自作小説「あの夏の日の向日葵」 -4ページ目

自作小説「あの夏の日の向日葵」

この物語はフィクションです。
が、自分自身の願望があるような気がします。
あの日、あの時に戻れたら・・・。
そんな思いは誰にでもあると思います。
その思いも胸にしつつ読んでもらえたらなぁと思います
^^

 その日の夜・・・。
圭介は普段と何も変わらずに眠りについていた。
その夢の中で起こっている事など、見た目からは全く判らない
程深く、静かに寝息をたてている・・・。
そんな夢の中・・・。





圭介は真っ暗な闇の中を、何故か一人で歩いている。
どこに行くのか・・・。
また、なぜ歩いているのかは圭介にも解らなかったが、とりあえ
ず歩いている。
真っ直ぐ歩いているのかすら判らない程、圭介を闇が包み込ん
でいた。
「ここは一体・・・。いや、前にも来たような気がする。その時俺
は確か・・・。そうだ!女の子に会って、記憶がどうのって言う話
をして・・・。」
その時、圭介の前に光と共に女の子が現れた。
「こんにちわ、圭介君。あなたに会うのもこれで二度目ね。」
「あっ、確か彩って言ったか?と言う事は、ここは俺の意識の中
って事か?」
「そうよ。そして、現実のあなたは今記憶を失っているわ。」
「記憶を?」
「そう。なぜ過去に来たのかも、あの向日葵さんやさやかさん。
それに直哉君達の事もね。」
「以前言っていた時の流れを守る為にか?」
「そうよ。それが私の使命・・・。あなたが過去に来た目的のよう
にね。でも、私の使命ではあるけど、私の意思ではない・・・。」
そう言うと、彩は少しうつむき加減で目を閉じた。
「よく解らないけれど、それで君の使命は果たせたんだろ?そ
れなのに何でまた俺の前に現れたんだ?」
「そうね・・・。自分でもよく解らない。でも、もう一度あなたと話し
がしてみたかったの。」
「話?何を話すというんだ?」
「あなたは、向日葵さんに好きだとちゃんと伝える為に過去に来
たのよね?」
「そうだよ。伝えて何が変わるかは判らないけど、やっぱりちゃ
んと伝えられなかったのをずっと後悔していたから・・・。」
「私は、人を好きになんてなった事がないから、その気持ちは解
らない。しかも、元に戻れなくなる危険をおかしてまで好きって
言う事に何の意味があるの?」
彩は無表情で圭介に聞いた。
その瞳は、全く感情と言う物を感じさせない程冷たさをもってい
た。
そんな彩の目を見ながら、圭介は迷う事もなく答える。
「意味か・・・。確かに意味なんて無いかもしれない。俺が彼女
に伝えたところで、彼女の意思もあるしね。でも俺が彼女が好き
だという事実は変わらないし、それを伝えたいというのが自分
の意思だ。君からしたら、自己満足なのかもしれないけど、そう
したいんだ。理屈じゃなくね。」
そう言いながら圭介は少し照れ笑いを浮かべた。
「そうね、私は人を好きになった事も自分の意思で動いた事は
ないから、自己満足にしか思えないわ。」
「自分の意思で動いた事が無い?でも今回こうやって俺の前に
来たのは君の意思なんじゃないか?」
その言葉に、彩は少し戸惑いを見せた。
そしてしばし考え込む。
― そうね・・・。何故私は今ここに来たのだろう・・・。彼と話す
事に何の意味もないのに・・・。
考え込んでいる彩を見て、圭介の警戒が少し解けていく。
今の彩からは、最初に感じた威圧感は感じられなくなっていた
からだ。
普通の女の子のような・・・。
圭介はそんな雰囲気を感じていた。
「一つ聞いていいかしら?」
「何?」
「人を好きになるってどんな感じ?そんなに良い物なの?」
「そうだな・・・。好きになるって良い物じゃないかもしれない。辛
い事も、苦しい事もいっぱいあるしね。でも、それを全てひっくる
めても、相手の事を想ってしまう・・・。そんな感じかな?自分の
危険なんて事よりも、相手の事を考えたり想ったりしてしまう。」
「自分よりも相手の事を想う・・・。」
「そうさ。まあ他の人は知らないけど、少なくとも俺はそうだな。
元の世界で会って、見た彼女の顔はどこか悲しそうだった・・・。
それも俺の勘違いかもしれないし、ただ自分の後悔をなくした
いだけかもしれない。でも、俺は確かめたかった。」
その言葉に、クスッっと笑った。
「解ったわ、ありがとう。でもそれと記憶を戻すのとは話しが別
よ?記憶があるのはこの夢の中だけ・・・。起きたらまた記憶を
失ってるあなたに戻るわ。結局想いを伝える事はできない。」
「そうかもな。でも俺は何としても記憶を取り戻す。無理かもしれ
ないけど、他の誰でもない、俺がそうしたいから。」
「そう・・・。頑張ってみなさい。もうここであなたと話す事はない
かもしれない。だから先に言っておくわ。さようなら・・・。」
そう言った彩はどこか寂しそうだった。
その寂しさの意味は、圭介には解らなかったが、自然に返事を
していた。
「さようなら。でもまた会ってみたいなwだからまたね。」
その言葉に彩は胸がドキッっとするのが解った。
しかし、彩は何もニッコリと笑みを浮かべただけで、その場から
消えた・・・。
後には、また深く静かな闇と圭介だけが残されていた。
まるで何事もなかったかのように・・・。