ナルニア国物語 第2作「カスピアン王子のつのぶえ」を再読 | おだんご日和

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Dango茶屋・いちのせの徒然記

 

 

 あれ?こんなだったっけ?・・・というくらい、思い出補正していた。

 

 謎解きの要素や、歴史ドラマ的な面白さはあるけれど、あまりスムーズに物語が進行せず、ごつごつとひっかかりながら進んで行く印象が残りました。主役の子どもたちも前作ほど主体的に動いていないような気がします。
 物語の展開も、ちょっとぎこちないような・・・それでも結局、最後まで楽しく読んでしまったけれど。

 

 あと、バッカス神が登場した場面での女の子二人の発言が意味深で良かったです。引用します。

 

『カスピアン王子のつのぶえ』より

「アスランといっしょでなかったら、バッカスやそのおとめたちと出会って、わたしたち、なんともなかったかしら?」
「きっと、たいへんなことになったわね。」とルーシィがいいました。

 

 たいへんなことって、どういうことだろう?バッカスは酒の神だから酔っぱらったのだろうか?それとも・・・さらっと書かれているけれど、何となく不穏なセリフです。

 

 そして、第2作の時点で、最終作『さいごの戦い』につながるセリフがあり、感心しました。
 ナルニアの動物には、知性のある「ものをいうけもの」と、いわゆる野生の「ふつうのけもの」がいます。森の中で熊に出会い、それが「ものをいうけもの」なのか、「ふつうのけもの」なのか、迷ってしまい、弓が引けなかった、というエピソードの後にある、ズーザンとルーシィの会話です。以下に引用します。

 

『カスピアン王子のつのぶえ』より

「わたし、すごくおそろしい考えが、頭にうかんできちゃったのよ、スー。」
「なんなの?」
「もし、いつか、わたしたちのあの世界でよ、人間の心のなかがすさんでいって、あのクマのようになっても、うわべが人間のままでいたら、そしたら、ほんとの人間か、けものの人間か、区別がつかないでしょ?」
「このナルニアでは、今げんに、心配しなきゃならないことがいっぱいあるのよ。そんな想像のひつようないわよ。」と、じっさい的なスーザンがいいました。

 

 このルーシィの問いかけと、スーザンの答えは、この時点では二人のキャラクターを対比させる、ちょっとしたコミカルなやりとりでしかないのですが、やがてシリーズ全体のテーマの一つになって行きます。