ダニエル・バラボワーヌ(1952-86)を特集して書いています。
前回紹介した曲「vendeurs de larmes」は、文字通り、「涙を売る男」ということです。
ああ、魅惑の歌手たち(chanteurs de charme)よ。俺たちの妻を返せ...。
ああ、涙を売る男たち(vendeurs de larmes)...。
ああ、闇の商人たち(trafiquants d'armes=武器の闇商人)...。みんな、闇の商人たち...。
つまり、1978年の大ヒット「le chanteur "歌手"」のアンチテーゼでもあるわけで、妻の心をとらえて放さない「歌手」たちを皮肉った内容でした。これは「斬新」な発想でもありました。何しろ、自分の存在意義すら否定しかねないのですから...。
アルバム「vendeurs de larmes」は、多分に「実験」的な要素も感じられ、それが、これまでのアルバムとは違うテイストに思える要因でもあります。
第1曲目の「pour faire un disque」は、わずか1分30秒(13行)の曲でありながら、「1枚のアルバムを作ることとはどういうことなのか」をしっかりとまとめ、「そう、それは、人生そのもの」と結んだ、とても「深い」作品です。続く「vivre ou survivre」もシングルカットされた名曲で、これも彼の「死生観」が感じられる作品です。全編通して「不安」を煽るようなメロディは、「当時の流行」と言えなくもありませんが、とても力強くて美しいものです。
「viens danser」「la danse」も特筆すべきナンバーです。戦場で弾を避けるさまが、まるで「ダンス」のようだと、当時の情勢を、痛烈に皮肉った作品です(「la danse」は、「viens danser」から転調して、引き続き演奏されるインストゥルメンタル曲です)。
そしてこの曲「souleve-moi」(国内盤では「助けを求めて」のタイトルでした)は、3枚目のシングルカットとなった力強いロック・ナンバーです。「夜の女」との出会いをテーマにしているものの、「まどろんでいる独裁には注意しろ」「物事の裏側を絶対忘れるな」など、かなり「硬派」な内容です。スタジオ盤も、丁寧な音作りが魅力的なこの曲ですが、この、1984年のパレ・デ・スポールでの「燃えるような」絶唱は一聴に値します。ただ、この曲は、2枚組の「全集版」でしか聴くことができないのが残念です(通常の1枚ものではカットされています)。ちなみに、このライヴ、次の曲が「revolucion」。終盤の大盛り上がりに突入です。
(daniel-b=フランス専門)