しかし。答えはしばらくなかった。予想外。考え込んでいるのか。それとも眠っている?
「矢口さん。」
「だめ。」
ほぼ同時だった。返事を待ち切れなかった私が再び口を開いた時だ。焦れた様子の私の声に矢口さんがかぶせて言った。それにつけても私はひどい鼻声なのだった。
「なんで?」
「早く寝なよ。」
「いいじゃないですか。」
「もうなんなの?どうしたいの?」
「わから、ないけど。」
「早く寝なってば。まだ声が震えてるよ?ヘンな声。」
そもそも返事をしてもらってる事が嬉しい、眠れない私。
「さっきまで泣いてたくせに。」
なかなか引き下がらなかったから、矢口さんはとうとう言った。
「つーか。ヤグチの事一番好きな人とじゃないと、ヤグチはそういうのしないんだけど?それに------。」
「ハイハイ知ってますよ。眠れなかったからちょっと聞いてみただけですよ。」
珍しく真剣になった矢口さんが愉快だった。すっごい遊んでるフリして意外と真面目なのを私は知っている。
フフフフ。
笑う私に矢口さんは呆れ顔。その後、少しからかう口調。
「じゃあ、明日。梨華ちゃんに電話しなよ?自分でかけてよね。」
「いいですよ?できますとも。」
「言ったね?」
「余裕です。」
矢口さんが、結婚する‥。
長く回想している間に梨華はシャワーを浴び終えて、寝仕度を整えたようだった。私は目を閉じていたから、私が眠っているものとてっきり思ったんだろう。物音を気にする様子で静かにベッドに近付き、上がけをそっとめくった。
「りかっち。」
「きゃ‥っ!」
端から驚かすつもりで、突然私は声をかけたから、案の定彼女は小さく、かわいい悲鳴を上げた。てゆうか大・成・功。
「起きてたんだ。本当にびっくりしちゃった。」
「まあね。」
ベッドに入った梨華に私は腕を伸ばし、そのまま、半ば抱きつくようにしながら、もぞもぞと距離を詰めていった。
梨華は軽かったし、私もなかなか動いたから、2人の間に空いた距離などあっという間に縮まった。
「明日さー‥。てゆうか今日起きたら。行ってみようと思うんだよね。」
私は少しも笑わずに言った。
「矢口さんの家?」
「うん‥。仕事、明日ないし。携帯にさっき電話してみたけど‥、やっぱりでなかった。一応メール、入れたけどさ。」
「なんて?」
「まあ、それはいいとして。」
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