ある朝、食事を済ませた私達がいつものように上層へ上がると、真希ちゃんはもう起きていました。壁紙の部屋の真ん中で、寝転んで本を読んでるんです。
「おはよう。」
って、ひとみちゃんが声をかけると、うつ伏せのまま顔だけ上げて、
「おはよう。」
真希ちゃんはやわらかく笑いました。


「何読んでるの?」
私が覗き込むと、真希ちゃんはぼーっとしたカオで手もとの表紙を確認して。
「んー‥、『智恵子抄』‥。」


TVなどから受ける印象とは違って、とても予想外だったけれど、実際の真希ちゃんは普段から、本をよく読む子でした。
それこそ一日中ずっと、というわけでもないけれど、一日のうち決まって数時間、かならず読書をしています。感心した私はいつだったか、一度聞いてみた事がありました。


「ほんとうによく読んでるよね。」
真希ちゃんはその時も本を、片手に持っていて。
「ま、でもコレはマンガだよ。」
「何?」
「スケバン刑事。」


「真希ちゃんが本好きだなんて、私、意外だったな。」
「うん、最近ね。なんかちょっと、世の中をいろいろ知りたいなー、なんて。」


真希ちゃんは、あまり積極的に自分のコトを話さないから、ちゃんとハナシをしたのって、あの時がたぶん最初でした。
真希ちゃんは、もう
「派手に遊びに行ったりするのは、さんざんやり尽くしたからイイ。」
のだそうです。自信に満ちた横顔は、とても大人びて見えます。
「そうよね、まさにそんな感じ。」
私はヘンに納得してしまった。だって今みたいな真希ちゃんの雰囲気って、ちょっとやそっとじゃ出せそうにないもの。



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