ダニエル・バラボワーヌ(1952-86)を特集して書いています。

「ベルリンの壁」をテーマにした、この意欲的なコンセプト・アルバム「les aventures de Simon et Gunther...Stein」は、1977年4月の発表です。バークレー社と契約してまだ2作目。ダニエルは、2月に25歳になったばかりでした。

このアルバムの制作にあたっては、「商業的にダメ」「24歳の若者がこんな作品を作るものじゃない」と、誰もが反対したそうです。ただ1人、「最大の」理解者であった副社長、レオ・ミスィール(1925-2009, ダニエルをスカウトし、様々なサポートをした、「大恩人」とも言える人物です。2月5日掲載分をご参照ください)を除いては...。

前編の最後は、兄のシモンが、ついに、「東側からの脱出」に挑むところまででした。(「les aventures de Simon et Gunther...Stein」)はたして、その結末は...。

pres du mur
assis sur le cote
ma tete dure
rampait encore
au pave lustre
je le savais
j'arriverais

「壁」のすぐそばで腰を下ろす
頭が痛い...
光沢のある敷石の上を這い続ける...
わかっていた...もうすぐだ...

mes chaussures
me faisaient mal aux pieds
mes mains si sures
creusaient encore
vers la liberte
quand ils ont tire
sur mes idees

靴はこの足を痛くする
僕の手は、確かに掘り続ける
「自由」へと向かって...
僕の「思い」に彼らが発砲するとき...

lady Marlene
toi tu t'endors de l'autre cote
lady Marlene
a Berlin tu sais rien n'a change
c'est bien difficile de s'evader
les hommes en vert ont...

レディ・マルレーヌ
君は「向こう側」で眠っている
レディ・マルレーヌ
わかっているだろう ベルリンは何も変わってはいない
抜け出すことはとても難しい
「緑色の服(軍服)」を着た男たちが...

pres du mur
vide sur le cote
ma rage mure
s'est effondree
au bord du fosse
je le savais
j'y resterais

「壁」のすぐそばで...「気力」も尽きてしまった
激しいばかりの欲望も崩れ去ってしまった
その「堀」のすぐそばで...
わかっていた...「ここ」に留まるしかないのだろう...

lady Marlene
toi tu t'endors de l'autre cote
lady Marlene
a Berlin tu sais rien n'a change
c'est trop difficile de s'evader
les hommes en vert ont...tire...

レディ・マルレーヌ
君は「向こう側」で眠っている
レディ・マルレーヌ
わかっているだろう ベルリンは何も変わってはいない
抜け出すことは「あまりにも」難しい...
「緑色の服(軍服)」を着た男たちが...「引き金」を引いた...

このアルバムの代表作「lady Marlene "レディ・マルレーヌ"」です。
最新のベストでも「トップナンバー」となっています。
ここに上げた映像かどうかは定かではありませんが、自宅のテレビで、この曲を歌うダニエルを見たミシェル・ベルジェ(1947-92)が、彼(と、このアルバム)をとても気に入って、当時探していた、「starmania」の主人公ジョニー役のオファーをすぐさま出したという話をこれまでにも書いてきました。このアルバムは、確かに「商業的」には散々で(それでも約23,000枚ですが...)、次回作が「正念場」という、厳しい状況に追い込まれましたが、「天(運)」は彼を見放しませんでした。

この次の曲「lettre a Marie "マリーへの手紙"」は、その時、壁の「西側」にいて負傷した弟のグンターの歌だと解釈できます(兄シモンは「東側」で射殺されたとみるのが、現在の一般的な解釈のようです)。

悪夢ももう終わった。「壁」と「忘却」の狭間で、音楽とともに生きる。再び旅にも出られるだろう。今日、僕は傷が癒えた...。

この2曲は、このアルバムの「白眉」とも言えます。とても見事な、感動的なクライマックスを作り上げています(この次の、「ma musique et mon patois」という曲が「エンディング」です)。

このアルバムを、「劇」として上演したい意向もあったようですが、それはついに叶うことはありませんでした。

「ベルリンの壁」は、彼の死後3年経ってようやく開放され(1989年11月9日)、翌年10月3日には、ドイツが「再統一」されました。これを見ることなく世を去ったダニエルは、今、どのような心境なのでしょうか...。
(daniel-b=フランス専門)