私たちから見て上の、加護亜依が立つ踊り場と、私達がいるフロア、その2点間をつなぐ階段に派手な靴で一歩踏み出す前に、加護は一瞬だけ、本当に一瞬の間だけ動きを止めた。

感情の読み取りづらい、ついさっき聞こえた伸びやかな嬌声とはまったく裏腹でずいぶん日常的な目をして、4,5メートル上方から私達を一度見たのだ。


やがて、
「この辺やったとおもうんですよぅ~。」
と、また素っ頓狂な声で叫びながらすぐに段差を下りだしたが、けれどもそのごく普通の視線が、今度は私のみを向いていた。


その後すぐ、もたついた足音を響かせ茶色い革靴と紺色の制服が踊り場の手すり越しに複数現れたのだけれど、彼ら制服警官たちの姿が完全に露出する前に、私は拳銃をカバンにほうりこんでいた。それまで放心しきっていた私だったけれども、加護亜依に見つめられたことによって我にかえる事ができたのだ。


私たちを追い回していた男達はいつの間にか姿を消していた。本当のことをいうと私達はその時、奇妙な格好をした加護が期待をした救いの舟であると、まだはっきりわかっているわけではなかった。目の前を大げさな身振りでちょこまか動き回る少女と、律儀にもそのあとをいちいちついてまわる人のよさそうな警官2人を只、梨華とともに見守るばかりのありさまだった。


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