この秋は、「3大巨匠」の作品を中心に、その名曲を、集中して紹介していきたいと思っています。
今回は、ジョルジュ・ブラッサンス(1921-81)の曲で、「oncle Archibald "アルシバル叔父貴(おじさん)"」(1957)をお送りします。「絵本」のような世界観を持つ微笑ましい作品で、私の「お気に入り」の作品の1つでもあります。
この作品が、現在の日本で、どれだけ知られているのかはまったく見当がつきません(5枚目となる「オリジナル・アルバム」の、タイトル曲ではありますが...)。
1957年と言えば、ルネ・クレール監督(1898-1981)の映画、「Porte des Lilas "リラの門"」にブラッサンス本人が出演し、酒場で歌う、売れない「芸術家」を演じていましたが、冒頭で歌われたその作品、「au bois de mon coeur "わが心の森には"」が特に有名です。この映画でのブラッサンスは、主役(ジュジュ役のピエール・ブラッスール)に次ぐ役どころであり、演技力もかなりのものなのですが、映画出演は、この1作にとどまりました(私は、2004年6月に、BS-2で放送されたものを、現在も残してあります)。
他にも、「la marche nuptiale "結婚行進曲"」といった曲があり、どちらかと言えば、こちらの方が有名なのではないでしょうか。
私は、1991年(没後10周年)に発売された12枚組のCD全集で、この曲を聴いてはいますが、本当に「お気に入り」となったのは、それに次いで国内で発売されたビデオ、「ジョルジュ・ブラッサンス~反骨の吟遊詩人」(VHS, 1992年2月発売)での歌唱映像からでした。このビデオは、RTBF(ベルギーのテレビ局)が制作した、シャンソン歌手のドキュメンタリー・シリーズを商品化したもので、他に、ブレルやフェレ、ピアフ、トレネ、ゲンスブールなどもあって、大変豪華なラインナップだったと言えるでしょう。
今回、その「歌唱映像」(多分、70年代後半になってからのもので、「カラー」です)を、かなりの時間をかけて探しましたが見当たらず、代わりに、「静止画」で味気ないですが、スタジオ録音のものを載せました。
以下に歌詞も載せておきます。先述のビデオの訳詞を参考にしてはいますが、映像作品で省略も多いため、補えるところは自分で補いました。この歌詞は、「韻」を踏むための繰り返しが多用されるだけでなく、文語的、口語的表現が入り乱れて書かれており、原詞の持つ「エスプリ」をうまくお伝えするのが、「意外と難しい」と感じました。
この歌詞が書かれたのは、1950年代後半のことです。時代が時代ですから、現在となっては、「古めかしい表現」、ことに、「差別的」と思われる表現も「ある」とは感じられますが、それらは、決して「悪意」から生まれたものではないことを申し上げ、そのまま掲載します。それはご了承ください。それよりも、この、「絵本」の流れのような「ストーリー」を感じ取っていただきたいと思います。
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o vous, les arracheurs de dents,
tous les cafards, les charlatans,
les prophetes,
comptez plus sur oncle Archibald
pour payer les violons du bal
a vos fetes
a vos fetes...
ああ、お前たち ペテン師
偽善者、やぶ医者、
予言者どもよ
アルシバルおじさんを、もうカモにするな
お前たちのお祭り騒ぎのために
お祭り騒ぎのために...
en courant sus a un voleur
qui venait de lui chiper l'heure
a sa montre,
oncle Archibald, - coquin de sort! -
fit, de Sa Majeste la mort,
la rencontre
la rencontre...
泥棒を追いかけているうちに
おじさんの、その(命の)時計の針は
ついに止まってしまった...
「こいつはたまげた」とアルシバルおじさん
そこに姿を現わしたのは「死の女神」だった
「死の女神」だった...
telle un' femm' de petit' vertu,
elle arpentait le trottoir du
cimetiere,
aguichant les homme's en troussant
un peu plus haut qu'il n'est decent
son suaire
son suaire...
彼女は、いわゆる「夜の女」
墓場を歩き回って
客を探していた
男たちを誘惑すべく
彼女は、死者の衣を
たくしあげていた
たくしあげていた...
oncle Archibald, d'un ton gouailleur,
lui dit:
va-t'en fair' prendre ailleurs
ton squelette...
fi! des femelles decharnees!
vive les bell's un tantinet
rondelettes!
rondelettes!
アルシバルおじさんは
からかうように彼女に言った
「どこかに行っちまえ、がい骨め」
「やせた女は嫌いだ
女はふくよかな方がいい
ふくよかな方がいい」
lors, montant sur ses grands chevaux
la Mort brandit la longue faux
d'agronome
qu'elle serrait dans son linceul,
et faucha d'un seul coup, d'un seul,
le bonhomme
le bonhomme...
その時、大きな馬に乗り、
大きな鎌を振りかざした死神が
目の前に現われた
彼女は、すかさず死者の衣をひるがえし
たったの一撃で、その死神の首をはねた
comme il n'avait pas l'air content,
elle lui dit:
ca fait longtemps
que je t'aime...
et notre hymen a tous les deux
etait prevu depuis l'jour de
ton bapteme
ton bapteme...
おじさんが満足そうじゃなかったので
彼女は言った
「ずっと前から好きだったの...」
「私たちの結婚は、
ずっと前から決まっていたことなのよ
あなたの洗礼の日から
洗礼の日から...」
si tu te couches dans mes bras,
alors la vi' te semblera
plus facile...
tu y seras hors de portee
des chiens, des loups, des homm's et des
imbeciles
imbeciles...
「私の腕の中で眠れば
人生はもっと楽になるでしょう」
「あなたが行くことになる世界には、
野犬も狼も、愚かな人間たちもいない
愚かな人間たちも...」
nul n'y contestra tes droits,
tu pourras crier:
viv' le roi!
sans intrigue...
si l'envi' te prend de changer,
tu pourras crier sans danger:
viv' la Ligue!
viv' la Ligue!
「あなたが "国王万歳" と叫んでも、
異議を唱える人なんていない
だから、堂々と言えるわ」
「もし、気が変わったとしても
何の危険もなく叫べるわ
同盟万歳!
同盟万歳! と」
ton temps de dupe est revolu,
personne ne se payera plus
sur ta bete...
les "plait-il, maitre?" auront plus cours,
plus jamais tu n'auras a cour-
ber la tete
ber la tete...
「だまされてばかりの時は過ぎ
誰ももう、あなたをバカにしたりはしない」
「雇い主のご機嫌をとることももうなくなるわ
頭を下げることも
下げることも...」
et mon oncle emboita le pas
de la bell', qui ne semblait pas,
si feroce...
et les voila, bras d'ssus, bras d'ssous,
les voila partis je n'sais ou
fair' leurs noces
fair' leurs noces...
おじさんは、思い切って
彼女について行くことにした
そうして、腕に腕を組んで、
2人は、僕の知らないどこかへ行ってしまった
「新婚旅行」で
「新婚旅行」で...
o vous, les arracheurs de dents,
tous les cafards, les charlatans,
les prophetes,
comptez plus sur oncle Archibald
pour payer les violons du bal
a vos fetes
a vos fetes...
ああ、お前たち ペテン師
偽善者、やぶ医者、
予言者どもよ
アルシバルおじさんを、もうカモにするな
お前たちのお祭り騒ぎのために
お祭り騒ぎのために...
(daniel-b=フランス専門)