本当に、「訃報」というものは「突然」です。

今回は、予定を変更いたしまして、この「名優」、ジャン・ロシュフォール(1930-2017)について、少し書いてみたいと思います。

 

ジャン・ロシュフォールと言えば、まさに、この6月から9月にかけて連載した、「パリ&ブリュッセル 第2回目(2010)の旅行記」の「象徴」とも言える、映画「パリ空港の人々(tombes du ciel)」(1993年, フィリップ・リオレ監督)の「アルテュロ」役、「その人」です。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12279827489.html(「第2回目の旅行記」その1)

 

パリ空港(シャルル・ド・ゴール/ロワシー)「第1ターミナル」を舞台に、「奇妙な出会い」と「交流」を、「ペーソス豊か」に描いた、「心温まる名作」ですが、この「アルテュロ」の役は、まさに、この人以外には「考えられない」と思います。他の登場人物も、誰もが「ハマリ役」だと思いますが、それは、この中心に、ジャン・ロシュフォールがいたからこそだとも思います。

 

この映画の「情報」「映像」ともに、現在ではほとんど「残っていない」のが残念ですが、せめて、「追悼特集」で、また「出て来る」ことを期待しましょう...。

 

日本では、盟友パトリス・ルコント監督(1947-)との作品「髪結いの亭主(le mari de la coiffeuse)」(1990年)で知られていると思います。この作品は、ルコント作品では、日本で最初に公開されたものです。私は、恥ずかしながら、この作品は「未見」なのですが、「気に入った作品」は、DVD(製品盤)で持ってもいます。

 

先述の「パリ空港の人々」とともに、DVDでも持っている作品が、そのルコント監督とのもので、「タンデム(tandem)」(1987年)です。

 

こちらも、「人生の斜陽」を描いた名作で、まさに、ジャン・ロシュフォールの「独壇場」です。彼は、こういった役を演じきれる、「数少ない俳優」だと思います。

 

かつて人気を誇ったラジオのクイズ番組「ギブアップ」は、「25年」の歳月が流れ、ついに「打ち切り」の決定が下されました。担当ディレクターのリヴト(ジェラール・ジュニョー)は、仕事に人生をかけてきたパーソナリティー、モルテーズ(ジャン・ロシュフォール)にそのことを伝えるに忍びなく、黙って放送の「まねごと」を続けるのですが...。

 

共演(ダブル主演)のジェラール・ジュニョー(1951-)は、ルコント監督自身が、その「熱狂的ファン」だという、劇団「スプランディド」のメンバーで、この映画「タンデム」でも、その演技が光ります。

 

ラストでは、「リストラされた」というリヴトが、偶然にも、モルテーズ(彼はしばらく姿を消していました)と再会しますが、この「ラストシーン」が、特に「印象」に残っています。「このシーン」のために、私は「タンデム」を思い出し、「タンデム」と言えば、「このシーン」を真っ先に思い出します。いいですよね、「変わらぬ友情」というものは...。

 

最後に挙げている動画は、「オープニング」の他、この「印象的なラストシーン」にももちろん流れている「主題歌」のものです。

 

イタリア人ながら、フランスでも活躍し、後に、あの、ミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」(1998年初演。詞は、「スターマニア」のリュック・プラモンドンです)の曲も書いた、リッカルド・コッチアンテ(1946-)が、自ら歌った作品「il mio rifugio "僕の隠れ家"」(イタリア語)です。以下の訳詞は、「途中まで」ではありますが、DVDの字幕より挙げてみました。

 

夜のとばりが下りるころ

町の学校の入り口で

君の手をとって僕は言った...

「愛してる」と

寂しい道を歩く僕らの前を

ブリキの太鼓を叩いて子供が横切った

その音が僕らの心に響く

「愛してる」と

僕の隠れ家

僕の隠れ家

僕の隠れ家

...それは君

 

きっと君も僕と同じように

心の中に守っているんだね

初めての愛の言葉

「愛してる」を

降りはじめたまっ白な雪が

街を沈黙で覆ってしまっても

僕は失くしはしない

「愛してる」を

僕の隠れ家

僕の隠れ家

僕の隠れ家

...それは君

 

劇場から出てきた人々の

煙草とバラの香りに包まれて

僕たちはキスを重ねた

「愛してる」と...

僕の隠れ家

僕の隠れ家

僕の隠れ家

...それは君

 

最初に挙げた映像の途中(1分45秒頃)にも出て来ますが、ジャン・ロシュフォールは、「その演技の向こうに見える"素顔"も、"ダンディ"で"親しみやすく"、そのことでもまた高く評価されている」のです。

 

彼の出演した「ルコント作品」でも、1996年の「大喝采(les grands-ducs)」など、長年「見たい」と思っていて、まだ見れていないものがいくつかあります。本当に、「今さら」な感じではありますが、これを機に、見れる作品があれば、また見ていきたいと思っています。

 

本日(11日)、新聞で「訃報」を知りましたが、彼、名優ジャン・ロシュフォールが亡くなったのは、8日から9日にかけての夜だったということです。

 

「10月9日」...。

この日は、ジャック・ブレル(1929-78)の命日でもあり、そのことで記事を書いたばかりでしたが、まさか、「同じ日」になるなんて...。

ブレルも、「明け方4時頃」亡くなったということですから、このことでも少し似ていますね...。

 

ブレルは、1929年4月8日生まれ、ジャン・ロシュフォールは、その「1年後」の、1930年4月29日生まれだということで、こちらも、同じ「4月生まれ」なんですね。

 

それにしても、亡くなって来年で「40周年」となるジャック・ブレルに比べ、生まれは「1年」しか違わない(=バルバラと「同じ年」)ジャン・ロシュフォールは、本当に、「長く」、人生で活躍しました。お疲れさまでした。

 

あらためて、ご冥福をお祈り申し上げたいと思います。

合掌...。

 

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(daniel-b=フランス専門)