シャンソンの特集、「短いけれど、"深い" 歌」。

「第3回目」の本日は、巨匠ジャック・ブレル(1929-78)の「初期」の名作、
「litanies pour un retour "帰り来るひとへの祈り"」(1958)
をお送りしたいと思います。

1958年6月に発売された3枚目のアルバム、「au printemps "春に"」に収録されている曲ですが、このアルバムは、全体的に、「教会音楽」をも思わせる雰囲気となっています。
実際に、このアルバムの大半は、パリのプロテスタント大聖堂(「Grand Temple protestant」)で収録されていて、壮麗な「パイプオルガン」によって彩られた曲も何曲かあります。

このアルバムのオーケストラは、ちょうど「過渡期」にあった頃で、翌1959年のアルバム「la valse a mille temps "華麗なる千拍子"」より正式に「編曲・指揮」を務めるフランソワ・ローベール(1933-2003)も、ここでは、全10曲中、4曲のみにとどまりました。

そのフランソワ・ローベールとブレルが出会ったのは、「最初期」とも言える1956年の7月のことで、後に専属ピアニストとなるジェラール・ジュアネスト(1933-)よりも「前」のことでした(1957年の、「トロワ・ボーデ」での2回の公演では、フランソワがピアノを担当しています)。初の「オケ」を担当したこのアルバムでは、自身による作曲作品(ブレルとの共作も含めて)も「5曲」あり、これは、ブレルの全アルバム中「最多」となっています。そして、今回採り上げたこの作品も、彼、フランソワ・ローベールが作曲に協力し、「編曲・指揮」をも担当している曲、というわけなのです。

さて、この曲「litanies pour un retour "帰り来るひとへの祈り"」ですが、歌詞を見てみますと、すべてが、「mon, または ma(私の)~」の羅列になっていることが分かります(タイトルの「litanie(s)」には、もともと、「列挙する」の意味があります)。

最後には、「ほら、君が帰って来た...」としめますが、「シンプル」ながら、実に見事な「感情表現」、「詩法」だと思います。

この作品は、初期のバルバラ(1930-97)も採り上げていて、1960年9月に録音されたものが、現在でも残っています(2番目の映像です)。

この曲にアイディアを得たのか、バルバラは、後年の、自身の脚本による音楽劇「Lily Passion(リリー・パシオン)」(1986年1月21日から2月19日まで、ゼニット・ホールにて上演)の中の1曲、「o mes theatres "私の劇場"」を、まさに、このスタイルで書いています。

というわけで、「短いけれど、"深い" 歌」。「最終回」となる次回は、その、「o mes theatres "私の劇場"」を採り上げてみたいと思います。

以下に、「litanies pour un retour "帰り来るひとへの祈り"」の歌詞を載せておきましょう。
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mon coeur ma mie mon ame
mon ciel mon feu ma flamme
mon puits ma source mon val
mon miel mon baume mon Graal

僕の心よ 愛する人よ 僕の魂よ
僕の空よ 火よ 炎よ
僕の井戸よ 泉よ 渓谷よ
僕の蜂蜜よ 香油よ 聖杯よ

mon ble mon or ma terre
mon soc mon roc ma pierre
ma nuit ma soif ma faim
mon jour mon aube mon pain

僕の小麦よ(「財産」の意味もあり) 黄金よ 大地よ
僕の犂(すき, 農具)よ 岩よ 石よ
僕の闇よ 渇きよ 空腹よ(飢餓感)
僕の光よ 曙よ 日々の糧(パン)よ

ma voile ma vague mon guide ma voie
mon sang ma force ma fievre mon moi
mon chant mon rire mon vin ma joie
mon aube mon cri ma vie ma foi

僕の帆よ 波よ 水先案内よ 航路よ
僕の血潮よ 力よ 情熱よ 僕自身よ(「自我」とも)
僕の歌よ 笑いよ ぶどう酒よ 僕の喜びよ
僕の曙よ 叫びよ 人生よ 信仰よ

mon coeur ma mie mon ame
mon ciel mon feu ma flamme
mon corps ma chair mon bien
voila que tu reviens...

僕の心よ 愛する人よ 僕の魂よ
僕の空よ 火よ 炎よ
僕の身体よ 筋肉よ 善行よ(「幸福」などの意味もあり)
ほら、君が帰って来た...

(daniel-b=フランス専門)