ダニエル・バラボワーヌ(1952-86)を特集して書いています。
迷いに迷いましたが、このアルバム「face amour, face amere」は、「全曲紹介」をがんばってみたいと思います。スケジュールが「タイト」なこの時期、更新は「飛び飛び」になるのではないかとも思いますが、ご容赦ください(「他のテーマ」が途中で割り込むこともあり得ます)。全10曲(うち1曲は、前回紹介した「ces petits riens」です)、全3回を予定しています。
なぜ全曲紹介に踏み切ったかと言えば、このアルバム(「オリジナル」として4枚目です)には、没後30周年の現在のフランスでも、いまだに「低い評価」の声が残っているからです。
初発売当時(1979年10月)のセールスは約13万枚で、前作「le chanteur」(1978年6月)の80万超(さらに、タイトル曲のシングルは「ミリオン」です)には遠くおよびませんでした。
録音は同年6月で、曲作りも、4月から5月の「starmania」公演の合間を縫って、ということだったのかも知れません。だからといって、このアルバムが、「手抜き」だらけの、「魂のない」作品とは絶対思えません。それならば制作を見送るはずです。「人気」を決定づけるための「要請」はあったかもしれませんが...。
前回もお話しした通り、このアルバムは、「力み」や「気負い」の感じられない、ごく「自然体」の作品で、「今こそ、再評価されてしかるべき」だと、私は考えています。「新しい試み」がいくつも見られ、聴けば聴くほど「味」が出てくる、ということも、重ねて申し上げておきたいと思います。
さて、前回も少し触れましたが、このアルバムと、次のアルバム「un autre monde "もう1つの世界"」(1980年)、そして、1981年の「オランピアライヴ」には、「clin d'oeil(winkの意です)」というバンド名が記されています。その「中心」となるメンバーは、1977年の第2作、「les aventures de Simon et Gunther...Stein」以降、「固定」となってはいますが、ベース/シンセ担当のベルナール・セレは次のように話しています。
「ダニエルは、このバンドが公式に存在することを望んでいたので、"名前を付けたい"と私たちにきいてきた。
私は、自分の近所に、次のキャッチフレーズを使った広告があったのを思い出した。
"clin d'oeil"
それを提案したところ、全員一致で決定となった。
ダニエルはこのレコードの音をとても気に入っていて、
"とても洗練された、本当のバンドの音だ"と話していた」
このアルバムで、実際、最初に聴いて印象深い曲と言えば、「pauvre Bobby」(バンド"clin
d'oeil"としてのナンバー)や、最終曲「rougeagevre」といった、「暗め」の曲になると思います(この2曲は、「最終回」で採り上げます)。しかし、今一度聴き直してみると、トップの「face amour,face amere」にしても、「love Linda」(次回掲載)にしても、静かな中にもしっかりした味わいの感じられる詞・曲です。軽めの「toi et moi」や「tu me plais beaucoup」(曲はなんとカントリー風! 次回掲載)にしても、歌詞にはやはり、「ひとひねり」が感じられます。
それでは、各曲を見ていくことにしましょう。
第1曲目「face amour, face amere」は、この世の、「愛のある面、皮肉な面」ということでしょう。特に、後半の歌詞にそれが感じられます(この部分、加筆しました-3/22)。
regarde le monde
puis regarde toi
quand l'orage gronde
le soleil se noie
a chaque seconde
tu perdras la foi
a l'autre seconde
Dieu sera ton roi
c'est la fin du monde
il faudra t'y faire
sur toutes les ondes
c'est face amour, face amere
世界を見て それから君を
ひどい嵐のときには、太陽だって溺れる
1秒ごとに、君は「信仰」を失うだろう
ある時には、「神」が、君の「王」となるだろう
それは、この世の終わり 君もそれに慣れなくては
すべての波(または、「電波」)の上で
それは、愛のある面、皮肉な面
on ne refait pas l'histoire
je veux le droit au desespoir...
歴史は作り直せない 僕は、「絶望する権利」が欲しい...
chacun fait sa fronde
chacun fait sa loi
quelques tetes tombent
et l'homme a ses droits
entre dans la ronde
pour la face amour
bois la pluie qui tombe
pour la face amere
c'est la fin du monde
donnons-nous la main
la vie n'attend rien
que la mort au bout du chemin
それぞれが石を飛ばし、それぞれが「掟」を作る
いくつか首が飛んで(「死刑廃止」以前の曲です)、人は「権利」を手にする
ロンド(輪舞)の中に入って それは「愛」のある面(のため)
落ちてくる雨水を飲んで それは「皮肉」な面(のため)
それは、この世の終わり 手を貸し合おう
人生が待っているのは、行く先で待っている「死」だけ
on ne refait pas l'histoire
je veux le droit au desespoir...
歴史は作り直せない 僕は、「絶望する権利」が欲しい...
第2曲目「toi et moi」は、文字通り、「君と僕」です。詞は、「オール・ラウンダー」な才人・パトリック・デュルフィ(?-2008/2月6,15,17日付も参照してください)の手によります。軽快な作品です。
パリで 観光客たち エッフェル塔
君と僕
映画館 中華料理店
ここ とても(または「すべて」) 良い 街は美しい
君と僕
そんなことで満足しないで ほら
頭の中っていつもこんな感じ
明日にはどこかに消えてしまう
そんなことを100回は繰り返しても
僕たちはいつでも一緒にここにいる
第3曲目「me laisse pas m'en aller」は、最初のシングルカット曲で、カップリング曲は、前曲「toi et moi」でした。セールスは振るいませんでしたが、一応は、このアルバムを代表する曲で、最新のベストにも収録されています。かなり「ナイーヴ」な曲なので、好みは分かれるところでしょう。日本人の感覚からすると「まわりくどい」タイトルでもありますが、下に挙げたように、「(どうか)僕をこのまま返さないで...」なら、一番「自然」なのではないかと思います。
君が僕を好きなら それが問題なら
僕はやはり留まろう 君を愛するために
もし僕が熱を出して、君の唇の上で眠り込んでしまっても
「塩辛い」キスで、僕の苦痛は癒される
僕の涙が君を困らせるなら そこに溺れたままにはしておかないで
そして、僕のすべての苦しみが、君の存在を汚す
僕を守りやすいように 君は静かに起き上がる
どうか僕をこのまま返さないで...
君の苦しみの前に 僕は「権力」を夢みる
また雨が、僕の靴を濡らし始める...
僕が泣き始めたら、僕を見ることは「禁止」だよ
次回は、「love Linda」「tu me plais beaucoup」「dancing samedi」の3曲を紹介します(第6曲目「ces petits riens」は紹介済みです。軽く触れるにとどめます)。
(daniel-b=フランス専門)