すると梨華は、ゆっくりと頷くような動作を繰り返しながら、まるで自分自身に言い聞かせるみたいに、穏やかな口調で話し始めた。


「私が、もし‥。もっと力とかあったらさ、あんな男なんかに、簡単に‥連れてかれたりしないのにね‥。そうしたらひとみちゃんも、ヒト撃ったりしなくて、済んだかのも知れない。」
「どうかね‥。でももう仕方ないよ。やっちゃったんだもん‥。」


傍らにあるカバンには、中に拳銃が入っている。取り出して一度、その存在を確かめたい衝動にかられたけれど、その一方でなんとなく怖く、私は結局、カバンの肩ひもを少し引き寄せただけでやめた。


「金髪の男がりかっちをひっぱって行く時、なんか、言ってたけど‥。あのコンビニの帰り‥、やつらに、何かされたの?」
「後をついてきたの‥。金髪の人、ひとりだけだったけど‥。いろいろ、話しかけたりしてきて‥。私の名前も知ってて‥。怖くなって走ったら、つまづいて、転んだ。
『大丈夫?』なんて、‥ニヤニヤ笑いながら手を差し出してきたけど、気持ち悪いし振り払って、夢中で家まで走ったの。男は家の階段の手前まで追いかけてきて‥。私は階段を急いで上ったけど、なんか、それ以上、ついてくる気配がなかったから、途中で下を見て確認した‥。そしたら近くの電柱の脇を、金髪は、のんびり歩いてた。口笛吹きながら。」


「そうだったんだ、あの時‥。」
相槌を打ちながら私は、店に来たことのある顔をできるかぎり思い出してみた。けれども彼ら3人は、見覚えのない顔だった。


開襟シャツの男は今日、最寄りの駅についた時から私たちのそばにいた。
梨華の話と考え合わせると、彼らは私たちの住所を確実に掴んでいる。名前も知られているし。


開襟シャツの、リーダーっぽい男はともかく、若い男2人はやっぱり警察なんかじゃない。
そう私は思った。見た目は明らかに街のチンピラふぜいだし、金髪の方は朝方梨華に近づいたりして、行動の仕方も明らかにおかしい。
そうなると、そんな2人とつるむ開襟シャツの男も警察とは考えにくい。
すると、誰?


はっきりした見当は、まったくつかなかったけれど、とにもかくにも、非合法的なニオイが、ぷんぷんと漂っていた。


「あ。てゆうかさあ。」
しばらく考えているうちに、私はふと思い出した。言いたい事があったのだった。
「なんで言わないの!?そんなことがあったならもっと早く?」
「だって怖かったんだもの‥。」
申し訳なさそうに、梨華は肩をすぼめる。

Part31へ