たちを、「皮肉る」ように歌ったものです。上掲最初の音源は、オリジナルの「スタジオ録音」(1963年4月10日録音)、次の動画が、1965年4月28日の、ベルギーのテレビ番組での「ライヴ」ですが、このライヴ映像は、特に、私の「お気に入り」でもあります(先に、「le plat pays "平野の国"」「les bonbons "ボンボン"」でも紹介しました)。

 

ブレルのこの「精神」は、明治時代の日本で、一世を風靡した、川上音二郎(1864-1911)の「オッペケペー節」(1889-91)と「同様」のものが感じられます。

 

参考までに載せておきます。

 

次いで、先述の1965年4月28日のテレビ放送(ライヴ)の「全曲」の映像も見つかりましたので、こちらも載せておきましょう。

 

「インタビュー」の後、次の5曲が歌われています(既出は、今回の「les bigotes」を含めて「3曲」。残り2曲も必ず採り上げます)。

 

1.les vieux  老夫婦(1963)

2.les bonbons  ボンボン(1964)

3.les bigotes  信心深い女たち(1962-63)

4.le plat pays  平野の国(1961-62)

5.Madeleine  マドレーヌ(1961-62)

 

こちらは「スタジオ録音」から「8曲」収録のアルバムです。

 

このバージョンは、1963年に録音・発売された最初のもので、「25cmLP」の「オリジナル盤」です。現在、CDとしても発売されている「全12曲盤」(CDは+2曲)は、1966年に編集・発売された「30cmLP」(後に、日本でも発売されました)が「オリジナル」です。

曲目は以下の通りです(動画サイト側では、各曲の「頭出し」も可能です)。

 

1.les bigotes  信心深い女たち(1962-63)

2.les vieux  老夫婦(1963)

3.les fenetres  窓(1963)

4.les toros  闘牛(1963)

5.la Fanette  ファネット(1963)

6.les filles et les chiens  娘たちと犬たち(1962-63)

7.j'aimais  夢多き頃(1963)

8.la parlotte  おしゃべり(女) (1962-63)

 

最後に、こちらも載せておきましょう。

1966年10月、オランピア劇場での「さよなら公演」(「アデュー・オランピア」)からの動画からです。

このように、この曲は、ステージでは「中心曲」ともなりました。

 

それでは、以下に、「les bigotes "信心深い女たち"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

この作品は、詞・曲ともにブレル自身の手によります。

 

この曲を含む4曲は、発表の前年、1962年11月から12月にかけて一度録音されていますが(EP盤。70491)、現在では、完全に「お蔵入り」となっているようです。現在、普通に手に入る録音は、翌1963年4月にあらためて録音されたものです。そのため、「制作年」の表記は(1962-63)としてあるのですが、一度は聴いてみたいですね、「1962年」の「ファースト・テイク」...。

 

このテーマの次回は、「l'Ostendaise "オスタンドの女"」(1968)を採り上げてみたいと思います。

 

それではまた...。

 

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les bigotes  信心深い女たち

 

elles vieillissent a petits pas

de petits chiens en petits chats

les bigotes

elles vieillissent d'autant plus vite

qu'elles confondent l'amour et l'eau benite

comme toutes les bigotes

ah si j'etais diable en les voyant parfois

je crois que je me ferais chatrer

si j'etais Dieu en les voyant prier

je crois que je perdrais la foi

par les bigotes

 

彼女たちは、ちょこちょこと老いていく

子犬から子猫のような歩き方で

信心深い女たち

彼女たちは、急ぎ足で老いていく

愛と聖水を取り違えているだけになおさら

他の同種の人々すべてと同じように

ああ、僕が「悪魔」だったら、彼女たちを見るたびに

「去勢」したくもなるだろう

僕が「神様」だったら、彼女たちが祈るのを見て

信仰を見失ってしまうことだろう

彼女たちのために

 

elles processionnent a petits pas

de benitier en benitier

les bigotes

et patati et patata

mes oreilles commencent a siffler

les bigotes

vetues de noir comme Monsieur le Cure

qui est trop bon avec les creatures

elles s'embigotent les yeux baisses

comme si Dieu dormait sous leurs chaussures

de bigotes

 

彼女たちは、ちょこちょこと列を作る

聖水盤から聖水盤へと

信心深い女たち

ぺちゃくちゃ、ぺちゃくちゃと

そのおしゃべりに、僕の耳は耳鳴りを起こす

信心深い女たち

みんなに優しい神父様のような

黒い服を着て

彼女たちは、うやうやしく視線を下ろす

まるで、神様が眠っているかのように

彼女たちの足元で

 

le samedi soir apres le turbin

on voit l'ouvrier parisien

mais pas de bigotes

car c'est au fond de leur maison

qu'elles se preservent des garcons

les bigotes

qui preferent se ratatiner

de vepres en vepres, de messe en messe

toutes fieres d'avoir pu conserver

le diamant qui dort entre leurs f...

de bigotes

 

土曜の夜、仕事の後に

パリの労働者たちを見かけることがあっても

でも、彼女たちは違う

なぜなら彼女たちは、家の奥深くに引きこもり

男たちから身を守っているからだ

信心深い女たちは

それでしわくちゃになる方が良いなんて

晩課から晩課、ミサからミサへと

「守り切った」ことが「自慢」だなんて

その「ダイヤモンド」は、眠ったままだ

彼女たちの中で

 

puis elles meurent a petits pas

a petit feu, en petits tas

les bigotes

qui cimetierent a petits pas

au petit jour d'un petit froid

de bigotes

et dans le ciel qui n'existe pas

les anges font vite un paradis pour elles

une aureole et deux bouts d'ailes

et elles s'envolent... a petits pas

de bigotes

 

それから彼女たちは、ちょこちょこと亡くなっていく

かすかな明かりの中で 小さな山のようになって

信心深い女たち

ちょこちょこと埋葬されていく

薄ら寒い夜明けに

信心深い女たち

そして、「有りもしない」天国では

彼女たちのために、天使たちが大急ぎで楽園作り

「後光」と、2つの「翼」を持って

そして、彼女たちは飛び立つ...

ちょこちょことしたその歩みで

 

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(daniel-b=フランス専門)