矢口さんからの連絡が再び入ったのは、前回の電話からだいたい半月が過ぎた頃だった。
「もしもし?」
と言った声はいつも通り高かったが、少し掠れていた。忙しくて疲れているのかと思ってそう尋ねたけれど
「風邪気味だったんだよ、でもそんなに重症じゃない。」
と言って彼女は笑った。


「とりあえず、時間があいたから、預かってたモノ、渡そうと思う。急で申し訳ないんだけど、明日は、どうかな。出て来れる?」


上手くいけば明日、私達は荷物を受け取る事になるわけなのだけれど、中でももっとも場所を取る車については、前もってあらかじめ、真希ちゃんに聞いておいた。


「ねえごっちん。車を、さ。保田さんから買った車‥、ココに持って来たとして、置き場所とか‥、ある?」
「お、とうとう来るんだねー。いいよ。地下に駐車場があるからそこに置けばいいよ。広いよ~?5台でも10台でも。」


ごっちんというのは、あの翌日に決まった呼び名だ。ごっちん‥、ゴッティソ‥。
真希ちゃんにとって、『真希ちゃん』、そう期待を込めて呼ばれるのは、あまり嬉しいことじゃなかったみたいだ。それはつまり親近感の問題らしかった。



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