本日も、映画史にその名を残す、この「大女優」の「訃報」が飛び込んで来ました...。

 

17日に逝去した、フランスの「伝説的」な大女優、ダニエル・ダリュー(1917-2017)。今日は、彼女について、少し書いてみたいと思います。

 

1917年5月1日生まれのダニエル・ダリューは、今年、「100歳」の誕生日を迎えたところでした。

「99歳」まで女優活動を続け、そのキャリアは何と、「80年」にもなるということでしたが、つい最近、転倒して、体調を崩していたということです。

 

ダニエル・ダリューは、ワインでも有名な、「ボルドー」の出身ですが、7歳の時に父と死別し、その後はパリで育ちました(1920年にパリへ移ったという情報もあります)。

 

1931年、仏独合作の映画「ル・バル(Le Bal)」(ウィルヘルム・ティーレ監督)の少女役に応募してみたところ、テストの翌日には採用が決まり、早速撮影に入ったということです。

その主題歌、「chanson de la poupee "人形の歌"」も歌ったことから、この映画は、「歌手」としての「デビュー」でもありました。

 

その曲、「chanson de la poupee」です。貴重な録音です。

こちらは、タイトルが非常によく似ていますが、「別の曲」のようですね...。

 

1889年に起きた、「マイヤーリング事件」をテーマにした、1936年の映画「うたかたの恋(Mayerling)」は、日本でも人気となったようです(日本公開は1946年)。この作品で、彼女は、一躍、「国際的スター」となりました。

 

戦後は、スクリーンの中で歌うことは少なくなったといいますが、これは、独立した「歌手」としての活動も始めたためです。

 

私が彼女の名を知るきっかけとなったのは、やはり、「シャンソン」からだったのですが、もう、「30年」以上も前のことです。当時購入したミュージック・カセットには、次の曲が収録されていました。

 

 

 

そう、「garde-moi la derniere danse "ラスト・ダンスは私に"」です。

 

もともとはアメリカの曲で、原題は「save the last dance for me」と言います。ドク・ポーマス(1927-91)が作詞し、モート・シューマン(1938-91)が作曲した1960年の作品で、コーラス・グループ「ザ・ドリフターズ」による「オリジナル盤」が、全米ヒット・チャートの「トップ」に輝きました。モート・シューマンにとっても、「初期の大ヒット」となりますが、その彼は、ジャック・ブレル(1929-78)とも、「深い関係」にありました。それについては、また、あらためて書くことにしましょう...。

 

この曲は、フランス語詞も付けられ、ダリダ(1933-87)が歌って、ヨーロッパでも大ヒットとなりました。日本でも、越路吹雪(1924-80)のレパートリーとしてとても有名です。私としては、この、ダニエル・ダリューのバージョンが、もっとも気に入っています。

 

1967年に公開されたミュージカル映画、「ロシュフォールの恋人たち(Les Demoiselles de Rochefort)」(ジャック・ドゥミ監督)では、主人公姉妹(デルフィーヌ&ソランジュ)の母で、カフェの女主人、「イヴォンヌ」を演じていました。彼女にも、ソロ・ナンバーがあります。

 

 

そして、何と言っても、2002年に公開された、映画版「8人の女たち(Huit Femmes)」(フランソワ・オゾン監督。元々は、1961年に初演された、ロベール・トマ作の戯曲です)。

 

この作品も、ミュージカル仕立てとなっていて、こちらでも、カトリーヌ・ドヌーヴ(1943-)他、錚々たるメンバーが歌声を聴かせてくれていますが、ダニエル・ダリューは、その「ラストナンバー」となる、こちらの名曲を歌っていました。

 

 

前日付けでも紹介した、シャンソン界の3大巨匠の1人、ジョルジュ・ブラッサンス(1921-81)の名作、「il n'y a pas d'amour heureux "幸せな愛はない"」(1953-54)です。詩人ルイ・アラゴン(1897-1982)の詩に曲を付けた「文学的シャンソン」で、とても「哲学的」な内容を持っています。

 

この映画では、ミシェル・ベルジェ(1947-92)が、フランソワーズ・アルディ(1944-)と共作し、そのフランソワーズが歌った作品、「message personnel "告白"」(1973)も歌われました。参考までにどうぞ。歌っているのは、イザベル・ユペール(1953-)です。

 

 

このように、私は「シャンソン」で彼女を知ったので、「女優」としての活動はあまり知らないかも知れません。しかしながら、「ダニエル・ダリュー」と言えば、やはり、世界的に名を知られる、「ビッグネーム」には違いないのです。

 

「80年」という芸歴。これは本当に「見事」というほかありません。

「1世紀」を生き抜いた彼女は、「歴史の証言者」であったと同時に、「生涯現役」の、偉大な「お手本」でもあったのです。

 

9日のジャン・ロシュフォール(1930-2017)に続いての「訃報」で、本当に、また、1つの時代の「終わり」を感じてしまいます。寂しい限りですが、これが「年月の流れ」というものですね。

 

あらためて、ご冥福をお祈りしたいと思います。

 

合掌...。

 

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(daniel-b=フランス専門)