本当は、
「家まで送って行きますよ?」
と、何度も誘ったのだけれど
「いいって。無事に帰らなきゃいけないんだから、遠回りなんかすんなよ。ホントならヤグチが送ってってあげたいぐらい。」
と、矢口さんは頑に断る。
「本当にいいんですか?ウチら平気ですよ?」
「いい。タクシーで帰る。」
矢口さんを家まで送っていってあげたかった。私の運転で。
梨華、矢口さん、ごっちん、そして自分。生きて行くうえで優先順位をつけなければならないのは仕方のないことだけれど、それはほんとうに辛く悲しい事だ。
「じゃ、せめて駅まででも‥。」
あくまでも笑って拒む矢口さんを私は無理矢理座席にのせた。ナンバーも、しっかり変えられている車。けれど間違いなく私の車。
結論からいえばその外出は滞りなく終わり、私達は真希ちゃんの元へ無事帰り着いたのだけれど、特筆すべきことがあるとすれば帰り道、検問をやっていたことだ。
「梨華ちゃん、やべぇ!」
と、思った時には既に遅く、私達の2台先ではもう審問が始まっている。
「や、ちょっ、なにこれ?」
「怖え~‥!」
今から逃げても逆効果。必ず捕まってしまう。
「どうしよう!?」
と、2人して青い顔でジタバタしているうちに、若いカンジの女性警官が2人、コツコツとこちらに近寄って来る。その髪の長い方の合図に従い、私はドキドキしながら窓を開けた。
「シートベルト、良し。お手数ですが、免許証を拝見。」
「ハイ‥、」
低いのに、どこか明く響く声に好感を覚えながらも私はぎこちない手付きで免許をさし出す。
緊張しながら待っていると、女はいきなり笑い出した。
「ギャハハハハハ。なにこれマジ!?ちょっと来て~~~!!」
そう言って、車の後ろに回っていたもうひとりの仲間を呼ぶ。
ハッとして私は顔を上げた。そう言えば‥、その写真‥。
Part75へ