「11月24日」は、偉大な女性歌手バルバラ(1930-97, 本名モニック・セール)の「命日」となります。それも、今年は、「没後20周年」の「記念の年」に当たります。ですので、今月は、可能な限り、このバルバラの名作を紹介していきたいと思っています。

 

テーマが「バルバラ」となっている記事の一覧を貼っておきます(実際には、他のテーマでも紹介している曲が何曲かあります)。

https://ameblo.jp/daniel-b/themeentrylist-10097047678.html

 

今回ご紹介する曲は、タイトルがとても似ている2曲です。どちらも、とても好きな曲ですから、一緒に紹介することにしました。

 

まず最初の曲(映像は、「上」の方となります)は、ここまで2曲(「le soleil noir」「gueule de nuit」)を紹介している、1968年10月発売のアルバム「le soleil noir "黒い太陽"」からで、こちらも「大作」です。「l'amoureuse "恋する女"」という作品です。

 

この曲は、あまりにも、「恋」を恋し過ぎたために、最終的には「悲劇」に至る、という作品ですが(もちろん「フィクション」です!!)、注目すべきは、やはり、その曲の「スケールの大きさ」でしょう。この1曲で、1つの「演劇作品」に「匹敵」するようにも私は思います。

 

また、特徴的なのが、詞における、「単純過去形」の多用です(フランス語を、「ある程度」まで学習された方でしたら、ご存知かと思います)。この形は、日常の会話ではほとんど使うことがない、「書き言葉(文語的表現)」の「過去形」と言えますが、「シャンソン」では、時に目にすることがあります。しかし、これほどまでに「多用」されると、本当に、「硬い」(「歴史小説」のような)印象も受けます。

 

「話し言葉」で普通に使われる「複合過去形」と違って、「現在につながっていない過去」を、「客観的」に「説明」するのが、この「単純過去形」の主な使われ方です。まさに「文語的」ですよね。

 

まず「fut-elle~?」(彼女は~だったのか?)がそれですが、動詞の元の形は、「etre」です。

「c'est~」(これは~です)は、よく聞かれる表現だと思いますが、それに対応する「単純過去形」が「ce fut~」(それは~であった)で、これも、割り合い、よく出て来る表現ではあります。

 

しかし、それ以外の動詞でも、となると、本当に「硬い」印象を受けますね。

 

「decouvrit」「fit」「jeta」「voulut」「revint」と、「第2節」だけでも、これだけ出て来ます。「過去」にあった出来事を、「物語」として語っている、ということが、この書き方でよく分かります。ですので、「演劇作品的」な印象を、私は受けるのです。

 

今回載せた録音は、1968年の「スタジオ録音」で、これしか見つかりませんでした。こちらも、もちろん「素晴らしい」のですが、私が本当にお薦めしたいのは、やはり「ライヴ録音」なのです。

 

この翌年、1969年2月の「オランピア劇場」公演の音源は、実は「2種類」あり、現在でも普通に入手可能な、「une soiree avec Barbara "バルバラとの一夜"」の他に、「公演初日(2月4日)」限定の「完全版」(「concerts Musicorama」)も、かつては販売されていました(私は、「奇跡的」に入手出来ました)。

 

プログラム中、「geule de nuit "夜の顔"」や、「joyeux Noel "楽しいクリスマス"」など「8曲(+イントロダクション)」については、先に、下に挙げた「collection」のディスクの旧盤、「premiere partie/deuxieme partie」で聴いており、後に入手した「une soiree avec Barbara」とは、「テイクが違う」ということにも「気付いた」のですが、その録音が、「初日」のものだったのです。

この「l'amoureuse "恋する女"」も、ほぼ「同じ」ではあるものの、やはり、「初日」の録音の方が「好き」だと、私は思います。

 

変わって、2曲目(2番目の映像)は、「amoureuse "恋の人"」(1970)という作品です。

タイトルをよくご覧ください。先ほどの曲は「l'amoureuse」と書きましたよね。「l'」という「定冠詞」が付いていましたが、今度の曲にはそれが付いていません。この2曲の場合、意味的にはほとんど変わりませんから、ただ単に、定冠詞の「ある」「なし」で区別するしかないのです。

 

この曲は、RTLテレビの映画評論家でもあった、レモ・フォルラーニ(1927-2009)の書いた、7幕物の劇「madame "マダム"」(4月22日付けで紹介した、1967年の同名の曲とは、まったく「無関係」です)の「劇中曲」となります(作曲は、バルバラ自身です)。アフリカの「娼館」が舞台で、バルバラが、自ら歌いました。

 

1970年の1月から2月にかけて、パリの「ルネッサンス座」で上演されましたが、「興行」としては、「大失敗」だったようです。

 

この曲は、「je serai douce "優しくします"」とともに、その後「再録音」され、すぐ次のアルバム「l'aigle noir "黒いワシ"」(1970, バルバラの、一番の「代表曲」ですよね)にも収録されました。ここに聴くのは、その「再録音」のものです。

 

「口笛」を思わせるピッコロに乗せて、軽やかに、「恋の喜び」が歌われるのですが、「最終節」では一転して、「不幸せ、不幸せ、不幸せ...こんなにも不幸せ」と、「嘆きの歌」に変わり、その「落差」は「劇的」です。

 

劇は「失敗」に終わりましたが、ちゃんと「収穫」を残したという点で、この「再録音」は、決して「無視」出来ません。ぜひ聴いてみてください。

 

せっかくですから、「je serai douce "優しくします"」の「再録音」も、あわせて載せておくことにしましょう。

 

最後に、「l'amoureuse "恋する女"」(1968)と、「amoureuse "恋の人"」(1970)の歌詞を載せておきましょう。

 

それではまた...。

 

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L'amoureuse  恋する女(1968)

 

celle qui tendait les bras

celle qui aimait si fort

mais qui ne le savait pas

qu'aimer encore et encore

ca vous brule, ca vous damne

celle-la qui, les yeux clairs

marchait les bras grands ouverts

et qui voulait tout donner

et tout prendre

celle-la s'en est allee

le coeur, d'amour, eclate

les bras fourbus de se tendre

et d'attendre

 

両腕を差し出していた女

それほどに強く愛していた女

しかし、自分ではそうとも知らずに

まだまだ愛そうとしていた女

あなたたちを燃えさせ、悩ませる

彼女は澄んだ目をして

腕を大きく広げて歩いていた

そして、すべてを「与えたい」と思っていた

そして、すべてを「手にしたい」とも思っていた

彼女は去ってしまった

はじけた恋心で

差し出すこと

待つことに疲れた腕で

 

fut-elle innocence

fut elle demence

qui donc le saura jamais

qui donc le saura jamais?

 

彼女は「無邪気」だったのか

「狂気」だったのか

それは誰にも分からない

それは誰にも分からない

 

elle jouait, toute enfant

deja, d'attraper le vent

dedans ses bras freles

mais elle ne retenait rien

le vent, ca va et ca vient

et c'est infidele

elle decouvrit la mer

la garce lui fit son oeil vert

en robe d'ecume

elle se jeta dedans

ses cheveux blonds s'emmelant

aux reflets de lune

puis elle voulut aussi

voler un morceau de nuit

qu'elle pensait, eblouie

tenir tout contre elle

mais revint le coeur chagrin

l'eau, ca vous glisse des mains

la nuit, ca va et ca vient

et c'est infidele

 

まるで子どものように

風を捕まえようと遊んでいた

きゃしゃな腕の中に

しかし、何も捕まえることは出来ず

風は、行ったり来たり

そして、きまぐれだ

彼女は海を見つけた

海に色目を使って

泡のドレスをまとい

彼女は海に飛び込んだ

月の光のもと

ブロンドの髪がもつれる

彼女は、今度は

夜のかけらを盗もうとした

それに目がくらんで

そばに置きたいと思っていた

けれど、悲しみばかりがよみがえり

水は、手の中をすり抜けてしまう

夜は、行ったり来たり

そして、きまぐれだ

 

fut-elle innocence

fut-elle demence

qui donc le saura jamais

qui donc le saura jamais?

 

彼女は「無邪気」だったのか

「狂気」だったのか

それは誰にも分からない

それは誰にも分からない

 

on a crie "c'est assez

de vouloir t'ecarteler

a donner, a prendre

a vouloir donner ton sang

a te bruler tant et tant

tu deviendras cendre"

ele ne repondait rien

elle esperait quand soudain

on se le rapelle

comme l'hiver etait venu

un homme lui est apparu

qui marchait vers elle

elle lui ouvrit les bras

et l'homme s'y rechauffa

la caressa tant et tant

qu'elle en devint belle

ce fut, la nuit et le jour

le temps des chaudes amours

et l'homme restait toujours

il etait fidele

 

「もう、たくさんだ」と言う声がした

そんなに自分をズタズタにしたがったり

与えたり、欲しがったり

自分の血を与えたり

身を焦がしたりしていたら

君は、「灰」になってしまうではないか

...彼女は何も答えなかった

彼女は突然に

想い出がよみがえることを期待していた

すでに「冬」になり

1人の男が現われて

彼女の方へと歩いて来た

彼女は両腕を広げ

男は、その中で温まった

彼女を愛撫し続けると

彼女は美しくなった

夜も昼も

熱い「愛の時」が流れた

男は、いつまでも彼女のもとに残った

男は、きまぐれではなかった

 

innocence ou demence

qui donc le saura jamais

qui donc le saura jamais?

 

「無邪気」なのか「狂気」なのか

それは誰にも分からない

それは誰にも分からない

 

puis l'hiver a disparu

les oiseaux sont revenus

il a dit "ecoute

j'entends les arbres craquer

la foret s'est eveillee

je reprends ma route"

alors, elle tendit les bras

ce fut la derniere fois

et son couteau se planta

dedans l'infidele

puis, calme, elle se coucha

c'est ainsi qu'on la trouva

morte, dans le petit jour

d'avoir trop aime d'amour

 

やがて冬は去り

鳥たちが戻って来た

「聴いて」と男は言った

木々がはじける音がする

森が目を覚ましたのだ

私は、自分の道へ戻る

それから、彼女は両腕を差し出した

それが「最後」だった...

彼のナイフが

彼女に突き刺さったのだ

静かに、彼女は横たわった

こうして、彼女は見つかった

亡くなって、朝の早くに

あまりにも「恋」を恋し過ぎたために

 

....................................

fut-elle innocence

fut-elle demence

elle est morte desormais

nul ne le saura jamais

elle est morte au petit jour

d'avoir trop aime d'amour...

 

......................................

「無邪気」だったのか

「狂気」だったのか

彼女が死んだいまとなっては

それは、もう誰にも分からない

彼女は、朝の早くに死んだ

あまりにも「恋」を恋し過ぎたために...

 

..............................................................................................................................................................................................

 

amoureuse  恋の人(1970)

 

pour toi, soudain, le gris du ciel n'est plus si gris

pour toi, soudain le poids des jours n'est plus si lourd

voila que, sans savoir pourquoi, soudain tu ris

voila que, sans savoir pourquoi, soudain tu vis

car te voila

oui te voila

amoureuse

amoureuse

amoureuse

tellement amoureuse

 

灰色の空も、いつしか、もうそんなに暗くはない

日々の重荷も、いつしか、もうそんなに重くはない

ほら、なぜだか知らずに、あなたは笑い

ほら、なぜだか知らずに、あなたは生き生きとしている

なぜってほら

そうなんだから

恋してる

恋してる

恋してる

こんなにも恋してる

 

c'est vrai alors, le gris du ciel n'est plus si gris

c'est vrai alors, le poids des jours n'est plus si lourd

c'est vrai alors, soudain tu sais pourquoi tu ris

c'est vrai alors, soudain tu sais pourquoi tu vis

car il est la

oui, il est la

amoureuse

amoureuse

amoureuse

tellement amoureuse

 

本当に、灰色の空も、もうそんなに暗くはない

本当に、日々の重荷も、もうそんなに重くはない

本当に、いつしか、あなたは笑っているし

本当に、いつしか、あなたは生き生きとしている

なぜって彼が

そう、彼がそこにいるんだから

恋してる

恋してる

恋してる

こんなにも恋してる

 

et puis, soudain le gris du ciel redevient gris

et puis, soudain le poids des jours redevient lourd

tout est fini, tout est fini, l'amour se meurt

il est parti, il est parti et toi tu pleures

et c'est fini

oui c'est fini

malheureuse

malheureuse

malheureuse

 

malheureuse

malheureuse

malheureuse

tellement malheurese...

 

そして突然、灰色の空がまた暗くなり

それから、日々の重荷もまた重くなる

すべてが「終わり」、すべてが「終わり」、恋は死に

彼は去って、彼は去って、あなたは泣くばかり

もうおしまい

そう、おしまいよ...

不幸せ

不幸せ

不幸せ

 

不幸せ

不幸せ

不幸せ

こんなにも不幸せ...

 

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(daniel-b=フランス専門)