4月8日は、シャンソン界の3大巨匠の1人、ジャック・ブレル(1929-78)の誕生日でした(岡田有希子さんの命日、高橋みなみさんの誕生日でもあります)。今回は、昨年3月30日付け(特集「春のシャンソン」)でも採り上げました、ブレル初期の名作、「au printemps "春に"」(1958)を、改めてお送りしたいと思います。
先月25日付けでは、「短いけれど、"深い" 歌」として、「litanies pour un retour "帰り来るひとへの祈り"」をお送りしましたが、まさに、その曲と同じ日(1958年4月1日。パリ・プロテスタント大聖堂)に録音された曲が、この「au printemps "春に"」です。
曲自体は、前年1957年に作られ、(録音の残っている、)10月14日、12月7日の2回の「トロワ・ボーデ」(ブレルを発掘した、ジャック・カネッティの経営するバー/レストランです)公演にて発表されました。
ブレル自身の詞・曲によるシャンソンですが、彼の歌った作品の中では、珍しいくらいに、「明るく」て「清々しい曲」であるとも言えます。まさしく、「春の解放感」に満ち溢れています。
春に 春に
僕の心も、君の心も白ワインの色に染まる
春に 春に
恋人たちは、懐かしのノートルダム大聖堂へ祈りを捧げに行く...
1958年に発表された、アルバム「au printemps "春に"」は、パイプオルガンを用いた曲も何曲か見られ、「教会音楽」をも思わせる印象ですが、「神聖」で、「厳粛」なようでいて、実は親しみやすく、デビュー当時の「grand Jacques "グラン・ジャック"」(1953-54)のような「陰鬱さ」は、もう、ここには感じられません。
後々までも歌われた、「quand on n'a que l'amour "愛しかないとき"」(1956)や、「ne me quitte pas "行かないで"」(1958-59)に比べると、やや「影が薄い」感じもしなくはありませんが、「初期」を代表する名作として、この曲も「思い出してほしい」かな、といった感じもします。
先月25日付けでも書きましたが、このアルバム当時の「編曲・指揮」は、ちょうど、「過渡期」にあった頃と言えます。全10曲中、6曲までがアンドレ・ポップ(1924-2014)の手によるもので、当時、ブレルのために曲を書いていた、フランソワ・ローベール(1933-2003)が4曲を担当しました。この「au printemps "春に"」も、彼の「編曲・指揮」によります。やがて、専属ピアニストとして、ジェラール・ジュアネスト(1933-)が加入したことにより、正式に、フランソワが「編曲・指揮」を務めることになったのでした。
ブレル自身の歌唱の他に、もう1つ、貴重な録音をあわせて載せておきましょう。
昨年8月31日付け「sur la place "広場で"」(1953-54)の記事でも採り上げましたが、1957年12月24日に、当時、ほぼ「指揮初挑戦」であったフランソワのオケで、ブレルとしては大変「珍しい」、「デュエット」の相手を務めたのが、彼女、シモーヌ・ラングロワ(1932?-)です。
彼女の、「美しく、懐かしい」ソロ歌唱をぜひどうぞ。
以下に、歌詞を載せておきましょう。
それではまた...。
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(refrain)
au printemps, au printemps
et mon coeur et ton coeur sont repeints au vin blanc
au printemps, au printemps
les amants vont prier Notre-Dame du bon temps
(ルフラン)
春に 春に
僕の心も、君の心も白ワインの色に染まる
春に 春に
恋人たちは、懐かしのノートルダム大聖堂へ祈りを捧げに行く
au printemps
pour une fleur, un sourire, un serment pour l'ombre d'un regard
en riant toutes les filles vous donneront leurs baisers
et puis tous leurs espoirs
春には
一輪の花にも、微笑みにも、誓いにも、わずかな視線にも
すべての娘たちが、笑いながらあなた方にキスをしてくれることだろう
それから、希望も与えてくれるだろう
vois tous ces coeurs comme des artichauts
qui s'effeuillent en battant pour s'offrir aux badauds
vois tous ces coeurs comme de gentils megots
qui s'enflamment en riant pour les filles du metro
(au refrain)
ごらんよ、みんなの心を まるで、アーティチョークのようだ
バタバタと音を立てながらその実を落としていく
誰にでも捧げるように
ごらんよ、みんなの心を まるで、安物の葉巻のようだ
笑いながら燃えあがる
メトロの娘たちのために
(ルフランへ)
au printemps
pour une fleur, un sourire, un serment pour l'ombre d'un regard
en riant tout Paris se changera en baisers
parfois meme en grand soir
春には
一輪の花にも、微笑みにも、誓いにも、わずかな視線にも
パリのすべてが、笑いながらキス1つで変わってしまうだろう
時には真夜中にでも
vois tout Paris se change en paturages
pour troupeaux d'amoureux aux bergeres peu sages
vois tout Paris joue la fete au village
pour benir au soleil ces nouveaux mariages
(au refrain)
ごらんよ、パリのすべてを 牧場にでも変わろうとしている
軽いノリの娘たちに夢中になっている連中のために
ごらんよ、パリのすべてを まるで、村の祭りのようだ
太陽のもとで、新婚さんたちを祝福するために
(ルフランへ)
au printemps
pour une fleur, un sourire, un serment pour l'ombre d'un regard
en riant toute la terre se changera en baisers
qui parleront d'espoir
春には
一輪の花にも、微笑みにも、誓いにも、わずかな視線にも
地球全体が、笑いながらキス1つで変わってしまうだろう
そして、「希望」について話すことだろう
vois ce miracle car c'est bien le dernier
qui s'offre encore a nous sans avoir a l'appeler
vois ce miracle qui devait arriver
c'est la premiere chance la seule de l'annee
ごらんよ、この「奇跡」を
なぜなら、去年と同じ春が
呼びもしないのに、またやって来たんだ
ごらんよ、この「奇跡」を
こうなることは「必然」だったんだ
まさに、1年に1度のチャンスなんだ
au printemps, au printemps
et mon coeur et ton coeur sont repeints au vin blanc
au printemps, au printemps
les amants vont prier Notre-Dame du bon temps
au printemps, au printemps, au printemps...
春に 春に
僕の心も、君の心も白ワインの色に染まる
春に 春に
恋人たちは、懐かしのノートルダム大聖堂へ祈りを捧げに行く
春に 春に 春に...
(daniel-b=フランス専門)