晴れ、時々くもり。 または…大雨。

ひとつの命を家族でお見送りした次の日
ワタクシの中の月が満ちた。

なんとも言えない寂しさを抱いた夜が明けた頃
それまで感じた痛みとは異質のものを
お腹に感じる。
やがてそれは規則的になる。

本陣痛だ。
今のところ10分おき。
病院に連絡を入れると
朝ご飯を食べてからゆっくりといらして下さい、
お待ちしていますと言われたので
子供たちを起こしてのんびり準備するのを待ち
家族全員で家を出発。
途中でマクドに立ち寄り
朝ご飯を車の中で陣痛の波の間に頬張りながら
病院へ向かう。
この時すでに5分おきの陣痛。

病院に近づいた頃には時折3分おきで入る。

病院に到着。
ちょうど診察時間が始まったところ。
いつも通りに受診を待つ。

すぐに看護婦さん達がふたり出てきて
『陣痛の方はどうですか?』と声をかけてきた。

『3~5分おきで来てます。』

陣痛の波が引くのを確認して歩いて診察室へ。
まだこの時は波の間には自力で動ける余裕があった。

さて…入院だ。





晴れ、時々くもり。 または…大雨。

家の中よりも涼しい所がいいだろうと
バルコニーの庇の下にベッドごと彼を眠らせた。
そこで彼の身体をコームで綺麗にしてやる。
生前彼のお腹にたくさんいた蚤たちが
一斉に彼の顔に集結していた。
餌を求めて新たなところへお引越しをたくらんでいるのか。
丁寧に梳いて退散願う。

真新しいバスタオルにくるんでやり
軽く掃除したベッドに戻す。
気持ちよさそうに眠っている彼。

ダンナがペットの火葬車を手配し
家に来てもらうことになった。

ダンナが花を買いに行き
ワタクシは生前彼が好きだった煮干とサイエンスダイエットのドライフードを
OPP袋でパッケージしてやる。

火葬車は昼過ぎにやってきた。
一見ただの大きなワゴン車という感じで
中はスモークばりになっているので見えない。
天井には排気口が短い煙突のように飛び出しているのが
唯一変わったところ。

担当の3,40代の男性は
タオルにくるまれて眠る彼を見た。

『この猫ちゃんはお若かったのですか?』

『いえ、かれこれもう20歳を過ぎてて…。』

『そうは見えない毛艶ですね。
穏やかなお顔ですね。最後はあまり苦しまなかったのですね。

…それでは準備が整いましたので
車の方へお願いします。』

車の後部のドアが開けられ
そこにはいつか斎場で見たような火葬用の小さめの装置があった。
ダンナがタオルにくるんだ彼を横たえ
その脇に煮干とドライフード、それに花束を添えた。

『それではこれから』と担当の男性は丁寧に合掌し
火葬機に収めていった。

窓から見える車の煙突からゆらゆらと立ち上る煙とも言えない空気を
家族で眺めていた。

それから一時間後に呼ばれていくと
綺麗なお骨がそこにはあった。
傍らには炭化した煮干とドライフードも残っていた。

家族で交代しながら収骨させてもらい
わずか10センチ足らずの骨壷に彼は収まってしまった。

長女がコルク栓のついた小さな小瓶に
お骨を分けてもらい大切そうに抱えていた。
骨壷は今はお仏壇に安置してある。
そのうちお世話になっているお寺の納骨堂に収めようかと
考え中。

慌ただしくはあったのだが
こうして無事に彼の旅立ちを見送ることができた。

ワタクシは彼に依存するほどではなかったのだが
やはり生活の中に20年も彼の存在は確かにあった。
何か手持ち無沙汰になったときは
眠ってる彼にちょっかい出してみたり
餌をねだって足元にまとわりつく彼を踏んづけて怒らせてしまい
逆ギレしてみたり
ふとした時に彼に触れていた。

結婚したのは18年前だったが
それ以前から独り住まいのダンナの家に行き
そこで若かりし頃の彼によくじゃれて噛まれた。

またある時は小さな軽自動車に彼とケージ、トイレを積み
ひたすら国道で京都から鳥取まで行き
ペット同伴OKの温泉宿に泊まり
そこに嫌がる彼をペット風呂に浸けたこともあった(爆)

小動物に過ぎないが
やはり一緒に過ごした20年は大きいな…。
金魚が亡くなってしまったというのとは違う。
(亡くなっていった金魚君たちには申し訳ないが。)

今もまだ実感が持てず
主のなくなったベッドをふと振り返る。

えっと…どこ行ったっけ?と一瞬思うが
しばらくして彼の存在はもうないことを思い起こす。
当分このクセ抜けそうになさそう。

ダンナはお腹の子は彼の生まれ変わりだと言う。
また火葬車の男性が言うには
お産に関わる悪いものを彼が引き受けて逝ったのだとも。

この日はずっと雪。
この雪の中彼は煙とともにどこまで昇っていけただろうか?
…合掌。







晴れ、時々くもり。 または…大雨。

ワタクシはまだまだおうち…。
昨日なんざは強めの前駆陣痛に振り回され
ダンナの仕事を休ませてしまった。
これじゃあ狼少年だ(凹)
しかし、彼がお休みに踏み切ったのは
もう一つワケがある。

昨日の一時間後、我が家のおぬこ様が旅立った。

昨日は義兄の家にご挨拶に行ったのだが
その前に朝ずっとペット用ベッドから動かず
いつもよりもおとなしめの彼が随分気になった。

その前の日なんか昼夜構わず激しく鳴き、それが深夜も。
しばらくロケみつの特番を見ながら結局朝の3時くらいまで
彼にお付き合いしながら時折彼に声かけしながら過ごしていた。

その時とはうってかわっての次の朝の彼の様子だった。

夕方、帰ってみて彼の様子が急変していた。
ベッドから一歩出たところで彼は身体を横たえ
激しく痙攣していた。

時折激しく泣き
また身体を動かそうとしている。
これはもう持たないなとすぐわかる様子だった。

これでは長時間水分のひとつも摂ることができなかっただろう。
鼻は渇ききり、埃まみれになって真っ白になっていた。
粗相防止のおむつも全く濡れていずもはや排泄すらもしていない。
せめて一滴でもと思い、スポイトで少しずつ水分補給してみる。

『もういい、無理して動かなくていい。』と
家族で交代しながら痙攣が続く彼の身体をさすってやり
夕食時には家族で囲むテーブルの椅子のひとつにベッドごと彼を載せ
様子を見ながら食事をとった。

せめて今夜こそはと
ダンナはワタクシたちの寝室にベッドを運び
ワタクシたちのベッドの真横に置いて
オイルヒーターを引き寄せた。

最初はダンナが彼の横に寝ていたが
途中からワタクシが彼の横につき
ウトウトしながら彼の様子を見ていた。

いつの間にか彼はベッドから出た床の上にいた。
しかしながら立ち上がることもできず
彼がもがくたびにどんどん後退していくのみ。
ベッドに戻し彼の身体をさすりながら睡魔と戦う。

3時を過ぎた頃だろうか
痙攣はほとんど起こらなくなり
その代わりに彼の呼吸の回数が落ちてきた。
30分ほどしてその呼吸もなくなる。

お腹のあたりを触っていたらしばらくは脈があるように感じていたのだが
それすらも感じられなくなった。
最後は穏やかな感じだった。

まだ夢うつつなダンナを起こし
明かりをつけてみると彼は眼を開けたまま旅立ったところだった。
見開いたグリーンの眼が透き通っていた。
ダンナは彼の眼を閉じさせ
身体を丸めて形を整えてやる。

そうしてみると亡骸というよりは
まだ穏やかに眠っているように見える。

しばらく彼の様子を眺めながら
ダンナとワタクシは眠りに堕ちた。

しばらくして目を覚ましたが
以前眠ったようだったが状況は変わらなかった。
むしろ死後硬直で彼の身体はしっかり固まっていた。

ダンナが階下へ彼を連れて行った。
この朝外は雪…。
なんだかワタクシたちの心情を表すかのように
静かに雪が降っていた。






晴れ、時々くもり。 または…大雨。

年明けて今日はすでに3日。
かなり長く続く前駆陣痛に悩まされつつ
大人の事情で産んでいい時期に突入。

元旦はダンナが泊まり勤務のため
ひたすら安静に。
彼が不在のため
日中はほんの数品のおせち料理とお雑煮ですませ
夜は何を食べようと思ったとき
ふと産前に辛口カレーが食べておきたくなった。
ワタクシのひとことでお子達もカレーモードになり
気がついたらみんなでレトルトカレーを食べていた。

とりあえず大辛のレトルトカレーで産前最後かもしれないカレーを堪能。

翌朝は彼が朝に帰ってくるので
安静モードは解除。
朝から家事を普通にしていると
前駆陣痛の波が不規則にやってくる。
いいぞ~☆

洗濯、簡単な掃除を済ませ
お雑煮の追加を作り
大晦日に届いた毎年恒例のおせち料理と焼鯛を並べる。
年始用に揃えてあった蓋付きの汁椀を並べ
雑煮を盛り付けていく。

ちなみに我が家は京都在住にもかかわらず
すまし仕立てのお雑煮。
実父が白味噌仕立てを嫌っていたため
子供時代から白味噌のお雑煮が出たことがなく
ワタクシも苦手で作らなかった。

2日にしてやっとお節を堪能。
これでいつ病院に行っても良くてよ…なんて
ちょこちょこ家事で身体を動かし
日中の痛みの波を迎えていたつもりが…。

規則的にならない(凹)
そうこうしてるうちに日付は変わりもう3日。
今はロケみつの7時間特集を見ながらPCと戯れる。

このまま何もなければ3日は義兄の家にご挨拶にでも行くかということに。
車の振動で来るかもしれないし…(爆)

ダンナは職場で周りから心配され
ワタクシは一日に何度も様子見にかかってくる彼からの電話に
余計焦らされる。

後は胸のマッサージでも…やろうか…。
メンタルに来る前に。
かなり待ちくたびれてきたことだし。

一方かねてから無駄吠えの激しい我が家のおぬこさま。
比較的今までは日中はおとなしかったのだが
吠えまくるようになってきた。
一日に何度となくリビングのあちらこちらで粗相をするため
ついにおむつを履かせることに。

ペット用のおむつは随分お高いとのことで
出産準備品でたまたまあった新生児用おむつの前の部分に
しっぽ穴を開けて穴の周りを布テープ(ガムテープの布版)でかがりながら貼って
ポリマーが出ないようにした。
(ネットに作り方があった)

様子を見ていると彼は嫌がって脱ぐこともなく
部屋の中をぐるぐる徘徊して思いついたところへ入り込み
用を足す。
彼はあちこちで用を足していると勘違いしているが
排泄物はちゃんとおむつの中へ。

しかし、かれこれここ一週ほど食欲がめっきり落ちて
ほとんど食べられていない。
お気に入りのドライフードも一口食べたらいい方になってきたので
彼の大好物の煮干を数匹入れてみた。
しかし、その煮干でさえあまり食べない。

こんな調子だから便なんて出るわけがないが
何度も何度も踏ん張って昨日はようやく小さな便を一個コロリと出した。

そのたった一個の小さなのを出すために
よたよたと歩きながら何度も何度も場所を変え
踏ん張る彼のおむつ姿が妙に悲しげに見えた。

考えてみれば尿の量も減っていて
少し前は水を飲む量が多かったのに
最近水換えの度にたっぷり水が残っていることが多くなった。

今彼はおとなしくペットベッドに収まっているが
一体何を感じ何を考えて過ごしているのだろうか?

そろそろおむつを替えてベッドに新しいカイロを入れてやろう。
今夜も冷えることだろうから。



晴れ、時々くもり。 または…大雨。


うちのおぬこ様、ここ数日で格段に粗相が増えた。

トイレで用を足さずリビングルームで少し陰になりそうなところを
吠えながら徘徊して探す。

少し前は薪ストーブの裏っ側を狙っていたので
薪ストーブの周囲にモノやら段ボールやらを突っ込み
入れないように阻止していた。

するとその薪ストーブの手前の何も陰にならないところで
突然シャーッとやりだした。

昨日はダンナのいる前でもそういう姿を披露し
ダンナもやっと彼の粗相の現実を見ることとなった。
そういうことが昨日見かけただけでも2回。

一応ペットシーツを敷いたトイレを置いてもみたのだが
効果はなし。

あとは段ボール箱でも置いておいて
中にシーツを敷いておいたのをリビングに置くか
紙おむつでも作って穿かせておくしかないだろうかと思い始めてる。
幸い、我が家には出産準備品で新生児用の紙おむつがあることだし。

気が付けばここ数日、餌の食べが極端に落ちてしまった。
抱き上げた時には妙に軽くやせ細っていることにも最近気が付いた。
それでも無駄吠えは激しいし
家の中をたまに思い出したかのように徘徊している。

少し前からは2階のワタクシの寝室に現れるようになった。
少しベッドでワタクシと過ごし気が済んだのか寝室を出ていき階下に降りて行く。
そしてまた思い出したように吠える。

昨夜は珍しく永らくワタクシとダンナと間に入りずっと眠っていた。
さすってやると喉は慣らさなかったが気持よさそうな表情で抵抗しない。

『なんだか子供に戻ってきてるみたいやなぁ~…。』

ダンナが起床する時間まで彼はベッドに居て
彼を呼んで抱きかかえて階下に一緒に降りた。

こんなことはもうほとんど1年振りのことだ。
この冬は越せるのだろうか…?
彼の老いは着実に進んでいる。