この冬(2016年)に没後30周年を迎えた歌手、ダニエル・バラボワーヌ(1952-86)を特集して書いていますが(2月5日は誕生日です)、今回も、「ラストアルバム」となってしまった「sauver l'amour"愛を救う"」(1985年10月発売)より、代表作の一つ「l'aziza "ラジザ"」を紹介したいと思います。

ダニエルが妻としたコリンヌは、ユダヤ系のモロッコ人との記述がありますが、ダニエル自身「アラブびいき」と語って、人種差別主義者と、テレビ番組で討論もしました。また、1980年3月には、これもテレビの生番組で、当時大統領候補だったミッテラン氏を前に、「若者の不安や権利」について熱っぽく語ってもいます(この映像は、DVDにも収録されています)。これらのエピソードが、ダニエルの「熱血漢」ぶりを物語っています。

ダニエルとコリンヌとの間には、1984年生まれの長男ジェレミーと、ダニエルの死後生まれた
(6月1日)長女ジョアナの2人の子どもがいます。

「l'aziza」とは、アラビア語で「いとしい人」のことだそうです(朝倉ノニーさんのブログを参照しました。歌詞対訳も上げてくださっています)。コリンヌの愛称は「ココ」ですが、その上にさらについたあだ名が「ラジザ」なのです。この曲は、このアルバムの中ではまだ明るく爽やかな曲と言え、最も気楽に聴ける曲とも言えます。ダニエルは、当時の最新メディア、CDの登場に合わせて、最新の電子機器「Fairlight CMI」を導入していて、フランスの「エレクトロ・ポップ」のさきがけともなりました。

この映像は、公式のMVですが、テレビでの収録映像もいくつか残っています。最後のテレビ出演となった1月4日のものも、映像商品化されています。

フランス・ギャルの曲「evidemment」(ミシェル・ベルジェ詞曲)は、ダニエルの追悼曲で、「ココへ」のただし書きがあります。さらに、ミシェルとフランスの最後のデュエット・アルバムの中の「la lettre」には、「ココへ。続きと終わり」と記されています。
(daniel-b=フランス専門)