ようやく「梅雨」も明けた北陸。3日木曜日は、この映画を見てきました。その話題を、ちょっとはさんでおきたいと思います。
http://crest-inter.co.jp/mirai/#
福井市内の名画座、「メトロ劇場」は、地方ではなかなか見ることの出来ない、「単館系」を中心に上映している貴重な劇場です。この夏は、この劇場に、久々となる「フランス映画」を見に出かけております。前回の、「午後8時の訪問者」(7/1~14)は、結局、「3回」見に行っています。(その記事は「こちら」)
http://ameblo.jp/daniel-b/entry-12289281638.html
今回のこの作品は、前回見た「予告編」の中でも、特に、「見たい」と思った作品でした(首都圏では、「3月25日」より公開となっています)。「終映直前」、まさに「ギリギリセーフ」のタイミングで、「貴重な機会」をものにする事が出来ました(上映期間は、「7/22~8/4」です)。
「フランスの至宝」とも呼ばれる女優、イザベル・ユペール(1953-)の最新主演作であり、気鋭の若手女性監督、ミア・ハンセン=ラブ(1981-)がメガホンを取った、大変「美しい作品」だと言えると思います。
このイザベル・ユペールが演じるのは、高校の「哲学教師」ナタリーです(日本の感覚からすると、もう、ほとんど「大学の講義」のようですけどね...)。
出勤して来たナタリーは、入口前で、「スト中の学生」(若者の「失業」を増やす改悪に対して)に阻まれますが、自身も、(1968年の)「5月革命」を知る者として、「毅然」と、授業を続けます。
「哲学」、「若き日の理想」、そして、「老い」...。
このあたりの「感覚」は、「現代日本」ではどうなんでしょうかね。
「お国柄の違い」と言えなくもありませんが、ともすれば、「取っつきにくい」と感じるかも知れません。
ただ、そうではあっても、見る私たちを「つなぎ留める」要素は確かにあります。フランスの、「美しい風景」もそうですし、要所要所で挿入される、「美しい音楽」もそうです。
ミア・ハンセン=ラブ監督も、自分の中に、確固たる「哲学」を持っているようで、その考え方も、「哲学者」っぽくて、おおよそ、「若者」らしくありません(失礼! 笑)。しかし、だからこそ「実現出来た映画」だとも思うのです。
この監督も「早熟」だと、やはり、こう、評したいですね。舞台は「現代」ですが、何か、1968年の「5月革命」を戦った若者が、そのまま「タイムスリップ」してきたような「視点」の作品に思えます。
イザベル・ユペール演じるナタリーは、同業の夫との「離婚」や、認知症の症状が出ていた母親との「死別」など、突然、さまざまな「試練」に見舞われます。それでも、イザベル・ユペール自身が話しているように、「ナタリーがせかせか歩くのは、彼女が常に動き回っている人間だから。困り果て、立ち止まるのではなく、動き、前に進んでいく人物だから」ということで、このタイプのストーリーにありがちな「湿っぽさ」も、あまり感じることはありませんでした。
ナタリーの「教え子」で、劇中の、実質的な相手役である「ファビアン」は、ロマン・コリンカ(1986-)が演じていますが、この方は、前回もその名を出したロックグループ「Telephone」の、ドラムス担当リシャール・コリンカ(1953-)の「息子」だということです。他にも、母、祖父が「俳優」、祖母も「監督」と、まさに「アーティスト一家」の「サラブレッド」と言えます。
ミア・ハンセン=ラブ監督の作品では、前作の「EDEN "エデン"」(2014)に引き続いての出演との事ですが、「穏やか」ながらも、どこか、「そうではない一面」も持つ、この「ファビアン」を、見事に演じてみせています。
ファビアンが仲間と暮らす、「ヴェルコール山地」の場面は、映画の種類は少し違いますが、フランソワ・トリュフォー監督の1966年の映画、「華氏451」をちょっと思い出させるところもあります。
音楽は、本当に「インターナショナル」だと思いますが、個人的に惹かれたのは、やはり、シューベルト(1797-1828)の歌曲、「水の上で歌う op,72, D.774」(1823)でした。劇中の他、「エンディング」でも流れますから、実質的な「主題歌」とも言い得ます(「アンチェインド・メロディ」の「カバー」もありますが...)。
歌っているのは、「20世紀最高のバリトン歌手」、ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(1925-2012)です。彼は、「相棒」のピアニスト、ジェラルド・ムーア(1899-1987)と、本当に「数多く」の、シューベルトの「名唱」を残していますが、これも、その1つです。録音されて「半世紀」経った現在もなお、「光り輝く」、「名唱中の名唱」と言えます。
(歌詞対訳はこちらからどうぞ)
http://www.damo-net.com/uebersetzung/schubert/d774.htm
この映画のラストは、完全なる「ハッピーエンド」というわけにはいかないようですが、これは、私たちに、ある程度、「想像の余地」を残してくれてはいます。それを、どう「解釈」するかは、個々の「判断」にゆだねられているようです...。
というわけで、今回は、イザベル・ユペール主演、ミア・ハンセン=ラブ監督の映画、「l'avenir "未来よこんにちは"」について書いてみました。
それではまた...。
(daniel-b=フランス専門)