「おとうさん」
モノクロ実写。劇映画。50分。
(あらすじ)
工場長をしていた父が定年退職した。
「やっとのんびり暮らせるじゃないか」と同僚たちは歓迎するが、父はなぜか工場の夜間警備員をしたがり、なんとしても会社に残ろうとする。
給料はいらないとまで言うので、人事担当も仕方なく警備員を任せることにした。
その夜、父は街で若者のケンカを止めて、殴られていた若者の身柄を引き受けてしまう。
その上、若者を工場の警備員に誘う。
父には、二人の娘がいる。
姉夫婦は父に借金をしているが、親兄弟の間柄で利息まで支払わせている父を陰で非難している。
工場の事務に勤めている妹は、夜間警備をしている父を恥ずかしく思っている。
家族も、父の行動の意味わからずに戸惑っていたが、やがて父の意図が明かされる。
若者は昔一緒に働いていた社員の息子で放っておけなかったのだ。
借金は姉夫婦の名前で貯金してあり、倹約の大切さを教える為であり、夜間警備を引き受けたのは、工場を愛して心配していたからだった。
そして、訪米で席を空けていた社長が家に訪ねてくる。
社長は、父の指導がなければ工場が立ち行かないと訴え、会社へ戻るように懇願するのだった。
(感想)
これが松竹映画なら、なんてことない人情映画なのでしょう。
しかし、当時これが教育映画として制作、上映され、多くの人を教育したと考えると微妙な気持ちになります。
「父の言うことには黙って従え」「会社を愛せ」「定年しても働け」などなど、現在の視点では両手をあげて賛成するわけには行かない価値観が示されています。
また最近は、知恵者としての力より、単なる安い労働力として期待されがちな定年退職者の現実を考えると…どうも落ち着かない気分になる作品です。
この父のおせっかいと寡黙の為に、迷惑を被った人も実はいるんじゃないのだろうか…。