「ハイ。じゃあ明日、7時に。」
そう言って電話を切ったあと、私は理由もないのに、辺りをそっと見回した。
誰もいない。梨華ですら。あたりまえだけど。



なんとなく一人になりたかったから、私はわざわざ和室の階の、誰もいない洗面室で話していたのだ。

(明日はタクシーで行こう。それも何台も乗りかえて。ココの裏口まで、呼んでもらえば-----、てゆうか自分で呼べばいいか。できる事は自分で。)
ここの車を使わせてもらうのも、なにかと都合が悪い。


タクシー代はどうしても真希ちゃんに借りることになるし、別にこのハナシを梨華はおろか、真希ちゃん、加護、あと教団の人たちにだって特に内緒にする必要はないのだけれど、私は電話中なぜか背筋をまるめ、手で通話口を覆って話した。そしてそんな自分の姿が豪華な洗面カガミに映ったりしたので、我ながら少し可笑しかった。


梨華は連れて行く。2人で行くのはもしかしたら目につきやすくて、より危険なのかもしれないけれど、でも万が一、ひとりで行ったうえに何かが起こって、離ればなれになってしまう方がもっと嫌だからだ。


これは脱出じゃない。大好きだからこそ、ほんのちょっとの間、出てくるだけなんだよ。

オオゲサか。ゴッチン。



Part60へ